「1試合1試合を大切にして、次の週に備える」とビルズQBアレン
2022年12月19日(月) 12:55前が見えないほど光が強いとき――あるいは今回の場合のように視界をさえぎるほど雪が降っているときでも、クオーターバック(QB)ジョシュ・アレンにはバッファロー・ビルズを勝利に導くビジョンがあるようだ。
今シーズン、試合の後半で調子を崩しがちなビルズは、シーズン第15週に実施されたマイアミ・ドルフィンズ戦の第3クオーターでも同じように厳しい状況に陥っていた。それにもかかわらず、アレンは第4クオーターに29対21でリードを許していたところから75ヤードと86ヤードのスコアリングドライブを演出し、チームを32対29の勝利に導いている。そしてビルズはプレーオフのチケットを手に入れた。アレンは試合終了までにチーム最多の77ランヤードを稼いだ一方で、304パスヤード、タッチダウン4回を記録。重要な2ポイントコンバージョンも成功させ、ビルズがAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)の強豪チームであることを再認識させた。
試合後、アレンは「(ショーン)マクダーモットコーチが一番に説いていたのはプレーオフの座を獲得することだ。プレーオフに進出できなければ、スーパーボウルには勝てない。だから、これが第一の目標だった。第二の目標はディビジョンを制覇することだ。俺たちはそう考えている。1試合1試合を大切にして、次の週に備えるつもりだ」と報道陣に語っている。
アレンが見せたのは、プレーオフ進出を目指して行うもの以上のパフォーマンスだった。現在11勝3敗のビルズは9月の時点で考えられていたほど危険な存在ではないと見られるようになっていたが、今回の試合はそうした考えを打ち消すものとなっている。また、ビルズが第1シードの座を確保するのにすでに多くの危機にさらされていることを踏まえると、今回の展開は実際にビルズの可能性を称賛するものになっている。
それでも、シーズン第7週に迎えたバイウイーク後の7試合で、パス成功率60.6%、試合平均224パスヤード、タッチダウン9回、インターセプト7回と低迷していたアレンにとって、現地17日(土)に残した成績は待望のものだったと言えよう。この間にも、合計で371ランヤード、タッチダウンラン4回を記録するなど、ランプレーでは脅威となっていたアレンだが、ファンブル5回とファンブルロスト2回も喫していた。
そうしたミスの多くは、アレンが結果を求めて焦り、それを得られないときに発生していた。アレンは土曜日の試合でもある注目すべきプレーでそのような行動に出たが、今度の結果はアレンが即興で生み出すことのできる影響を魔法のように思い知らせるものとなっている。
第2クオーター終了まで残り8秒の時点で開始したゴールまで残り4ヤードのプレーで、アレンは得点するか、フィールドゴールを狙うのに十分な時間を確保するために、素早くパスを出すと思われていた。しかし、アレンはボールを持ったまま右方向に走ってサイドライン付近まで近づき、時間が残されていない中でしっかりとカバーされていたランニングバック(RB)のジェームス・クックにパスを通している。
奇跡的とも軽率とも言えるこのプレーで、ビルズは21対13でリードした状態で前半を折り返した。
「あれはすごく良いプレーともすごく愚かなプレーとも言えるね」とコメントしたアレンはこう続けている。「彼がボールに戻ってプレーを実現してくれたことにただただ感謝している。投げたとき、頭の中では“時間を無駄にしすぎたな。時計はもうゼロだ”と思っていた。それから俺は地面に滑り込んで、そこに横たわったまま歓声が上がるのを待っていたんだ。そしたら、ありがたいことに本当に歓声が聞こえてきた。ハーフタイムまでにポイントを稼がなきゃいけない。自分をああいう状況に追い込むべきじゃなかったけど、プレーする方法を見つけたんだ」
アレンが試合後に行った自身のプレーに対する評価に同意しているマクダーモットHC(ヘッドコーチ)は「ああ、前半終了時のプレーは大きかった。0秒になるまで走ってタッチダウンを投げる。あそこでタッチダウンパスを投げられた彼はラッキーだ。さもないと、私は試合後に彼のタイヤをパンクさせていたかもしれない。しかし、彼はあのプレーから学ぶだろうし、私も少しは学べるかもしれない」と報道陣に述べた。
試合後半、ビルズは4回連続でパントを強いられたほか、5回目のポゼッションではアレンがファンブルを喫し、予期せぬ形でタイヤがすり減っているように見えた。その間にドルフィンズはワイドレシーバー(WR)のジェイレン・ワドルとタイリーク・ヒルがタッチダウンを決めたことで逆転に成功している。しかしながら、雪がハイマーク・スタジアムに積もりだした途端、ビルズはどういうわけか新たな足取りを見つけた。
試合終了まで残り11分56秒の時点から始まったドライブで、アレンはQBドローで自陣43ヤード地点から敵陣13ヤード地点まで走り抜けて44ヤードを稼ぎ、フィールドの流れを一変させた。その4プレー後、アレンはタイトエンド(TE)ドーソン・ノックスを見つけて5ヤードのタッチダウンパスを通している。そして、アレンは地面とほぼ並行になりながら選手の山を飛び越えてラインの向こうにボールを運んだ。アレンがそのように2ポイントコンバージョンを成功させてこのドライブを締めくくったことで、ビルズは同点に追いついている。
ビルズ守備陣が力強いディフェンスで相手を抑えた後、アレンと攻撃陣は残りの5分56秒間でボールをキープし続けた。15回のプレーを終えた後、キッカー(K)タイラー・バスが25ヤードのフィールドゴールを決めたことで勝利をつかんだビルズは、ライバルであるドルフィンズの台頭を阻止している。
アレンはドルフィンズについて「あそこは本当に優秀なフットボールチームだ」と強調した。「彼らともう一度戦うかは分からない。俺はそうなることをかなりポジティブに捉えている。今回みたいな第3クオーターは望んでいなかったけど、第4クオーターではみんながプレーをつなげてステップアップし、勝つための方法を見つけていた」
ビルズにとって今季のテーマは、勝つための方法を見つけることになっていた。その相手が再びドルフィンズになろうと、他のチームになろうと、プレーオフを迎えたときにアレン率いるビルズを倒せるような火力を持つチームは少なくなっているかもしれない。
【RA】