将来の決断に期限を設けないQBトム・ブレイディ
2023年01月18日(水) 00:10現地16日(日)、スーパーワイルドカード週末最後のゲームでダラス・カウボーイズとタンパベイ・バッカニアーズが対戦した。舞台はバッカニアーズのホームであるレイモンド・ジェームス・スタジアムだった。31対14で敗れた後、バッカニアーズのクオーターバック(QB)トム・ブレイディは足早にフィールドを去っている。トンネルの入り口には両親と姉が待っていた。彼らがそこにいるのは珍しいことだったが、素早く彼らにキスしたブレイディは行ってしまった。気持ちを高ぶらせた母と、その手を取る父を残して。
ブレイディはフリーエージェントになるため、チームの、そして彼自身の決断次第では、これが最後の試合になった可能性がある。もしかしたら、彼の両親が来ていたという事実が、大きな意味を持っていたことが後から分かるかもしれない。もしかしたら、ブレイディは再びタンパに戻ろうと決めるかもしれない。どこか他の場所でプレーする可能性もある。そして、引退する可能性も。
自宅に戻ってゆっくり眠るつもりだと話したブレイディだが、未来のことをいつ決断するかなどの、その先のことに関しては何のタイムラインも提示しなかった。昨年は一度引退し、1カ月と少したったところで戻ってきた。今回は“本当に、一日一日” やっていくという。
通常のシーズン末を超える感情を抱いたか聞かれたブレイディは、こう答えた。
「ただシーズンが終わったという感じ」と話しだしたブレイディは、自ら報道陣に感謝を伝えた。
「僕はこのオーガナイゼーションを愛している。素晴らしい場所だ。僕を迎えてくれたみんなに、感謝している」
そして、自分を取り上げてきた報道陣に対して、こう続けている。
「敬意をもってくれたことにとても感謝しているし、自分が同じものを返せていたことを願っている」
ブレイディが公の場でそういったことを話すのは珍しく、だからこそそれは、NFLでのキャリアの終わりではないにしろ、タンパへの別れの挨拶だったのかもしれない。
ブレイディにとってはプレーオフでワーストに数えられるパフォーマンスだった。レッドゾーンでのインターセプトはタンパでは初めてのこと。前半を無得点に抑えられたのはプレーオフ48戦で2度目だった。1回目はいつだったか? 彼の初めてのプレーオフゲーム、2001年シーズンの終わりのことだ。
「彼らのディフェンスが良かったし、僕にかなりのプレッシャーをかけていた。僕たちはただ十分なプレーを決められなかっただけだ。今年はずっと、そういうプレーが典型的だった。パスゲームで効率的じゃなく、ランニングゲームも優れていなかった。そんな調子では、こういう良いチームを倒すのは難しい」とブレイディは言う。
昨シーズンのバッカニアーズは得点においてリーグ2位の攻撃陣を擁し、ブレイディはMVPの筆頭候補だった。
今季のバッカニアーズはスコアリングオフェンスで25位であり、月曜日に14ポイントにとどまったのも例外的な数字ではない。攻撃陣の崩壊は、ブレイディが残留するとしても去るとしても、バッカニアーズに大きな変化をもたらすだろう。攻撃コーディネーター(OC)バイロン・レフトウィッチが批判の的になることが多く、その座は危ういものになりそうだ。ブルース・エリアンス元ヘッドコーチ(HC)からトッド・ボウルズHCが引き継いだコーチングスタッフには、他にも変化が起こるかもしれない。
NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)南地区タイトルの獲得にさえ苦戦した2022年シーズン、バッカニアーズは8勝9敗でレギュラーシーズンを終えている。バッカニアーズがカウボーイズを倒すことや、プレーオフでさらに勝ち進むことを人々が想像できたのは、ひとえにブレイディの存在と、ブレイディが過去20年にわたってやってきたことの記憶のおかげだった。
45歳になったブレイディの腕は落ちていないものの、ヒットを受けることに対しては以前より前向きではなくなっているように見える。カウボーイズ戦ではダウンフィールドにパスを投じることが少なく、その理由の一つはカウボーイズのディフェンスが優れていたことにあるが、他の要素として、ブレイディが速くボールを離すことを望んでいたという点がある。これはシーズンを通じて見られた兆候であり、バッカニアーズの現状の縮図でもあった。プレッシャーが大きすぎ、十分なプロテクションがなく、プレーが決まらない。だからこそ、今季は疲れ切ったように見えていたブレイディは、危機を回避していた。
これがタンパでの日々の終わりなのか。それとも、キャリアの終わりなのか。かつては自分が相手に与えていた類の敗北を喫して、ブレイディのシーズンは終わった。
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