ニュース

ジャイアンツのドラフト外ルーキーQBトミー・デヴィートがチームを3連勝に導く

2023年12月13日(水) 11:26

ニューヨーク・ジャイアンツのトミー・デヴィート【AP Photo/Adam Hunger】

ニューヨーク・ジャイアンツにドラフト外フリーエージェント(FA)で加入したクオーターバック(QB)トミー・デヴィートが、現地11日(月)の夕方、最高のパフォーマンスを見せた。

両親と、自分によって刺激されたホームの観衆の前でプレーしたデヴィートは、そのスクランブルとスローでグリーンベイ・パッカーズを相手にチームを24対22のスリリングな逆転勝利に導いた。

デヴィートは試合を決めたドライブの前に頭にあったことに触れつつ「ただ試合に勝ちに行くんだ。練習前に毎日練習している。2分間のドライブを実行するんだ。毎日違う状況を想定して練習している。だからとにかく試合に勝ちに行くってことだ」話している。

ルーキーとはいえ、デヴィートの度胸と冷静さは試合を目前にして明らかであり、ヘッドコーチ(HC)にとっても驚きはなかったようだ。

ジャイアンツのブライアン・ダボールHCは、冷静さを保つことについてデヴィートと話したことを振り返り、「心配することはない。彼は冷静さを保っている。本当に落ち着いているんだ。ここに好きなプレーがいくつかある。フィールドに出てあのクソ野郎をやっつけろ。実に簡単なことだ」と述べた。

デヴィートはジャイアンツを2022年シーズン以来の3連勝に導き、『NFL Research(NFLリサーチ)』によると、現在のドラフト制度が始まって以来、2度目の試合を決めるドライブでNFLのドラフト外新人QBとしてはNFL最多タイ記録の3勝を達成した。

チームを21対13とパッカーズ相手に優位に導いたデヴィートだったが、試合時間残り1分33秒でパッカーズのQBジョーダン・ラブがワイドレシーバー(WR)のマリク・ヒースにパスを通しタッチダウンを決め、スコアは22対21となった。しかし、デヴィートの物語はまだ終わっていなかった。

ニュージャージー州リビングストン出身のこの25歳のクオーターバックは、WRワンデール・ロビンソンへの32ヤードのパスをカギとする57ヤードのドライブでジャイアンツをリードし、試合時間残り0秒という場面でのキッカー(K)ランディ・ブロックの37ヤードの決勝フィールドゴール(FG)をお膳立てした。

デヴィートはヘッドコーチと抱き合って祝ったブロックのフィールドゴールについて「俺はダブの隣にいたんだ。彼が(一緒に見ようと)俺に言ってほしかったのかはわからないけど、彼は最初見ようとしなかった。でも、彼は“やっぱり見るぞ”という感じになって、俺は“分かった”って感じだったんだ。それで、俺たちはお互いのすぐ隣に立って、成功するのを見た瞬間、純粋に興奮した。俺は彼をつかみ、抱きしめて、愛していると伝え、チームメイトと喜び合ったんだ」と話した。

ゴールデンタイムにスリリングなプレーを見せたデヴィートは、パス21回中17回成功、158ヤード、71ヤードのキャリーでタッチダウン1回を記録した。もう一人のクオーターバックであるラブと対戦した”トミー・カツレツ”(デヴィートのあだ名)は、だんだんと調子を上げてきたラブの勢いが落ち着いた後も調理を続けた。

先発のQBダニエル・ジョーンズと2番手のQBタイロッド・テイラーがケガで欠場したため、シーズン第8週にNFLデビューを飾った身長185センチのデヴィートは、ジャイアンツ最後のクオーターバックとなった。最終的に13対10で試合に敗れ、攻撃陣は明らかにデヴィートの手に試合が渡るのを避けるように管理されていたなかで、彼は7回パスを投げた。

デヴィートは復帰したジョーンズがACL(前十字靭帯/ぜんじゅうじじんたい)断裂でシーズンを棒に振った翌週も途中から出場。ラスベガス・レイダーズに30対6の大敗を喫したこの試合で、パス20回中15回成功、175ヤード、タッチダウン1回を記録した。

ジャイアンツにはフリーエージェントのQBを信頼する以外にほとんど選択肢がなかったため、この若者を気楽なソファからおろして先発の仕事を任せることを決断したのだ。

デヴィートは闘志を見せたが、憎きダラス・カウボーイズに49対17で打ちのめされる形でジャイアンツの悲惨なシーズンは続いた。

しかし、その後のワシントン・コマンダース戦ですべてが好転した。デヴィートが3本のタッチダウンパスを投げ、チームはコマンダースを31対19で下している。その1週間後、デヴィートとそのチームはニューイングランド・ペイトリオッツに10対7で勝利した。

そして今週のマンデーナイトでは、たくさんのファンファーレや家族の応援のなか、1988年のコメディ映画『Coming to America(邦題:星の王子 ニューヨークへ行く)』で予言されていたような結末が待っていた。

デヴィートはランニングバック(RB)セイクワン・バークリーのタッチダウンランを頂点とする2つの得点ドライブを率いた。その後デヴィートは、自らのスクランブルでWRアイザイア・ホッジンズを見つけ、エンドゾーン後方へ美しいパスを放ってホッジンズのタッチダウンキャッチを演出している。

終盤にパッカーズが調子を上げていたにもかかわらず、マンデーナイトはデヴィートとジャイアンツのものだった。

ダボールHCは「彼は正しいことをやっている若い選手だ。チャンスを最大限に生かしている。今日プレーする権利を得て、次の週もプレーする権利を得た。彼はいい仕事をしている」とコメントした。

ジャイアンツは現在5勝8敗でNFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)東地区3位でカンファレンス12位だ。プレーオフへの復帰は大きな賭けとなる。昨年のプレーオフ進出後、ジャイアンツは期待を大きく裏切っている。

しかし、無名のデヴィートがどこからともなく現れ、ストーリーとなり、ジャイアンツが最初の10週間沈んでいたどん底から解放してくれた。今のところ、ジャイアンツにとってはそれで十分だ。

デヴィートは「今年はどの試合でも、スコアがどうであれ、どんなスナップでも決して諦めない姿勢を見せたと思う。スコアボードを見上げることはなかった。毎プレー、毎試合、戦い続けた。そしてそれは、だんだんと試合で実を結び始めている。これからも毎週1勝することを続けていくだけだ」と語った。

【AK】