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敗戦の責任を負おうとするイーグルスQBハーツ

2023年02月14日(火) 15:41

フィラデルフィア・イーグルスのジェイレン・ハーツ【AP Photo/Ross D. Franklin】

その夜、フィラデルフィア・イーグルスのほとんどの選手がすでにバスのシートに背中を預けている中、クオーターバック(QB)ジェイレン・ハーツは一人で駐車場を歩いていた。カンザスシティ・チーフスと戦い、38対35で敗れた第57回スーパーボウルで、ハーツは素晴らしいプレーを見せていた。イーグルスのヘッドコーチ(HC)であるニック・シリアニは、4回のタッチダウンを決めたハーツのパフォーマンス――ラッシングで3回、パスで1回――はこれまで共にプレーしてきた2年の中で、最高のゲームだったと評している。相手チームのクオーターバックであるパトリック・マホームズでさえ、ハーツの力を疑うものなどないと話している。

しかし、NFLに新たに誕生しようとしている王朝に紙吹雪が降り注ぐ中、イーグルスのロッカールームではハーツがチームメイトたちに、敗戦は自分のせいだと話していた。そう語る根拠は、第2クオーターでボールを持ち替えようとして落としてしまった、シンプルなファンブルにある。マホームズはハーフタイム前にハイアンクルスプレインを悪化させたように見えていたが、それでも守備陣はマホームズをサックできなかったばかりか、それほどのプレッシャーをかけることもできなかった。シリアニHCはチーフスのアンディ・リードHCとそのスタッフが、イーグルスよりもうまく状況に合わせて対応していたと認めている。うまくいかなかった部分をすべて確認するために、録画を見るつもりだとシリアニHCは話した。

しかしながら、ハーツは敗戦の責任を自分で負おうとしている。敗れた一方で、際どい接戦になったのもまた、ハーツの活躍あってのことだったにもかかわらず。

24歳のハーツは「俺は自分のやることすべてで、自分自身にとても高い基準を設定してきた」と話している。

「もちろん、自分にできるものはコントロールしようとしている。すべてのプレーでボールをタッチする。ボールを守りたい。俺たちはつらい思いをした。どんなプレーになるかなんて、分からないものさ」

「俺は愛されるためにやるんじゃない。憎まれるためにやるわけでもない。誰かの承認を求めてやっているわけじゃない。俺はロッカールームにいるみんなのためにやっている。俺たちがつぎ込んできたすべての時間のためにやっている。スリルと、俺たちが力を注ぐものに対する、愛のために。そこに届かなかったのは悔しい。でも、進む方向は上しかないと分かっているし、それがこれからのメンタリティーだ。俺たちはじっくりと振り返り、そこから学んでいく」

「俺はもう、全員に今回のことを考えるように挑んだ。自分自身を鏡に映し、すべてから学べるようにと。勝つか、学ぶかだ」

イーグルスは前半に相手を圧倒し、前半終了までに10ポイントのリードを築いた。マホームズは第2クオーターの終盤に、負傷していた足首をさらに痛めている。チーフス攻撃陣のタッチダウンドライブは1回のみ。他の得点はファンブルリターンによって決めたものであり、イーグルスはすでにそれを取り返すだけのプレーを見せていた。しかし、後半には明らかな変化があった。チーフスはボールを運び、イーグルスはそれを止めることができない。イーグルスは後半で119ヤードをチーフスに許している。最後の2クオーターでのマホームズのパスは100ヤードに満たなかったものの、サックされることはなく、チーフスの最終ドライブでは26ヤードのスクランブルも敢行している。そのおかげでフィールドゴール圏内に入ったチーフスは、試合の最後までの時間をクロックマネジメントに費やした。

イーグルスのベテランディフェンダーであるブランドン・グラハムは「俺たちはただ、フィールドから離れられなかった」と話している。

つまり、ハーツはベンチにとどめられ、その手足で相手に与えられたかもしれないダメージを与えられないままだった。ハーツはこの試合で304ヤードをマークし、タッチダウン1回に加え、70ヤードを走って3回の得点を挙げている。最後の得点では2ポイントコンバージョンでも走り、試合は5分を残してタイに持ち込まれていた。ハーツはストイックな姿で知られ、感情をあらわにすることはまれだ。しかし、日曜日の夜は指の皮膚をつまみながら、特に息をつまらせるような様子を見せつつ、チームメイトに向かって話していた。イーグルスは核となる4選手――5年前にチーム初めてのスーパーボウルタイトルを獲得したチームにいたベテランの4人のリーダーたち――を維持するというぜいたくを味わった。だが、彼らの時間もこれで終わりかもしれない。それぞれが引退や、フリーエージェンシーの期間を迎えようとしている。ハーツは疑いようのない、イーグルスのリーダーだ。このシーズンに目立った存在になったハーツは、急速な成長によってリーグのMVP候補となり、あと少しでイーグルスに2つ目のロンバルディトロフィーをもたらすところだった。イーグルスがハーツに信頼を置いているのは明らかだ。ファンブルを犯した後の最初のオフェンシブプレーで、イーグルスはハーツにランをコールし、14ヤードを進めた。そのときにはもう、ファンブルのことを忘れていたとハーツは言う。ハーツはそれぞれのプレーだけを見ているのだ。

シリアニHCは「ジェイレンの天井がどこなのか、誰も知らないと思う。彼はすべてをそこに置いてきた。われわれを35ポイントにまで導いた。私は彼に満足していると、彼には話した。このゲームだけじゃない。シーズン全体のことだ」とコメントしている。

来季のイーグルスは別のチームになりそうだ。グラハムは去っていくかもしれない何人かの選手にタイトルを与えられなかったことに苦しんだ。多くの熱心なイーグルスファンが、もっとブリッツがあったらと想像したり、リーグで最も支配的だったパスラッシュがクイックスローやチッピングによっていかに弱められたかを振り返ったり、チーフスの最終ドライブでジェームズ・ブラッドベリーが守備のホールディングをコールされていなかったらどうなっていたかを考えたりすることに、これからたくさんの時間を費やすだろう。

おそらくこれから長い間チームにとどまり、イーグルスに新たなスーパーボウル出場のチャンスを与えるはずの選手は、熱狂的なイーグルスファンで、自らポッドキャストで発信している、ジョバンニ・ハミルトンという名の15歳のレポーターによるこの日最後の質問に答えた。ポッドキャストに登場したハーツは、ハミルトンを見るとすぐにほほえみ、直接会ったことはなかったと話している。ハミルトンは挫折から学ぶ教訓についてハーツに質問。それに答える間、ハーツはずっとハミルトンの目を見ていた。

「これまで一緒にやってきた人との時間は、大事にしたいだろ。家族や自分の好きな人、チームメイトたち」と語りだしたハーツは、こう続けている。

「俺はこれまで乗り終えてきたすべてのことについて、このチームをとても誇りに思っている。もちろん、俺たちには達成したいと思っている大きな目標があって、そこに届かなかった。誰もがそれぞれの痛みを経験し、人生でそれぞれの苦しみを経験するのは、美しいことだ。でも、そこから学びたいかどうかは自分が決める。それが学びになるときだったかを決めるのは、自分なんだ。俺は、自分が何をやるか分かっている」

そして、スーパーボウル優勝の機会を奪われたイーグルスも、そこから何をつかまなければならないかを知っているはずだ。

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