QBライアン・フィッツパトリックが17シーズンのキャリアに幕
2022年06月03日(金) 10:16忙しく働いてきたシルクハットとうさぎに休息のときがやってきた。フィッツマジックの舞台に幕が下りる。
クオーターバック(QB)ライアン・フィッツパトリックがNFLでの17シーズンを経て引退すると『NFL Network(NFLネットワーク)』のトム・ペリセロが現地2日(木)に伝えた。NFLネットワークのトム・ペリセロによれば、フィッツパトリックは『Amazon(アマゾン)』の『Prime Video(プライム・ビデオ)』によるNFLの放送で重要な役割を担うべく話し合いを行っているという。
フィッツパトリックのNFLでの旅はスリリングで意外性に富んでいた。ハーバード大学出身のフィッツパトリックは2005年にセントルイス・ラムズからドラフト7巡目(全体250位)で指名されている。このときのドラフトで最後に指名されたクオーターバックだった。そこからはさまざまなユニフォームを身に着けながら、厳しくも魔法のようなキャリアを辿ってきた。フィッツパトリックは9つのNFLチームで少なくとも1試合に先発しており、これは記録が残っている1950年以降で最も多い数字だ
フィッツパトリックは殿堂入りが期待されるようなキャリアを積んだわけではない。しかし、フィールドの中でも外でも、注目するに値するものを確かに残してきた。フィッツパトリックはキャリアを通じて62名の選手にタッチダウンパスを投げ、NFL史上、62名以上にタッチダウンパスを投げた3人のクオーターバック(トム・ブレイディ、ドリュー・ブリーズ、ビニー・テスタバーディ)に続いている。どのチームでプレーしていてもスリリングなフィニッシュを決めることでも知られたフィッツパトリックが唯一残念な結果に終わっている領域がポストシーズンだ。フィッツパトリックが投じた3万4,990ヤードはプレーオフでプレーしていない選手としてはNFL歴代トップであり、リーグ史でも32位の記録となっている。
キャリアをスタートした位置を考えれば、フィッツパトリックは自分に対する見込みを大きく上回ったといえるだろう。現在普及しているドラフトの時代になってから、7巡目以降で指名された選手の中でキャリア通算パスヤードが最も多いフィッツパトリックは、1977年ドラフト10巡目(全体275位)で指名されたスティーブ・ディバーグを749ヤード上回り、第37回スーパーボウル王者のブラッド・ジョンソン(1992年ドラフト9巡目全体227位)も大きく引き離している。フィッツパトリックはNFL史上、7つ以上のチーム(マイアミ・ドルフィンズ、タンパベイ・バッカニアーズ、ニューヨーク・ジェッツ、バッファロー・ビルズ、ヒューストン・テキサンズ、シンシナティ・ベンガルズ、テネシー・タイタンズ)で勝利を収めた唯一のクオーターバックでもある。また、1970年にNFLとAFLが統合して以来、クオーターバックの中で7番目に長いキャリアを誇っており、フィッツパトリックの上を行くのはブレイディ、テスタバーディ、ブレット・ファーブ、デイブ・クレイグ、ベン・ロスリスバーガーのみ。さらに、NFLの歴史上で3万4,000パスヤードとタッチダウンパス220回を超えているクオーターバックは、フィッツパトリックを含めて30名だけだ。
2021年にワシントン・フットボール・チーム(現ワシントン・コマンダース)でプレーしていたフィッツパトリックは、先発に指名されたものの、フルで1試合に出場することもできなかった。股関節を部分的に脱臼したフィッツパトリックはシーズン第1週の試合からの退場を強いられ、実質的にそこでキャリアが終了している。
39歳のフィッツパトリックは数多のチームメイトたちと過ごしてきた長いキャリアに終止符を打つ。ハーバード大学からやってきた選手のキャリアがこれほど長く続くとは、誰も思っていなかった。これまでに残した業績に満足しつつ、フィッツパトリックは放送業界への新しい旅に出る。
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