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サラリーキャップを下回るために厳しい決断を迫られるジャイアンツGMショーン

2022年02月22日(火) 19:48


ニューヨーク・ジャイアンツのジョー・ショーン【AP Photo/John Minchillo】

新たにニューヨーク・ジャイアンツのジェネラルマネジャー(GM)に就任したジョー・ショーンは多くの仕事を抱えているが、中には簡単ではないものも多く含まれている。

ショーンGMは失望しか生み出してこなかったヘッドコーチたちの交代により、5年にわたって負け越し続けているジャイアンツを立て直す任務を負っている。前GMのデーブ・ジェトルマンと彼が採用したジョー・ジャッジ元HC(ヘッドコーチ)はすでにチームを去っているが、ロースターの改革はそれほどすぐにはできないだろう。

2021年に散財したジェトルマンはそのツケが回ってくる前に引退を表明。ツケを支払わされるショーンGMは2022年に向けて、ジャイアンツを財政的に余裕のある状態にする方法を考えなければならなくなった。まずは、リーグが計画している2億820万ドル(約238億8,000万円)のサラリーキャップを下回るように、既存のサラリーをおよそ1,200万ドル(約13億8,000万円)削減することから始めなければならない。

『New York Post(ニューヨーク・ポスト)』によると、ショーンGMは「第一に、われわれは(キャップを)下回らなければならない。キャップを下回ってドラフトで指名した選手と契約できるようにするために、近い将来、厳しい決断をここで下さなければならなくなる。追放はできないから、微妙な差になる」と話したという。

NFL全体を見渡すと、ジャイアンツのキャップ状況が最も悪いというわけではない。ミネソタ・バイキングス、ロサンゼルス・ラムズ、ダラス・カウボーイズ、グリーンベイ・パッカーズ、ニューオーリンズ・セインツの5チームはジャイアンツよりも多くキャップを上回っている。

しかし、他チームの多くはすぐにでも優勝を狙えるようなロースターを擁しており、そこがジャイアンツと決定的に違う。チームの主力選手に関して厳しい決断をする必要があるジャイアンツには同じことが言えない。

真っ先に思い浮かぶのは、2022年に2,180万ドル(約25億円)のキャップナンバーを占めるコーナーバック(CB)ジェームズ・ブラッドベリーだろう。NFL全体を見ても、これ以上高い数字を来シーズンに持ち越すコーナーバックはほんの一握りだ。ブラッドベリーがジャイアンツ屈指の守備選手であるのは間違いないが、チームは少なくとも彼を手放すことを余儀なくされそうな状況にある。現地6月1日(水)以降にブラッドベリーをトレードすれば、ジャイアンツは1,350万ドル(15億5,000万円)のスペースを空けられる上に、2022年シーズン終了後に切れる契約から付加的な価値を得られることになる。

とはいえ、そうなると、ジャイアンツは今以上に悪化してしまうだろう。

2022年に向けてキャップナンバーを大きく占めている守備選手はブラッドベリーだけではない。その最大値を占めているのはディフェンシブエンド(DE)レナード・ウイリアムスだが、彼は2022年に支払われる1,900万ドル(約21億8,000万円)の保証金を含む3年契約の2年目に突入しようとしているところだ。別のチームに移籍する予定はない。

CBアドリー・ジャクソンが結んでいた3年契約の初年度はキャップに優しいものだったが、2022年には急に厳しいものなってしまう。そのキャップナンバーは670万ドル(約7億7,000万円)から1,520万ドル(約17億4,000万円)に跳ね上がり、チーム内で4番目に高い数字を占めることになるが、6月1日以前にジャクソンをカットすると、ジャイアンツは300万ドル(約3億4,000万円)のデッドキャップを抱えることになり、実質的に損をする。トレードであれば、6月1日以前なら626万ドル(約7億2,000万円)、それ以降なら1,000万ドル(約11億5,000万円)以上を節約できる。

ジャクソンの次に多くを占めているのはインサイドラインバッカー(ILB)ブレイク・マルチネスだ。タックルを量産できるマルチネスのケガによる不在は2021シーズンのジャイアンツに大きな支障をもたらした。マルチネスをカットすれば、850万ドル(約9億7,000万円)の余裕が生まれるが、それはまたジャイアンツを悪化させることにつながる。

この方程式で最も重要になってくるのは、ここ数シーズンでチームを大幅には向上させられなかった選手たちだ。紛れもなくキャリア史上最悪のシーズンを送っていたランニングバック(RB)セイクワン・バークリーは、新人契約の5年目、つまり最終年を迎えようとしている。ACL(前十字靭帯/ぜんじゅうじじんたい)断裂から復帰したバークリーは2021年シーズンにキャリー1回あたり3.7ヤード、タッチダウン合計4回を記録しており、ジェトルマンが2018年ドラフトで全体2位指名権を費やしたのに見合う能力がまだ残っているのかと疑問視する人も多数いる。

バークリーには残念な知らせがある。ジャイアンツはこのまま勝負に出るか、それともバークリーの保証されたサラリーにあたる720万ドル(約8億3,000万円)を引き継ぐことに興味を持ってくれるトレード相手を見つけるつもりだ。それがかなわなければ、ジャイアンツはこの数字を2022年に背負わなければならなくなる。

2021年に447万ドル(5億1,000万円)だったワイドレシーバー(WR)ケニー・ゴラデイのキャップナンバーは、2022年に2,115万ドル(24億3,000万円)に跳ね上がり、ジャイアンツとの契約期間中(2024年まで)はそのあたりで安定することになる。この金額は2021年のジャイアンツにキャッチ37回、521ヤードという記録をもたらした。ジェトルマンの賭けは失敗に終わったわけだが、6月1日以前にゴラデイをカットした場合、ジャイアンツのキャップスペース(デッドキャップに当たる245万ドル/約2億8,000万円)は余計に埋まってしまうため、ショーンGMはゴラデイを単純にカットするわけにはいかない。トレードの方が実現性は高いが、2021年シーズンにロサンゼルス・ラムズに移ったWRオデル・ベッカムがその数字でトレードされなかった(ゴラデイの2022年のサラリーより500万ドル/約5億7,000万円ほど低い)ことを考えると、ゴラデイは少なくとも夏がくるまでどこにも行かないはずだ。

多くの選手の評価にはケガが関係している。ゴラデイはチームメイトのWRスターリング・シェパードと同様に、ここ数シーズンでケガに苦労していた。シェパードも移籍となる可能性があるが、ジャイアンツは彼がいなくなることによって帳簿上で得をしても(6月1日以降にカットすれば約850万ドル/約9億8,000万円が浮く)チームをより良くできるわけではない。

ショーンGMは「選手たちはある時点で一定のパフォーマンスを発揮していたからこそ、今のような契約を結んでいる。彼らが過大評価されていた、あるいは彼らがパフォーマンス以上のものを得ていたにせよ、そこで資金を捻出する必要がある」と述べた。

指名権には1巡目の全体10位以内の指名が2つ含まれる。この2つだけで、ジャイアンツのキャップスペースは1,100万ドル(約12億6,000万円)ほど埋まってしまう。

これまでのことをすべて考慮すると、ジャイアンツが2022年もダニエル・ジョーンズをクオーターバック(QB)として続投させようとしている理由も理解しやすくなるのではないだろうか。ジェトルマンが残したチームのキャップ状況を改善しようとするとき、ショーンGMには選択の余地があまりないのだ。

ショーンGMは「ダニエル・ジョーンズの能力やセイクワンの能力を見極めたいからロースターを追放したくない。ディフェンスにはいい人材がそろっている。微妙なバランス、微妙なラインは、本当に勝利に貢献できる選手をカットすることだが、同時にサラリーキャップを下回るようにしなければならず、そうすればドラフトで指名した選手を得られるだろう」と明かしている。

ショーンGMの判断はジャイアンツの今後にとって厳しい決断かつ必要な犠牲となるだろう。中には、比較的簡単な選択――例えば、タイトエンド(TE)カイル・ルドルフをリリースすれば即座に500万ドル(約5億7,000万円)を節約できる――もある。ショーンGMの言葉の中で最も重要なのは「そうすればドラフトで指名した選手を得られるだろう」という部分だ。

この春、ジャイアンツは9つの指名権で若手選手を獲得しようとしている。ショーンGMが判断し終えたら、いくつかロッカーに空きができているはずだ

【RA】