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シカゴとの別れに「感情が入り乱れた」LBロクアン・スミス、今は新たなホームとなったボルティモアを満喫中

2023年02月05日(日) 21:03


ボルティモア・レイブンズのロクアン・スミス【Logan Bowles via AP】


現地3日(金)のチャリティーイベントで最後まで残り、満面の笑みで子どもたちに囲まれて写真を撮っていたNFLオールスターの選手がボルティモア・レイブンズのラインバッカー(LB)ロクアン・スミスだった。

それはスミスの人柄の良さを表す姿であり、最初に来て最後に帰るという彼のワークエシックの象徴でもあった。

遅すぎるほどのプロボウル選出を果たしたスミスは大きな転換を迎えた怒濤(どとう)の2022年シーズンに幕を下ろそうとしている。シカゴ・ベアーズからの移籍は彼にとってまさにジェットコースターのようだった。

「本当に感情がジェットコースターのように上下したよ。(トレードが)明らかになった最初のうちはね」と金曜日に『Donald W. Reynolds Boys & Girls Club(ドナルド・W・レイノルズ・ボーイズ&ガールズ・クラブ)』を改装するコミュニティーイベントに参加したスミスは『NFL.com』に話した。「当時はそんなこと予想していなかったんだ」

2018年NFLドラフトで全体8位指名を受けたスミスは、ルーキーシーズンから昨シーズンの半ばまで、ベアーズディフェンスの中で突出した存在だった。契約延長を願ったスミスはベアーズにトレードを要求し、シーズン前にホールドインを実行。しかし、要求がかなわないことを知ると、スミスはチームに戻って変わらない活躍を見せた。そのため、10月にボルティモア・レイブンズに送り出されたときには突然のことに面食らったといい、飲み込むのにすこし時間がかかったと今の彼は認めている。

「数週間は気持ちの整理がつかなかった。でも、ボルティモアのみんなは素晴らしい人たちだし、俺のためにすごく気を使ってくれたんだ」とスミスは言う。「そうしたら全てが俺の思いどおりになっていって、懸命に仕事に打ち込み、自分らしくいようとしたら、何もかもが素晴らしかったよ。そこを俺のホームと呼べることに今はただ興奮している」

トレードを受け入れるのに少し時間がかかったというスミスだが、彼はすぐに、そして器用にレイブンズディフェンスに適応した。

シーズンが終わるまでにレイブンズはスコアリングディフェンスで3位になり、スミスはインターセプト3回、パスディフェンス6回、サック4.5回とキャリアハイのタックル169回を記録した。これで彼は5年連続でタックル100回以上をマークしたことになる。

彼の素早い適応は多くの者にとって予想外だったかもしれないが、本人にとっては違うようだ。

「自分自身に驚いてはいない。行われていたことの多くは過去の経験から持ち越せるものだったし、大学時代やリーグ1年目にビック・ファンジオ(元ベアーズDC)から得た経験を生かせるものだった」とスミス。「素晴らしい移行だった。加えてコーチングスタッフやロッカールームのみんな、ディフェンスの人たちの助けによって、細かい部分やあちこちのちょっとしたニュアンスも分かるようになって、それらが実を結び、俺の移行をさらにスムーズにしてくれたんだ」

急速に頑強なディフェンスのセンターピースとなったスミスを見て、チームは彼を手放すまいと行動した。25歳のスミスは1億ドル(約131億1,800万円)でレイブンズと5年契約を締結している。シカゴで新たな契約を結べなかったスミスがボルティモアで新しいスイートホームを見つけ、それも代理人を立てずに契約交渉を全て自らやり遂げたのだ。

「人生って信じられないほど不思議だけど、全ての出来事には理由がある。俺はボルティモアにいられることがうれしくてたまらないし、ここが俺の居場所で、みんなも良くしてくれる」とスミスは言う。「ここをホームと呼べて最高にうれしいよ」

スミスの契約状況は確定したが、クオーターバック(QB)ラマー・ジャクソンはそうではない。ジャクソンと新たな契約を望むチームとの話し合いは長引いており、オフシーズンの注目の話題となりそうな兆候を見せている。

運命の巡り合わせか、スミスは2018年のドラフトでジャクソンより24人早く指名された。その2人が今は同じチームにいて、ジャクソンもスミスと同様に契約交渉を自ら行っている。

こうした類似点があるものの、ジャクソンとは話をしていないとスミスは言う。QBの問題である以上、それを何よりも尊重すると彼は言っている。

「彼とは何も話していない」とスミス。「みんなそれぞれ状況は違うから。俺があれこれ口を挟むのは間違っている。俺と彼の状況は明らかに違うんだ。だから、俺はあれをしろとかこれをしろとか言う立場じゃない。彼は大人の男なんだし、自分にとってベストだと思うことをするだろう。俺も1人の男として接し、彼を支えるだけだ」

プロセスを尊重するスミスは、どのチームメイトも立派な男であり、それぞれの状況に対処していると考えている。それとは別に、彼はジャクソンがボルティモアに戻ってくることを願っている。

「そう願わないヤツがどこにいるんだ?」と彼は言う。

ジャクソンがどうなるかは不明だが、スミスはすっかりボルティモアになじみ、新たなホームを見つけ、フルシーズンを過ごすより早く自分が何を求めていたのかを理解した。

彼はチームのプレーオフ進出に貢献し、待ち望んだ契約延長を果たした。オールプロのセカンドチームに2度選ばれているスミスは今年のファーストチームに名前を連ね、意外にも初めてプロボウルに選ばれている。

「もっと多くても良かったはずだと俺も思っているよ」とスミスは言っている。「オールプロには選ばれたけど、プロボウルには選ばれていなかった。その2つには少し違いがある。どっちも名誉なことではあるけどね。俺のポジションで出場を願う人は大勢いる」

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