ニュース

「ここがホームだと感じている」とWRベッカム、報酬を犠牲にしてでも残留希望

2022年02月13日(日) 01:10


ロサンゼルス・ラムズのクーパー・カップとオデル・ベッカム【AP Photo/Mark LoMoglio】

ワイドレシーバー(WR)オデル・ベッカムはロサンゼルス・ラムズに完ぺきにフィットしているようだ。当然、第56回スーパーボウルの後に急いでチームを離れようとはしていない。

クリーブランド・ブラウンズから放出され、最終的にラムズと1年契約を結ぶことで願いをかなえたベッカムは、3月にフリーエージェント(FA)になろうとしている。プレーメーカーとしての評判をかなり回復させたベッカムは、ラムズがポストシーズンで勝利を重ねるにつれてその評判をさらに高めており、オープンマーケットでも多くの関心を集めるだろう。

ベッカムがオープンマーケットに出れば、の話だ。

ラムズは2022年のキャップスペースに十分な余裕があるわけではなく、『Over the Cap(オーバー・ザ・キャップ)』によると、現在は上限を1,359万ドル(約15億7,000万円)上回っているという。つまり、ベッカムが他でどれほどの金額を受け取ろうと、ラムズがベッカムを引きとめるのは難しいということを意味している――しかし、ベッカムを引きとめるものはお金ではないかもしれない。

現地11日(金)、ラムズに復帰する可能性を高めるために金銭面で妥協するかどうかと聞かれたベッカムは、にっこりと笑いながら「ああ、もちろんだ」と即答し、「もちろんさ。この試合に勝てば、あとはすべてうまくいくと思うから、とにかくこの試合に勝つことに集中したい。でも、この場所は俺にとって心地いいんだ。ホームって感じがする」と続けた。

ベッカムがラムズでより良い方向に変わるのにそう時間はかからず、その変化はフィールド以外でも起こっている。感情を表に出さないことがしばしばあり、時には苛立ちを見せていたベッカムが何千マイルも離れた場所に現れたとき、かつてないほど幸せそうなレシーバーになっていた。

ベッカムは「みんなから言われた。プレーする姿を見ているときですら、”勝ったり、パスをキャッチしたりするところを見るのもいいけど、楽しんでいる姿、笑顔、心からの喜びが見られてよかった”と言われる。その喜びを胸にプレーすれば、いいことしか起こらないから、それが俺にとってのすべてだ」と語っている。

常にスポットライトを浴びながらこれまでのキャリアを歩んできたベッカムは、ようやく心地よさを感じているようで、その成果はフィールドにも表れている。ラムズに移籍してから出場した8試合でタッチダウン5回を決めたベッカムは、クオーターバック(QB)マシュー・スタッフォードにとってWRクーパー・カップに次ぐ重要なターゲットとなり、ポストシーズンではキャッチ19回で236ヤード、タッチダウン1回をマークした。

なぜスター級の活躍ができないのかと日常的に質問されていたベッカムが、スターになる必要はなくなった――そして、プレミア級のパフォーマンスを取り戻している。

ベッカムは1週間を通じて、ラムズに加入したおかげで、他人の意見をコントロールするのは不可能であるという事実を受け入れる、長期的なプロセスを終わらせられたと話している。過去に一度、伝説的なプレー――2014年にベッカムが”The Catch(ザ・キャッチ)”と名付けたレシーブ――を見せて以来、好むと好まざるとにかかわらず、世界中のプロスポーツ界で最も著名な選手の1人になったベッカム。ニューヨーク・ジャイアンツからブラウンズにトレードされた後に膝に重傷を負ってなかなか調子が戻らず、街を出て行くことを余儀なくされているが、最終的にスーパーボウルへの切符を手にしたことで自分に対する世間の評価など、どうでもよいものだと気づいたのだ。

彼の個人的な状況と幸せこそが、最も重要だと言えよう。ベッカムはラムズでようやく”自分らしくあることを心地よく感じ、そこにいて、ただフットボールをすることができる”ようになったのだ。

ベッカムは次のように説明している。「ニューヨークにいたとき、それが分かっていたし、自分に言い聞かせてやっていたけど、たまに”他の人のためにこの役を演じなきゃ。これをしちゃだめだ”と考えて、訳が分からなくなるときもあった。過度に慎重になっていた。時間が経つにつれて、ドカンとね、ひらめいた。みんなが自分を好きになるとは限らないって。全員がその決断に満足するわけじゃない。みんなを喜ばせるなんて無理だ。一度それに気がつけば、少し軽くなる。背中にのしかかっていた重みが少しとれたような気がする」

もうすぐ父親になるベッカムの優先順位は変化している。2022年以降にどこでプレーするかを決めるときも、そうなるかもしれない。

しかし、その前にラムズはスーパーボウルで優勝を目指している。ベッカムは日曜日にラムズのホームであり、おそらく今シーズン以降もベッカムのホームであり続けるSoFiスタジアムでその夢を実現させるだろう。

【RA】