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ラムズに劇的勝利をもたらしたQBメイフィールド、超短期集中で多くを学習中

2022年12月10日(土) 14:08


ロサンゼルス・ラムズのベイカー・メイフィールド【AP Photo/Kyusung Gong】

シャーロットで3番手に甘んじていたところからロサンゼルスの主役に――ロサンゼルス・ラムズにとってベイカー・メイフィールドはまさにドンピシャのタイミングでやってきた。

クオーターバック(QB)メイフィールドがロサンゼルスに到着したのは現地6日(火)のこと。その直後に行われたシーズン第14週サーズデーナイトフットボールの舞台で早々に出番がまわってきた。

カロライナ・パンサーズをリリースされ、ウェイバーにかけられたメイフィールドをラムズが獲得してわずか2日、早速の出場機会を得たラムズの新たな司令塔は試合時間残り1分45秒となって自陣2ヤードから挑んだドライブで、8回のプレーを経て98ヤードを進んだ95秒後、ラスベガス・レイダースを逆転し、17対16でチームを勝利に導いた。

ラムズデビュー戦で35回のパスを投げて22回成功、230ヤード、1タッチダウン、インターセプトなしの成績を残したメイフィールドは試合後、報道陣に「もうちょっとうまく書いてくれるかどうか分からないけど、当然、もっとストレスフリーでいたい。ただ、すごい物語だよね。正直にそう思う。スペシャルだ」と明かしている。

木曜日にフィールドに出るまで1回しかラムズとの練習機会はなかったにもかかわらず、メイフィールドが最後のドライブまでに見せたパフォーマンスは見事だったと言えよう。それでも、レイダースのパンター(P)A.J.コールが64ヤードのパントを披露してラムズ陣地2ヤードに達したことで、ラムズはまたもや敗戦の運命にあるように思われた。そんな状況でも、メイフィールドは残り10秒でヴァン・ジェファーソンに同点タッチダウンとなる23ヤードのパスをつなぎ、そして、最後はキッカー(K)マット・ゲイが決勝点となるエキストラポイントを成功させている。

6連敗中だったラムズのヘッドコーチ(HC)を務めるショーン・マクベイは「ベイカー・メイフィールドの素晴らしさは言葉で言い尽くせない。リーダーシップ、立て直す力、競争力。そしてなんと素早い学習能力を持っていることか。5分前にきて、今日の特別な成果を成し遂げる方法を編み出したのだ」とコメント。

かつてドラフト1位でNFL入りし、5シーズン目を迎えているメイフィールドにとってマクベイHCは7人目の指揮官(暫定HCだった2名を含む)であり、今シーズンでは3人目だ。ただ、このジェットコースターのようなキャリアの歩みによって、フルスピードでの学習プロセスを身につけ、木曜日に間に合わせられたとも言える。

「かなりたくさんのオフェンスシステムを経験してきたし、それを学ばないといけなかったけど、短期集中コースで学び、いろんなことを関連付けられるようになってからは重宝しているから、そういうのに対して特に不満はなかった」とメイフィールドは話す。

メイフィールドの1週間はリリースを要請し、実現した月曜日から始まった。

ジョン・ウォルフォードが先発したシーズン第14週の試合でメイフィールドはサイドラインに控えていたが、ウォルフォードはパスを投げることなく一度もファーストダウンを奪えずにオープニングドライブを終えており、そこから司令塔の任務を引き継いだメイフィールドが同じユニフォームを着ているとはいえ、まだよく知らないオフェンス陣を率い、ボールを投げることになった。ジェファーソンに投じた最初の21ヤードパスは、その後に起きることを予感させるプレーだったが、試合時間の大半がそうだったわけではない。最初のドライブこそフィールドゴールでの得点に導いているが、今季のラムズの傾向通り、そこからしばらくは停滞した。

メイフィールドは6日夜、現地時間19時15分にロサンゼルスに到着し、すぐにデビューに向けて順応すべく超短期間の特訓に取り掛かったという。

そして2日後の20時すぎ、メイフィールドとラムズは長らく待ちわびた勝利にたどり着いた。今オフシーズンにクリーブランド・ブラウンズからトレードで加入したパンサーズの先発QBとして1勝5敗に終わったメイフィールドはシーズン第3週にニューオーリンズ・セインツに勝利して以来、勝ち星から遠ざかっており、ラムズもまたシーズン第6週に勝って以降は負けが続いていた。ちなみに、ラムズが最後に勝利した相手はメイフィールドの古巣パンサーズで、故障中だったメイフィールドに代わり、P.J.ウォーカーが先発を務めた。

勝利を手にしたとはいえ、前シーズンのスーパーボウルを制したディフェンディングチャンピオンとしてワーストシーズンを過ごすラムズ。メイフィールドもマクベイHCもこれまであまり笑ったり喜んだりすることはなかったが、今回ばかりはニヤケが止まらない様子だ。

「勝利がどんなものかを忘れていたが、確かに楽しいものだね」と述べたのはマクベイHCだ。

遊牧的なNFLの世界で、メイフィールドがマクベイHCとラムズにつながったのは思いがけないことだったのかもしれない。

試合後、『Prime Video(プライムビデオ)』の配信で、パンサーズが放出した際にロサンゼルスに向かうことを分かっていたかと問われたメイフィールドは、「ギャンブルに出たんだ。飛行機を予約して、えっと,そう、ウェイバーを通過する前に、ね」と答えている。

確かに、メイフィールドにとってもラムズにとっても波乱万丈のシーズンだった。メイフィールドは今季のラムズにとっては4人目の先発クオーターバックとなる――次戦に先発すれば。マシュー・スタッフォードが故障者リザーブに登録されている中で、メイフィールドのパフォーマンスを目にした今、各クオーターバックと、ロースター全体の不確実性に直面するフランチャイズの将来がどうなるかという疑問にぶつかる。

シーズン第15週に予定されているグリーンベイ・パッカーズ戦はメイフィールドが先発すると見て間違いないだろう。

メイフィールド自身はあまり遠くの未来を見据えていないようだ。

「とにかくベストな状態の自分を見せられるように、それだけしか考えていない。システムを学び、改善し、たくさんの成功を収めてきた最高の一団から大事なことを得ようと思っている。もちろん、ケガというのはきついけど、ここにいるみんなから学ぼうと思っているんだ。できる限り多くを吸収し、あとは成り行きに任せる。未来はコントロールできるもんじゃない。ここから4試合あることは分かっている。そこをがんばって、ベストな自分で勝負して成長していきたい」

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