各陣営に不満を残しつつ決着したブラウンズQBワトソンに関する調停
2022年08月19日(金) 15:30NFLの個人行動規範に違反したクリーブランド・ブラウンズのクオーターバック(QB)デショーン・ワトソンに11試合の出場停止処分と500万ドルの罰金が科され、診断とカウンセリングが義務づけられた現地18日(木)の発表で唯一良かった点は、NFLの声明の終わりにあったこの一言に表れているかもしれない。
「本日の発表をもってこのプロセスは完了する」
24名の女性がワトソンの性的不品行を訴えていることを思えば、11試合は十分ではないと感じられるかもしれない。スー・L・ロビンソン判事は自身に提示された4名の女性のケースにおいて、ワトソンがこの女性たちへの性的暴行に関与したことを、NFLが独自の定義に従って証明したと判断している。コミッショナーのロジャー・グッデルはワトソンに申し立てられている振る舞いは“搾取”だと先週に話していた。ブラウンズがこの春にワトソンと結んだ、フル保証された契約(2億3,000万ドル/約313億4,210万円)に比べれば、罰金は笑えるほど少額だ。
カウンセリングについては効果を上げることに期待したい。ワトソンが木曜日に主張したのは、自分は無実であり、誰かに性的暴行を働いたことばかりか見下したことすらなく、謝罪したのはあまりにも多くの人々が“影響を受けた”からだということだった。ワトソンにとっては今回の調停には後悔どころか自己認識すらなく、自分の人生を進めていくという欲求しかないことを示唆している。
ワトソンに申し立てられたふるまいの性質や、ロビンソン判事の調査結果を踏まえれば、ワトソンは自分の人生を進めていくだけでは十分ではない。ブラウンズの懸念を理解するためにも、人生を変える必要がある。ブラウンズのジェネラルマネジャー(GM)アンドリュー・ベリーは木曜日に、チームはトレードが完了してすぐに、ワトソンが軟組織に問題を抱えた場合にマッサージを受ける方法についてできるだけ迅速にプランをまとめたと述べた。
NFLも自分たちの道を進めていくことを望んでいる。だからこそ、この調停が行われた。リーグは当初(また、ロビンソン判事による6試合の出場停止処分に上訴する間も)、ワトソンにフルシーズンの出場停止処分を科すことを望んでいた。一方のNFL選手会はそれを大幅に減らしたいとの意向だった。11試合はロビンソン判事が最初に科したものよりかなり多いが、この合意はとにかく一件を終わらせるためのものであり、9月の新シーズン開幕を前にワトソンとこの件に関する話題を遠く過去のものとするためのものだ。NFLが単純に自分たちの思う通りの懲罰を科せば、選手会がリーグを法廷につれていくことになる。あるリーグの情報筋はNFLがこの合意を受け入れた理由を“これは重要で、決定的で、即時的で、最終的なもの”だったからだと説明した。
不満が残るものではあるが、一般的に調停とはそういうものだ。いずれの陣営も、すべてを思う通りにはできない。と同時に、両サイドがそれを何とか受け入れられると判断している。全員にとって大事なのは、これが完了している状態だ。ブラウンズのヘッドコーチ(HC)であるケビン・ステファンスキーは木曜日のコメントで“明確さ”や“確実性”という言葉を用いていた。今、ステファンスキーHCは自分のクオーターバックがどういう状態であるか分かったのだ。NFLは何カ月も法廷を出入りする事態を避けた。以前に一人の選手に対する審議が進められていた際、あるオーナーはリーグが法廷で選手と戦っても、益があるのは弁護士とその請求可能な業務時間だけだと語っていた。
チームオーナーのディー・ハスラムは「デショーンはカウンセリングで成長し、彼自身についてもっと多くを学ぶはずです」と語っていた。それが実現することを願おう。ワトソンがカウンセリングのプランを守らなかった場合、懲戒処分が重くなったり、復帰時期が遅くなったりする可能性がある。誰もそれを望んでいない。ワトソンの件はプレーヤー個人のものとしてNFLがかかわってきた中で最も困難なケースの一つだった。木曜日にワトソン自身が見せた悔恨の気持ちの欠如は、懲戒処分が十分ではない可能性を示している。とは言え、何よりも良かったのは、今回の調停をもって一連の出来事が情け深くも終わったということだ。
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