コラム

マーシャルに続きデッカー、マックリンも! レシーバーを襲う粛清の波

2017年06月11日(日) 10:13

ニューヨーク・ジェッツのブランドン・マーシャル【AP Photo/Bill Kostroun】

レシーバーに受難のオフシーズンだ。5月初旬にブランドン・マーシャルを解雇したジェッツはさらにエリック・デッカーを放出する計画があることを明らかにした。ジェッツはあくまでもデッカーのトレードを模索するが、交渉が不調であればリリースするとしている。

チーフスではジェレミー・マックリンを移籍後2年でカットした。イーグルス時代に彼をドラフト指名したヘッドコーチ(HC)アンディ・リードに請われて鳴り物入りでチーフス入りしたマックリンだったが、結婚式を挙げた直後に新チーム探しを余儀なくされることとなった。

ジェッツは3年目を迎えるトッド・ボウルズHCの下で急速なチームの世代交代を図っており、数字の落ちてきたベテラン選手を惜しげもなく解雇している。『NFL Network(NFLネットワーク)』の報道によればレイブンズから引退したワイドレシーバー(WR)スティーブ・スミスに現役復帰を促したようだが、あっけなく袖にされた。これは若いレシーバー陣を指導するメンター的な存在を欲した結果だろう。

NFL歴7年のマックリンは昨季こそケガと落球グセで成績が落ちたが、ダウンフィールドを攻めるレシーバーとしての実績があり、選手としての商品価値はそれほど落ちていないと考えられる。しかし、チーフスでは昨季タイリーク・ヒルがエースWRとして台頭し、マックリンの影は薄くなっていた。最大で1,240万ドルもの額が今年のサラリーキャップに反映する予定だっただけに、チーフスはマックリンと袂を分かつ決断をした。浮いた年俸分はドラフト指名選手や新たなフリーエージェント(FA)選手との契約に回される。

一方、レイブンズではタイトエンド(TE)デニス・ピッタが腰を痛めたとの情報がある。過去に2度の手術を行った箇所だ。2013年と2014年に負傷し、2015年は全休。ようやく昨季に故障を克服したかと思われた矢先だ。

詳細はまだ伝わっていないが、今シーズンの長期欠場の可能性は高く、悪くすれば今度こそ選手生命を絶たれることになりかねない。レイブンズにとってはスミスに続くベテランレシーバーの不在となり、新たな人材を求める必要がありそうだ。皮肉にもマックリンがFA交渉に応じるとの情報もある。

レシーバーに限らないが、エースとして一時期を築いたベテラン選手の“再就職”は予想以上に難しい。年俸が高いだけでなく、ピーク時の印象が強いために数字の低下が必要以上に体力の減退と判断されることもあるからだ。マックリンなどはその例だ。

初めてプロボウルに選出された2014年には85パスキャッチで1,318ヤード、8タッチダウンをマークした。しかし、12試合の出場に終わった昨年は44キャッチ、536ヤードでタッチダウンレセプションはわずか2回だった。これでは上記のキャップバリューには見合わない。

ちなみにマーシャルはすでにジャイアンツと契約を済ませたが、ペイカットを受け入れざるを得なかった。マックリンもすでにビルズやレイブンズが関心を持っているとされるが、厳しい条件を飲む覚悟は必要だ。

華やかなポジションだけにかつてのエースレシーバーたちの解雇のニュースはショッキングで、そのたびにNFLのビジネスとしての厳しさを再認識する。このオフも例外ではなかったということだ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。