議会がコマンダースオーナーは“有害な”職場文化の構築に関与していたと報告
2022年12月09日(金) 14:03アメリカ下院監視・政府改革委員会が現地8日(木)に発表した報告書によると、ワシントン・コマンダースは20年以上にわたって“有害な職場文化”を作り上げ、組織の上層部の男性による“性的な不品行を無視および軽視していた”という。
報告書の中でコマンダースのオーナーであるダン・スナイダーはその不祥事に関与したとされており、さまざまな疑惑が挙げられている。例えば、夕食の席で元従業員の体を不適切に触ったというものだ。他にも、チームの映像制作部門にいた元従業員の話によれば、スナイダーはスタッフに“性的な内容を示唆するチアリーダーの映像”を作らせたという。さらに、元チアリーダーおよびマーケティング担当者の話によると、チアリーダーのオーディションを受けていた女性たちにフィールドを歩くよう命じ、その様子を“彼とその友人が特別室から双眼鏡で見ていた”とのこと。
報告書にはスナイダーが“証人を威圧し、文書の作成を妨害する”ことで議会の調査を邪魔したと記されている。また、2020年に元従業員が球団幹部によるセクシャルハラスメントが横行していると主張したことから始まり、最終的にNFLが引き継いだ調査にスナイダーが干渉していたとも記されている。さらに、スナイダーが委員会での証言の際に、100回以上にわたって覚えていないと述べ、曖昧かつ誤解を招くような発言をしたとも報告されている。
NFLは報告書内で“(調査を担当した弁護士のベス)ウィルキンソンの調査への対応に関して世間を欺いた”、“リーグ全体で職場の不正行為を軽視し続けている”、“労働者をセクシャルハラスメントや性的虐待から保護していない”、“責任を負うべき人物に真の説明責任を求めていない”とされるなど、批判を免れていない。
木曜日、NFLのスポークスマンであるブライアン・マッカーシーは『NFL.com』に次のような声明を発表した。
「NFLはNFLと32チームの全従業員が、差別やハラスメント、その他の違法行為およびプロ意識に欠ける行為から解放されたプロフェッショナルかつ協力的な環境で働けるようにすることを約束する。NFLと32チームはこのコミットメントを促進するため、すべての施設において実質的かつ効果的なプログラムを実施している」
「ベス・ウィルキンソンの法律事務所が行ったコマンダースの職場に対する調査は、独立的かつ徹底的なものだった。秘密保持契約(NDA)によって、ウィルキンソンの事務所に話をしたいと希望した人でそれを阻まれた人はいなかった。ウィルキンソンの調査に参加した150名以上の証人の多くは、身元を秘密にすることを条件に参加している。この共通利益協定により、NFLは調査を妨げられるどころか、この問題の監督を効率的に引き受けることができ、大幅な遅延や証人に不都合が生じる可能性を回避することができた」
「ウィルキンソン氏の調査終了後、NFLはパブリックリリースを出し、クラブとそのオーナーに史上最高額の罰金を科した。また、クラブはウィルキンソン事務所による一連の勧告も実行している。独立した会社がコマンダースの職場を定期的に見直すことで、これらの勧告が実施されているかを監視してきた。委員会に共有されたこれらの再調査はすべて、コマンダースが職場の文化や方針に大きな改善を施したと結論付けている」
「NFLは過去13カ月間、約50万ページにおよぶ文書を作成し、数十の書面による問い合わせに応じ、2時間半の公聴会に自発的に参加してその中でコミッショナーの(ロジャー)グッデルが128の質問に答えるなど、委員会の調査に幅広く協力してきた」
コマンダースの弁護士であるジョン・ブラウンリーとスチュアート・ナッシュは、木曜日に出した声明で次のように述べている。
「これらの議会調査団は、真実には興味がなく、事態の一面のみを追求することよって見出しを追いかけることにしか興味がないことを、ほとんど即座に示した。本日の報告は一面的なアプローチによる予想通りの結果だった」
「ここに新事実はない。スナイダー氏は委員会が選んだ日に、宣誓した上で、前例のない11時間におよぶ供述録取を受けることに同意したにもかかわらず、委員会はスナイダー氏が昨春に委員会の公聴会に自発的に出席しなかったことをしつこく批判している。供述録取に立ち会った2人の議員(1人は民主党議員、1人は共和党議員)は供述録取後、スナイダー氏の回答には真実味があり、協力的で、率直なものだったとする公式声明を発表している。スナイダー氏の供述録取の全記録を公開するよう私たちが再三要求したにもかかわらず、委員会の定石として彼らはそれを拒否した」
「いかなるNDAにかかわらず、あらゆる証人を召喚して証言させる完全な権限を持っていたとき、委員会はスナイダー氏が証人の名乗りを妨げているとして不誠実に非難を試みていた。委員会のこうした不手際は、根本となっている疑惑を調査するよりもはるかにスナイダー氏を非難することに興味があったことを明らかにしている」
「そして、建前上“調査”に参加している“調査”機関にとって皮肉なことに、調査官は実際に、かつて機能不全に陥ったチームの職場環境の実際の原因を明らかにした委員会に証拠――元チームメンバーが職場のアカウントから送信した電子メールなど――を提供したチームとスナイダー氏を批判した」
「本日の報告はワシントン・コマンダースの職場に関する公知の事実を何ら進展させるものではない。チームは快適かつ包括的な職場を確立するために近年行ってきた進歩を誇りに思っており、フィールド内外で将来の成功を期待している」
40名以上の元コマンダース職員の代理人を務めたリサ・バンクス氏とデブラ・カッツ氏も木曜日に声明を出し、「委員会の働きにより、秘密保持契約の使用を制限する重要な法律が成立した。それは、まん延しているこの種のハラスメントがアメリカ国内における他の職場で発生するのを防ぐのに役立つだろう」としている。
NFLがウィルキンソン弁護士によるチームの職場文化の調査内容を書面で報告しなかったことを受け、議会は調査を開始。ウィルキンソンの調査の結果として、コマンダースは1,000万ドル(約13億6,220万円)の罰金を科され、スナイダーはチームの日常業務から手を引くことになっている。それを促したのはチームで勤務しているときにセクシャルハラスメントを受けたと主張した複数の元従業員による証言だ。
共和党は来年初めに下院の主導権を握れば、この件を直ちに取り下げるとしている。
スナイダーと妻のターニャは最近、スナイダーが1999年から所有しているチームの全体あるいは一部の売却を検討するために『Bank of America Securities(バンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズ)』を採用した。『Forbes(フォーブス)』によると、コマンダースは現在、スナイダーが1999年の買収時に支払った8億ドル(約1,089億9,160万円)から7倍増となる56億ドル(約7,626億6,680万円)の価値があると推定されているという。
記事提供:『The Associated Press(AP通信)』
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