ブラウンズから「見下された感じ」だとQBベイカー・メイフィールド
2022年04月14日(木) 17:35クオーターバック(QB)ベイカー・メイフィールドのクリーブランドでの時間は唐突に、そして見苦しい形でこのオフシーズンに終わった。実際に起こったことについて、本人が不満を抱えているのも無理はない。
これまで沈黙を保ってきたメイフィールドが最近になって『Ya Neva Know Podcast(ヤ・ネバ・ノウ・ポッドキャスト)』で口を開き、ブラウンズが自分をデショーン・ワトソンと置き換えた決断についての不満を包み隠さず語っている。
「見下された感じだ。100%な。俺が聞かされていたこととまったく違うことを彼らはやった。俺は今、まさにその中にいる。俺はそれを味わわされた。4年間で4人のヘッドコーチがいて、コーディネーターはさらにたくさんいたんだからな」
「良かったところの話? そりゃいつでもある。いつでもあるさ。でも、俺はルーキーイヤーに素晴らしい年を過ごした。最初は先発しなかった。1年の後半で入って、楽しんだ。2019年はひどかった。2020年は最高で、プレーオフに進んだ。2021年は悲惨だったな」とメイフィールドは語っている。
メイフィールドが示唆するように、ブラウンズ時代は動乱の時代だった。2018年ドラフトの全体1位指名を受けたメイフィールドは最初のシーズンの第3週にNFLで初めのアクションを経験している。負傷したタイロッド・テイラーの代役として出場したメイフィールドはブラウンズに1年以上ぶりの勝利をもたらし、ブラウンズとメイフィールドの前には輝かしい未来が待っているように見えた。2019年シーズンが大きな落胆に終わった後、メイフィールドはブラウンズに2002年シーズン以来のプレーオフ出場と1994年シーズン以来のポストシーズン勝利を届けている。
その翌年は逆戻りの年だった。メイフィールドは第2週に肩を負傷し、痛みの中でプレーしようとしたが、パフォーマンスはその影響を受けていた。スーパーボウルコンテンダーと見なされていたはずのブラウンズは8勝9敗にとどまり、プレーオフには手が届いていない。メイフィールドはスケープゴートにされたのと同時に、今後のチームのけん引役として大きな疑問符がついた状態だった。
メイフィールドの苦戦を受け、不機嫌なブラウンズファンやNFLのフォロワーたちは批判を抑えようとしなかった。わずか1年前にはクリーブランドにおけるフットボールの救世主としてポテンシャルを示していたQBに対して、彼らは不満をあらわにしている。
メイフィールドはそういった否定的な見方をすんなりと受け入れなかった。
「誰かのパーティションまで行ってブーイングしてやりたいよ。やつらが砕け散るのが見ものさ」とメイフィールドは言う。
再び迫力にかけるシーズンを終えたクリーブランドは、選択肢を検討してメイフィールドの代役を探し始めた。ブラウンズがヒューストン・テキサンズのQBであるワトソンとの大型トレードを取りつけたとき、チームとメイフィールドの間にかかっていた橋は焼け落ちたのだ。
ブラウンズがまだワトソン獲得に向けて動いていたときから、メイフィールドはトレードを要請している。その時点ではメイフィールドはクリーブランドのロースター上にいて、特定の行き先はなく、ポッドキャストで「今は安定を求めているだけ」だと話していた。
「自分がベストの自分になってチームを率いられるようにするため、何をしなきゃいけないか、俺には分かっている。今はいい場所にいる。自分がどこにいくかは全く分からない」
クリーブランドでは安定性に欠け、4シーズンで4人のヘッドコーチと多くの攻撃コーディネーターたちとプレーしてきたメイフィールド。過去2シーズンは同じヘッドコーチ(ケビン・ステファンスキー)と過ごしたものの、その期間で残したリザルトは大きく異なっている。
次のチームではその安定性を求めているメイフィールドだが、インディアナポリス・コルツがマット・ライアンをトレードで獲得した今、それがどこになるかは分からなくなっている。
「これが一週間半前なら、インディアナポリスって言っていただろうな」と言うメイフィールドはシアトルが“もっともあり得そうなオプション”だとつけ加えた。
「そのときだって分かっていなかった。俺には次のチャプター、次のチャンスへの構えができている。次のスポットで俺に保証されるのは1年だけだからな。俺の契約で保障されているのはあと1年。どこへいってもあと1年で、また新しい面談だ。次の仕事のための俺の履歴書に載せるものって感じ。どこにいたとしても、そこで延長するか、また他の場所に拾われるかだ。俺はこの1年で、自分にできるかぎりのことをやらなきゃならない。だからといってプレッシャーが強まることはないけど。ただ、俺は前にもこういうところにいたことがあるってだけだ」
メイフィールドは簡単にトレードできる選手ではなく、今もブラウンズのロースター上にいる。メイフィールドの契約はあと1シーズン(2022年)がおよそ1,800万ドル(約22億5,538万円)のフル保証となっている。ほとんどのチームはそれぞれのニーズを満たしてくれるクオーターバックを探しており、1年のレンタルで終わる可能性がある上に、今後の成長についても疑問の余地があるクオーターバックを1,800万ドルの保証で迎えたがるチームはほとんどないだろう。
最も合うのはシアトル・シーホークスだと見られる。大型トレードでラッセル・ウィルソンをデンバー・ブロンコスに送り出したシーホークスは、ドリュー・ロックを先発とすることを予定している。ヘッドコーチ(HC)のピート・キャロルは長期的な再建への関心を示していないが、ロックが堅実なソリューションというわけではない。
とは言え、ブラウンズとの取引を熱望するチームは、もしあったとしても少ないはずだ。ロースターにワトソンとメイフィールドを擁することから、ブラウンズには交渉手段がない。メイフィールドがかかわる契約についてはドラフト指名権をつけることを強いられる可能性があり、最終的にブラウンズはリリースという形でメイフィールドとの離別を完了させるかもしれない。
別れがどのような形になるかはともあれ、メイフィールドのクリーブランドにおける時間は終わった。いかなるスタンスをステファンスキーHCやジェネラルマネジャー(GM)アンドリュー・ベリーが公に示そうが、単純に両陣営が生産的に進んでいけるシナリオがそれ以外にはないのだ。メイフィールドのコメントが示唆する通り、両者の関係は修復不能なほど害のあるものになってしまった。
メイフィールドがクリーブランドにやってきたとき、1999年にNFLに戻ってきて以来きわめて多くのクオーターバックを起用してきたチームにとって、それは大きな変化の前兆だった。4シーズンにわたってこのポジションに安定性をもたらしてきたメイフィールドだが、今や他の場所にそれを求めている。たとえ自分のナンバー6のジャージーが地域全域で特価品コーナーに置かれたとしても、自身の尽力がクリーブランドで忘れられることはないと考えるメイフィールドは次のように語った。
「俺は本当に、心から、正直に、クリーブランドで過ごした時間や、その場所に俺が捧げようと努力したものに後悔はない。本当のクリーブランド人や、真のブラウンズファンはそれを知っている。だからこそ、俺はそれをやり遂げたと感じつつ、このすべての状況から去ることができるんだ」
彼は別の場所でまた同じことをしようと願うだろう。ただし、行き先はまだ、分からない。
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