RBテイラーとの状況は“最悪”だが“関係は修復できる”とコルツGMバラード
2023年08月31日(木) 13:16インディアナポリス・コルツが現地29日(火)のロースターカットダウン期日までにランニングバック(RB)ジョナサン・テイラーを移籍させられなかったことから、テイラーの状況は長編小説のようなものへと変化している。
テイラーは結局、トレーニングキャンプへの参加を妨げる原因となった足首の問題を抱えたままPUP(故障者)リストでシーズン開幕を迎えることになった。つまり、テイラーは少なくとも2023年シーズン最初の4試合を欠場するということだ。しかし、これは単なる足首のケガの問題ではない。契約延長の可能性をめぐり、スター選手とクラブの関係にほころびが生じていることが問題なのだ。
コルツのジェネラルマネジャー(GM)クリス・バラード――クラブの表看板となっている人物――は水曜日にこの件について話し、報道陣に対して極めてシンプルに「最悪だ」と明かしている。
「コルツにとっても、ジョナサン・テイラーにとっても、ファンにとっても最悪だ」とバラードGMはあけすけに認めた。
「これが私たちの現状だ。そして、それを乗り越えなければならない。乗り越えるために全力を尽くすつもりだ。関係は修復できる。修復可能だ。選手たちが感情的になって自分の立場を主張したら、それらに対処できるようにならなければならない」
「やるべきことがある。人間関係についてやるべきことがある。問題の解決策や今後やるべきことを見つけるために、取り組まなければならないことがある」
テイラーにまつわる騒動が本当の意味で始まったのは、コルツのオーナーであるジム・アーセイがランニングバック市場の低迷や、ポジション別の報酬水準を撤廃するためのフランチャイズタグの調整を含む、NFLのランニングバックから提案された変更についてコメントしたときだった。その中で、コルツがテイラーと契約延長の交渉をしていなかったことが明らかになっている。それが、7月にオーナーのバスでアーセイとテイラーが会議する事態へとつながり、結果としてテイラーがトレードを要求するに至った。
当初、コルツは断固としてテイラーをトレードしないという姿勢を示していた。水曜日にも、バラードGMはクラブが“このチームから彼を出て行かせるつもりはなかった”と述べている。
結局のところ、バラードGMをはじめとするコルツのフロントオフィスは先週に、トレードを追及する許可をテイラーに与えたが、8日にわたる獲得可能期間を経ても、コルツがテイラーを他チームに送ることを検討するほど強力なオファーはなかった。そうなると選択肢は1つしかない。つまり、オフシーズンに手術が必要となった足首のケガから回復すべくリハビリを続けているテイラーをPUPリストに置いたまま2023年シーズンを迎えるということだ。
バラードGMは水曜日に「去年の手術の影響がまだ残っていて、痛みもあり、100%ではない」と説明。「私たちはまだ足首の痛みを訴えている選手をフィールドに出すつもりはない。どんな選手にもそのようなことはしないし、誰に対しても特別扱いはしない。つまり、ジョナサンがやることは、全力でリハビリして準備を整えることだ」
バラードGMは契約問題ではなく足首のケガを、テイラーをPUPリストに置いたままシーズン開幕を迎える理由として繰り返し挙げた。バラードGMが水曜日に認めたように、テイラーがチーム施設でリハビリを行うことは注目に値するだろう。
しかし、だからと言って両者の関係が急激に修復されたわけではない。どちらかと言えば、再びフィールドで協力するためには妥協点を見出さなければならないということを両者ともに理解しているように聞こえる。
このような事態になる前に、解決に向けてできたことはなかったかと問われたバラードGMは「私はすべての話し合いでとても誠実だったと思うし、もっと違ったやり方があったのではないかと、とことん考えてきた。どちらの立場でも、“もう少し違うやり方をしていればよかった”と言うに違いない」と述べ、こう続けた。
「だが、1つ分かっているのは、自分にとっても、誰にとっても、ここで誰かのせいだと言ってもいいことはないということだ。それは生産的じゃない。解決策を見つける助けにはならない」
その解決策とはやはりトレードなのかもしれない。『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートが水曜日に報じたように、グリーンベイ・パッカーズを含む複数のチームがテイラーのトレードに興味を持っていた。酌量すべき事情があれば、あるチームがテイラーにオファーを出す可能性が高まるかもしれない。逆に、テイラーとコルツの関係がさらに悪化すれば、提示価格が下がる可能性もある。
しかし現在、コルツは自分たちが作り出した状況の重大さを理解しているようだ。とはいえ、このような状況であることから価値ある選手――バラードは水曜日にテイラーをそう評した――を保持したことへの評判が悪くなることは受け入れないだろう。
なぜコルツはテイラーに高額報酬を支払いたくなかったのかという質問に対し、精彩を欠いていた昨季の成績を指摘したバラードGMは、次のようにコメントしている。
「調べたら分かると思う。私たちは選手たちの契約延長を早めに実現させてきた。選手が5年目を迎える前に延長したこともある。どの状況もそれぞれ少しずつ違うと思う。キャンプ中にも説明したが、昨季から立て直すのは大変なことだ。勝ったのは4試合だった。コーチングスタッフも、それを取り巻く状況もすべて一新された。だから、どの状況も異なると思う」
現時点では、次のいずれかの結果になる可能性が高い。1つ目はコルツが満足のいく見返りを提示してくれる適切なトレード相手を見つけること(バラードGMは水曜日にこれについて議論するのを拒否した)。2つ目は、テイラーがリハビリしている間に両者が関係を修復し――可能であればその間に契約延長に合意し――プレーできるようになったときに共に仕事をする方法を見つけることだ。
「こんなことは初めてだから、がっかりしている。だから最悪だ」とバラードGMは話している。「選手たちに自分の立ち位置や、今後どうするつもりなのかを知ってもらうために、私たちはうまくコミュニケーションをとってきた」
「何事にもはじめがある。こういうことは時として起こるものだ。私たちはただそれを乗り越えるだけ」
その時が来るまで、これは注目すべきストーリーであり続けるだろう。時が経てば解決し、コルツは少なくともある程度の時間を味方につけることができるはずだ。
バラードGMは現時点でテイラーの顔に泥を塗るようなことはしないだろう。今は関係性についても、報酬についても、全てを正す機会があるわけではない。
バラードGMは水曜日に行われた記者会見の冒頭で「ジョナサンがとても尊敬されていて、本当にいい人間で、すごく優秀なフットボール選手だということをみんなに知ってもらいたい。このことはみんな知っているだろう?」と語り、こう続けている。「こういうことは起こってしまう。入ってくるどの新人にも言っているのだが、意見が食い違うときは必ず来るものであり、たいていの場合はお金に関することで、それは難しいものになる。ただ、だからといってその人に対する私の思いやりのレベルが変わるわけではないことは知っておいてほしい」
「私はジョナサン・テイラーのことを心から気にかけている。ジョナサン・テイラーを心から尊敬している。たとえ苦しくなっても、私はその関係を終わらせないと言っておこう。そんなことはしない。あの若者のことをものすごく考えている。彼がこの組織に与えてくれたものや、私たちのためにどのようにプレーしてきてくれたかを、私はものすごく考えている」
【RA】