ベンガルズQBバロウの膝の手術からの回復を担当医師が回顧
2022年02月14日(月) 10:46ジョー・バロウの2021年NFLシーズン第1週までの復帰は素晴らしいものだった。ルーキーシーズンにACL(前十字靭帯/ぜんじゅうじじんたい)とMCL(内側側副靱帯)を断裂し、さらにPCL(後十字靭帯/こうじゅうじじんたい)も損傷していたシンシナティ・ベンガルズのクオーターバック(QB)が、開幕に間に合うように戻ってきたことは印象的だった。
しかし、今になって判明した事実によると、バロウは本来の姿ではなかったようだ。現地13日(日)に開催されている第56回スーパーボウルで、ロサンゼルス・ラムズと戦うべくフィールドに立っているところを人々が見るような選手ではなかったのだ。プレーはしていたが、そこまでの選手ではなかった。
バロウの膝を修復し、NFLの年間最優秀カムバック選手賞獲得へと導く劇的な復帰への足掛かりとなった医師によれば、その違いは顕著だという。
「11月と12月の状況は、誰もがLSU(ルイジアナ州立大学)で見ていたものだった。彼は走ることができた」
バロウの手術を担当したカーランジョブ整形外科クリニックのニール・エラトラシェ医師はそう話した。
「あの子は走れるし、人をかわすこともできるし、うまく逃げるんだ。動画で彼を見て(復帰後)最初の試合の様子を知ると、シーズンが進むにつれてどんどん良くなっていることに気づくだろう。パスは上手だったが、シーズンが進むにつれて難しいパスルートもこなすようになっている。それは、彼がとても自信を持っていることを示している」
バロウも同じことを感じている。
バロウは今週、記者団に「シーズン前半と比べれば、まるで昼と夜くらい違う」と語った。
「俺はついに、ポケットで相手のディフェンスに囲まれていても抜け出せるという自信を持つことができているし、そういう状況から抜け出してプレーすることが可能になり始めているんだ」
毎週毎週バロウを見ていると、シーズンが後半になればなるほど、実際に良くなっているように見える。スタッツもそれを示している。
第10週以降、バロウは成功率(68.2%から71.7%)、パスヤード(277.4ヤードから295.6ヤード)、タッチダウン対インターセプト比(20-11から18-5)、パサーレーティング(102.6から109.2)などの数字を向上させた。また、それまでは2回しか達成していなかったが、第13週以降は300ヤード以上の試合を5回も記録している。
また、エラトラシェがシーズン後半の能力に注目しているように、バロウのプレーもそれを示している。バロウは第9週まではキャリー1回あたり平均2.1ヤードだったが、それ以降は3.6ヤードを記録している。
「彼がボールを持っているとき、それは大きな脅威であり、相手に対して有利な状況にある」と、ラムズのチームドクターでもあるエラトラシェはコメントした。
「彼は相手を自分のところに来させない。攻撃的なんだ。最初のころは、ただ感覚を確かめているだけだった。しかしここ数カ月はまったく新しい攻撃力が出てきている」
2020年11月22日にバロウは膝を負傷した。エラトラシェはその映像を一度だけ見て、それで十分だった。回復にかかる時間に誤差がないことは分かっており、バロウとカレンダーを確認したとき、コントロールできることは限られていると非常にはっきりと伝えた。回復に十分な時間がないということもあり得たのだ。
「最初にバロウに伝えたのは、“これがカレンダーで、今はここ、ミニキャンプはここ、復帰はここだ”ということだった。“これは全部ファンタジーのようなもので、とても人工的なものだから、君に伝えているんだ”とね。“これは君の膝に関しては何の意味もない。私たちは、治すべきところは治して、リハビリすべきところはリハビリして、膝をできるだけ思い通りに、完全に使えるようにするつもりだ。君のペースを落とすつもりはないが、リスクが高くなることは許さない。だから、私たちはあるべき姿を目指すのだ。しかし、回復の目標はシーズンの始めで、そこから先はわれわれがやる”。6月頃には、この計画は完全にいけるとどこかで思っていた」とエラトラシェは語った。
リハビリの間、医療スタッフはバロウの回復具合を測定し、再負傷の危険性がどの程度あるかを示すデータを持っていた。「仮にすべてがうまくいったとしても、選手もまた、その役割を果たさなければならない」とエラトラシェは言う。
「自信の有無が重要だ。芝生に足を突っ込むのをいとわないというのは、ある種のマインドセットなのだから」
それが、今日につながった。バロウに膝の心配はなく、ようやく100%の状態になった。彼もそのとおりにプレーしている。エラトラシェは、回復へ向けたバロウの努力だけでなく、その過程で彼が皆にどう接したかについても、感謝の念で振り返った。
「彼は本当に、運命的なものを早くから感じていたようで、素晴らしい患者だった。彼は自分自身を確立し、学ぶことを使命としていた。思い込みは何もなかった。そこが好きで、私は彼の考え方がよく分かる。そして、理学療法士やトレーナー、シンシナティにいる人たちなど、関係者全員が多くのことを提供できていた。それが、私たちの仕事の素晴らしいところだ。高いパフォーマンスを発揮し、高い機能を持つチームの一員であることの重要性を感じさせてくれる。彼は、誰もが自分には何か持っていると感じられるように配慮してくれた。彼が、私たちが彼にするのと同じように人々に接し、それらの関係者を鼓舞し、彼らが果たすであろう役割を認めること。彼は、誰もがそのプロセスにおいて重要な存在であると感じられるようにした。それは、見ていて本当に素晴らしいことだった」
【AK】