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49ersのQBパーディーは“ミスター・レレバント” 7巡目指名の新人に歴史を刻むチャンス

2022年12月09日(金) 17:02

サンフランシスコ・49ersのブロック・パーディー【AP Photo/Godofredo A. Vásquez】

“ミスター・イレレバント”はサンフランシスコにとってまったく“イレレバント(見当違い)”な存在ではない。むしろ、“レレバント(重要)”な存在だ。

2022年NFLドラフトで例年“ミスター・イレレバント”と呼ばれる全体262位(最下位)指名選手となったクオーターバック(QB)ブロック・パーディーが、先発QBジミー・ガロポロが足を骨折したサンフランシスコ・49ersの先発の座に就いている。

去る日曜日にマイアミ・ドルフィンズ戦で代役を務めたパーディーは、49ersがドルフィンズ(8勝4敗)に33対17で勝利するのに貢献した。49ersのこの日の第2ドライブで負傷したガロポロに代わってフィールドに立ったパーディーは、パス37回中25回成功、210ヤード、タッチダウン2回を記録する一方、インターセプト1回とサック3回を喫している。この白星によって8勝4敗になった49ersは、現在NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)第3シードの位置につけており、NFC西地区の中では7勝5敗のシアトル・シーホークスに1ゲーム差をつけてトップに立っている。パーディーにはチームをプレーオフに導くチャンスがあり、これは7巡目指名のルーキーにとってはとてつもない進歩だ。

火曜日にガロポロの負傷が手術を必要とするものではないと明らかになったことで、ガロポロが1月のどこかの時点で戻ってくる可能性が浮上していた。しかし、49ersのヘッドコーチ(HC)であるカイル・シャナハンは水曜日に「プレーオフ終盤で復帰できる可能性は残されているが、かなり低いと思っている。楽観的には考えていないが、まったく可能性がないわけでもない」と話している。

つまり、今やパーディーに出番が巡ってきたということだ。パーディーにはNFLがかつて目撃したことのない何かを成し遂げるチャンスがある。

1994年にドラフトが7巡制になって以来、最終ラウンドで指名されたクオーターバックがルーキー時代にプレーオフで先発したことはない。また、プレーオフに出場した7巡目指名クオーターバック自体が7名のみ(ジェイ・ウォーカー、ガス・ファーロット、マット・カッセル、コイ・デトマー、ジャリアス・ジャクソン、マット・フリン)であり、1年目にそれを成し遂げた者はいない。ドラフト外のクオーターバックまで範囲を広げると、ポストシーズンに出場した選手は多くなる。最も有名なのはカート・ワーナーであり、近いところではトニー・ロモの例がある。さらに最近ではテイラー・ハイニケや、ジョン・ウォルフォードが挙げられる。繰り返すが、そのいずれも、最初にプレシーズンに登場したときにはルーキーではなかった。

単純に、7巡目指名選手はパーディーに待ち受けているかもしれないようなチャンスを得られないのだ。1994年以来、35人の7巡目指名QBがレギュラーシーズンの試合に出場しており、うち、それぞれのキャリアで5回以上のパスアテンプトができたのは26名のみ。日曜日のパフォーマンスと、シーズン第7週に44対23でカンザスシティ・チーフスに敗れた試合での敗戦処理で、パーディーはすでにパスアテンプト(46回)で7巡目指名選手の15位に入っており、タッチダウンパス(2回)では11位タイとなっている。おそらく、最も有名な7巡目指名クオーターバックであるライアン・フィッツパトリック――同じラウンドで最高の3万4,990ヤードとタッチダウン223回を記録して引退――は、ポストシーズンに出場したことがない。

ここで一旦、“ミスター・イレレバント”とは何かに触れておこう。果てしなく続くNFLドラフトの最終日の最後までテレビにかじりついているドラフトマニアでなければ、パーディーに冠せられたこの称号が何なのか、不思議に思うかもしれない。ミスター・イレレバントはドラフト最下位の指名選手につけられるニックネームであり、1976年、元サンフランシスコ・49ersのレシーバーであるポール・サラータ(1951年ドラフト10巡目指名、2021年10月没)がカリフォルニア州ニューポート・ビーチでドラフト最下位の選手を称える“イレレバント・ウイーク”を始めたことが由来となっている。このイベントではディズニーランドへの旅行、ゴルフトーナメント、レガッタなどが行われる。また、記念品もある。ハイズマントロフィー(Heisman Trophy)を模しつつもファンブルしているフットボール選手がかたどられた“ロー(low/低い)ズマントロフィー(Lowsman Trophy)”だ。最初のミスター・イレレバントはケルビン・カークだった。

1994 年以来、有名なミスター・イレレバントとしてはラインバッカー(LB)マーティー・ムーア(初めてスーパーボウルに出場)やキッカー(K)ライアン・サコップ、LBタエ・クラウダー、QBチャド・ケリー(殿堂入りしたジム・ケリーの甥、キャリアでプレーしたスナップは1回)がいる。日曜日、パーディーはレギュラーシーズンでタッチダウンパスを投じた初めてのミスター・イレレバントとなった。

つまるところ、突然49ersの先発になったクオーターバックは、近代フットボールで前代未聞のチャンスを手にしているということだ。

サンフランシスコはベイカー・メイフィールドをクレームしなかった。そのことは、シャナハンHCが最後の困難に立ち向かうにあたり、パーディーの起用で満足していることを示している。また、ディビジョンライバルのラムズがメイフィールドを獲得する気配を49ersが感じ、空振りになるクレームでいらぬ問題を起こすよりはルーキーで進めていくプロジェクトを万全にする方が良いと判断した可能性もある。いずれにせよ、49ersはパーディーで事を進めていくのだ。

49ersにはパーディーにヒーローになってもらう必要がある。ゼロにするわけにはいかない。これからの49ersを待ち受けるスケジュールは決して楽なものではないが、破壊的な対戦相手が列を作っているわけでもない。

12月11日(日):対タンパベイ・バッカニアーズ(6勝6敗)
12月15日(木):対シアトル・シーホークス(7勝5敗)
12月24日(土):対ワシントン・コマンダース(7勝5敗1分)
1月1日(日):対ラスベガス・レイダース(5勝8敗)
1月8日(日):対アリゾナ・カーディナルス(4勝8敗)

(すべて現地時間、戦績は現地8日時点)

パーディーが先週の日曜日のようにターンオーバーを回避し、チェーンを動かしていくなら、49ersの旅は続くだろう。そのとき、7巡目指名の新人が歴史を作ることになる。

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