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HCの多様性促進に向けた取り組みの結果は「受け入れがたい」とグッデルコミッショナー

2022年02月06日(日) 15:06


NFLコミッショナーのロジャー・グッデル【AP Photo/Tony Dejak】

NFLのコミッショナーであるロジャー・グッデルは現地5日(土)朝、ヘッドコーチ(HC)の多様性を促進するための取り組みの結果が「受け入れがたい」ものであったことを「認めざるを得ない」という内容の覚書を全32チームに送付している。

マイアミ・ドルフィンズの元HCブライアン・フローレスが今週、パターン化した人種差別的な雇用慣習、ならびにその他の人種差別について、NFLとその3チーム――デンバー・ブロンコス、ドルフィンズ、ニューヨーク・ジャイアンツ――に対する訴えをマンハッタン連邦裁判所に提出して以降、初めてとなるグッデルのコメントは覚書を通じて報道された。

覚書の中でグッデルは、リーグはすべての「ジェンダーに関連するものを含む、多様性、公平性、包括性に関する方針、ガイドライン、イニシアチブ」を再評価すると強調しており、リーグは「再調査には外部の専門家」を雇う予定だとしている。

『NFL Network(NFLネットワーク)』のトム・ペリセロが入手した覚書の中で、グッデルは「今週だけでなく、何年も前から一貫して多くの人々が共に議論してきたテーマに取り組んでいきたい」として、次のように記している。

「人種差別やあらゆる形の差別は、NFLの価値観に反するものだ。われわれは多様性を促進するために大きな力を注ぎ、あらゆる分野で前向きな変化をもたらしてきた数々の方針やプログラムを採用してきたが、特にヘッドコーチに関しては、その結果が受け入れがたいものであったことを認めざるを得ない。われわれはジェンダーに関連するものを含む、多様性、公平性、包括性に関するすべての方針、ガイドライン、イニシアチブを再評価し、検討していく。この再調査には外部の専門家を起用するとともに、現役、引退後を問わず選手やコーチ、支持者、この分野の権威者から意見を求める予定だ。われわれの目標は単純であり、われわれとクラブの努力をより効果的なものにし、現実的で具体的な成果を達成することだ」

「今週、フローレスコーチや他の方々が表明した懸念については理解している。法的手続きを進める一方で、われわれの価値観や、多様性、公平性、包括性への長年のコミットメントに確実に合致させるために、直ちに戦略を見直し、修正していく。特に、誰もが機会を得て、敬意と尊厳を持って扱われるようにするために、NFLファミリーの多様なメンバーの実体験を理解する必要があると認識している」

フローレスの弁護士であるダグラス・ウィドアとジョン・エレフテラキスが土曜日に発表した声明をNFLネットワークのマイク・ガラフォロが入手した。2人は声明の中でグッデルの覚書に対して次のように反応している。

「NFLでは長年にわたり、黒人の選手とコーチの権利を保護する財団の陰に隠れ、フロントオフィスで組織的な人種偏見がまん延していた。NFLはまたしても同じプレーブックを展開しており、それこそが、この訴訟が起こされた理由だ」

2022年の採用サイクルでは、ヘッドコーチの9つの空位のうちすでに6つが埋まっている。スーパーボウル後に正式に採用されると見込まれている1名を含め、6名全員が白人男性だ。

ドルフィンズでの3年を通して24勝25敗を記録した黒人のヘッドコーチであるフローレスは、先月にドルフィンズから解雇された。2年連続で勝ち越しシーズンを送り、その2年目である今季は9勝8敗をマークしたものの、在任中にプレーオフに進むことはなかった。

フローレスの訴えは、リーグがフローレスやその他の黒人コーチたちを人種的な理由で差別し、彼らのヘッドコーチや攻撃および守備コーディネーター、クオーターバック(QB)コーチ、ジェネラルマネジャーとしての地位を否定したと主張している。

また、フローレスがヘッドコーチに就任した初年度において、オーナーであるスティーブン・ロスが負けるたびに10万ドル(約1,100万円)を支払うと言ったのは、“わざと負ける”ことで2020年のNFLドラフトで全体1位指名権を獲得したかったからだ、とも主張している。2020年ドラフトでは最終的にシンシナティ・ベンガルズがQBジョー・バロウを指名した。

ロスは水曜夜に声明を発表し、“このような悪意ある攻撃には断固抗議”すると反発している。

グッデルは覚書で、NFLは「NFLの試合の品位に関わるいかなる問題も真剣に受け止める。これらの問題は徹底的かつ独立的に検討されていく。独立した専門家が作業を進めるにあたり、リーグやクラブの関係者全員から全面的な協力を得られることを期待している」と記した。

さらに、フローレスの訴えは、ジャイアンツが2022年に、ブロンコスが2019年に、それぞれルーニールールを満たすためだけの“偽りの面談”を行ったとも主張している。

ジャイアンツとブロンコスはそれぞれフローレスの訴えを否定した。

2020年にNFLがルーニールールを修正した際には、各チームがヘッドコーチ職に関して自チーム外からの2人以上のマイノリティの候補者との面談を行うよう定められていた。また、コーディネーターおよびジェネラルマネジャーを含むフロントオフィスの高位のポジションについても、マイノリティの候補者1人と面談する必要があった。

グッデルは覚書を「やるべきことは多くある。そして、現状を受け入れ、より強く、より包括的なリーグになるための機会をつかんでいく」と締めくくっている。

【RA】