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QBブレイディの偉大なキャリアに終幕、並ぶ者のない足跡を残す

2023年02月02日(木) 00:28

タンパベイ・バッカニアーズのトム・ブレイディ【Kevin Sabitus via AP】


G.O.A.T.が再び引退する。

クオーターバック(QB)トム・ブレイディが現地2月1日(水)に『Twitter(ツイッター)』に投稿した動画でNFLからの引退の計画を明かした。ブレイディはニューイングランド・ペイトリオッツとタンパベイ・バッカニアーズで23シーズンを過ごしていた。

今回の表明があったのは、ブレイディが2022年に引退を発表してからちょうど1年のことだった。昨年にはブレイディは40日で考えを変えている。時に声をつまらせながら自分のプランを明かしたTB12は、今回は「これが最後」だと主張していた。

「おはよう。すぐに本題に行こう。僕は引退する・・・これを最後にね」と話したブレイディはこう続けている。

「前回はこのプロセスが大騒ぎになったのが分かっているから、今朝目を覚まして、録画ボタンを押すだけだって思った。皆に最初に知らせようってね。そんなに長くはならないよ。皆はものすごくエモーショナルな引退エッセイを受け取るだけで、僕は去年にそれをやりきっているから。だから、皆に心からありがとう。僕を支えてくれたすべての人たちに。家族、友達、チームメイト、競争相手、挙げていけばきりがないくらいだ。本当にたくさんの人たちに。僕に絶対的な夢を生きさせてくれた人たちに、ありがとう。僕は何も変えない。皆を愛しているよ」

2000年のNFLドラフトで6巡目、全体199位でペイトリオッツに指名されたことは有名だが、類を見ないブレイディの競争心がその殿堂級キャリアの原動力となった。2年目のNFLシーズンで先発の座を引き継ぐと、一度も立ち止まることなく彼は次々とトロフィーを収集していく。最終的にブレイディはスーパーボウル王者に7回、NFL年間最優秀選手(MVP)に3回、スーパーボウルMVPに5回、NFL攻撃部門年間最優秀選手に2回、オールプロにファーストチーム選出3回、オールプロのセカンドチーム選出3回、プロボウル選出15回と2009年の年間最優秀カムバックプレーヤーに輝いて引退する。また、2000年代と2010年代のNFLオールディケイドチームとNFL100周年オールタイムチームにも選ばれている。

G.O.A.T.の名にふさわしくブレイディは、パス成功数(7,753回)、パスアテンプト数(1万2,050回)、パスヤード(8万9,214ヤード)、パスタッチダウン(649回)、先発出場数(333回)、QB勝利数(251回)、プロボウル選出(15回)、スーパーボウルMVP(5回)でいずれもNFL最多の記録を持つ。タッチダウンパスで年間トップに立ったことが5回(2002年、2007年、2010年、2015年、2021年)あり、NFLの歴史でこれに匹敵する選手はどこにもいない。

チームスポーツにおいて、ブレイディほどの勝利を挙げてきた選手はいない。23シーズンに及ぶキャリアの中で、ブレイディはポストシーズンにおいても進出20回、先発48試合、35勝、スーパーボウル出場10回を記録。ポストシーズンのパス成功1,200回、プレーオフでのパスヤードが1万3,400ヤード、ポストシーズンのタッチダウンパス88回、ゲームウイニングドライブ14回、第4クオーターでの逆転9回と、いずれもNFL歴代最多の記録を有している。

2022年に現場に戻ってきてから、ブレイディはキャリア初めての負け越しシーズンを送ったものの、それでもNFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)南地区優勝にチームを導いて、プレーオフ進出を果たしていた。今季はNFLの単一シーズン記録となるパス成功490回、パスアテンプト733回をマーク。ベストシーズンではなかったかもしれないし、ブレイディ自身も最高の状態ではなかったものの、バッカニアーズが苦戦した理由がブレイディにあったわけではなかった。45歳にして、ブレイディは守りさえあれば優れた投球ができることを示している。TB12がいなければ、バッカニアーズはトップ10でドラフト候補生を指名していただろう。その代わりに、チームはポストシーズンにコマを進めている。

ミシガン大学出身で、動きがスローだと評されていたクオーターバックは、人々が間違っていることを証明しながらそのキャリアを築いてきた。NFLにやってきた中で最も才能ある選手ではなかったかもしれないが、伸るか反るかの状況でブレイディ以上の勝利を挙げた選手はいない。容赦のない、熱狂的なドライブによって、ブレイディは人生を通して一つの目標を目指してきた。それが、最大のステージで、最も偉大な選手になることだ。異次元級の身体能力を有しているわけではないものの、ブレイディ以上にポケットでの動きに秀でた者はいない。ピンポイントの正確性とゴージャスなディープボールは、レジェンドそのものだった。

ラマー・ジャクソンのようなランはないし、パトリック・マホームズのようなプラットフォームを外れたところでのとんでもないプレーもない。しかし、プレッシャーをかけられた状況や、きわめて重要な局面で見せる偉大さには、並ぶ者がいなかった。ブレイディがリードされている状況で終盤にボールを持つ度、見る者は逆転劇を期待したものだ。ブレイディは何度も、チームを奈落の底から引きずり出した。それに匹敵する才能は、もう現れないかもしれない。昨シーズンに、後に自らが”早まった”と評する決断を下し、最終的に引退を撤回してからちょうど1年、ブレイディは再び2月1日に自らの引退を表明した。

45歳までプレーする、というのは、ずっとブレイディがターゲットとして掲げていたことだ。彼はそれをやりきった。ブレイディの能力と意欲からすれば、自らが設定した垣根を超えて、あと1シーズンか2シーズンはプレーするのではないかとの見方もあった。キャリアを通じて年齢という相手にスティフアームを食らわせ続けたブレイディには、フリーエージェンシーでも多くのオファーがあったことだろう。

しかし、ブレイディは今、偉大なキャリアの終章を書き上げ、次の新たな叙事詩を始めようとしている。

【A/M】