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ブロンコス戦の敗北で「スイッチが入った」とジャガーズQBローレンス

2022年12月16日(金) 11:45


ジャクソンビル・ジャガーズのトレバー・ローレンス【AP Photo/Rick Osentoski】

クオーターバック(QB)トレバー・ローレンスの2022年シーズンの引火点を探したければ、シーズン第8週のウェンブリー・スタジアムに注目すればいい。

2勝5敗のチーム同士の対決で、ジャクソンビル・ジャガーズには絶好のチャンスが訪れていた。確かに、ジャガーズはそれまでの1カ月間で一度も勝利していなかったが、第4クオーターの時点で苦戦しているデンバー・ブロンコスより優位に立っていた。つまり、勝利は目前だったのだ。

しかし、その後にブロンコスにリードを奪い返され、ローレンスがインターセプトを喫したことで、時間が切れる前にジャガーズが反撃するチャンスは無くなってしまった。そして、再びどこへもたどり着けない運命にあると思われたシーズンの中で、ジャガーズは敗北の苦渋を味わいながらホームへ戻ることを余儀なくされている。

それ以来、ローレンスはキャリアの中で最も素晴らしい活躍を見せてきた。ジャガーズがここ5試合中3試合で勝利を収めている中で、ローレンスはキャリアで初めて、ジャガーズが2021年ドラフト全体1位で選び抜いたと信じていたようなフランチャイズクオーターバックの姿になっている。

ブロンコス戦の敗北が自分の中の何かを良い方向に変えたと考えているローレンスは、現地14日(水)に次のように語った。

「あの試合には勝つべきだった。あのときロッカールームで感じたことは今でも覚えているし決して忘れない。こんな思いはもう二度としたくない。まずは、ボールを大事にできるようになる。でもその次に、俺はただ自分がなれると信じている選手になりたい」

「あのことによって自分の中のスイッチが入ったと思っているし、正直、今はもっと挑戦的な態度になっているとも思う」

NFL選手になる前、ローレンスは恵まれた人生を送っていた。高校時代は一度も負けたことがなく、同期の中では最も注目を集め、わずか4試合でクレムソン大学のスターターとなったローレンスは、そこで過ごした最初のシーズンでカレッジフットボール・プレーオフ・ナショナルチャンピオンシップを勝ち取り、オフェンス部門MVP賞にも輝いている。

クレムソン大学時代に獲得したタイトルはその1つだけだったが、ローレンスはすべてを簡単にかなえているように見えた。NFLもこれと同意見を持ち、ローレンスに対する評価は総じて極めて高いものとなっていた。その結果、ローレンスは2021年ドラフトで全体1位指名を受けている。

ローレンスはプロのレベルでは物事がそう簡単にはいかないことをすぐに思い知った。ジャクソンビルで火中に投げ込まれたローレンスは、すぐに解雇に追いやられたアーバン・マイヤー元HC(ヘッドコーチ)が生み出した無秩序な環境の中で、プロレベルの試合を学ぼうと試みていた。2年目のシーズンは、はるかに安定したコーチであるダグ・ペダーソンの下でプレーしながらも、困難な状況は続いていた。ロンドンでの敗北はローレンスのNFLキャリアにとってまた新たな試練となっている。

しかしながら、そうした試練により、ローレンスにとってはすべての要素があるべき場所に戻ったようだ。ローレンスはシーズン第8週以降に素晴らしい結果を残しており、パス成功率71.8%で試合平均272.4ヤード、パサーレーティング111.7を記録している。また、タッチダウン対インターセプト比は10対0で、その間における記録としてはNFLの中で最も優れた成績だった。

ローレンスは5試合連続で30回以上のパスを投げている一方で、一度もインターセプトを喫しておらず、少なくとも1950年以降にそのような成果を達成した最年少の選手となっている。これまで192回連続でインターセプトを浴びることなくパスを投げており、次の試合で200回を突破する可能性も見込まれている。

ここまでくるには相当の胆力が必要だったはずだが、一世代に一度の才能を持つ逸材と言われたクレムソン大学出身のクオーターバックにとって、これはほんの始まりに過ぎないのかもしれない。ローレンスが躍進を遂げている最大の要因は、自分たちを批判する者が間違っていることを証明するという明確な意志を持っている点だ。

「この1年半で言われてきたことや書かれてきたことは、間違いなく忘れない」と強調したローレンスはこう続けている。「この数週間を経て、みんなの意識が変わってきたのは分かるけど、俺はすべてを覚えている。必ずしもそれだけが燃料になっているわけじゃないけど、確実に利用している。このチームもそうしてきたと思う」

「俺たちは5連敗したときにみんながどう言っていたかも、その後に何度かビッグゲームに勝ってみんながすぐに考えを変えたことも覚えている。だから、毎週のように自分たちの実力を証明したいというメンタリティは変わっていない」

ジャガーズはシーズン第15週にNFLで5位のディフェンスを擁するダラス・カウボーイズと対峙する。これはジャガーズにとってかなりの試練となるだろう。そこでスターを身につけたチームを相手に輝きを放てば、ローレンスは自分を疑う者を信じる者に変えるはずだ。そして、ジャガーズを取り巻く物語を転換させ始める可能性もある。

【RA】