終止符はいつ? 迷走するジャガーズの1巡指名
2017年07月01日(土) 13:59ドラフト1巡指名が重要であるのは今さら言うまでもないことだが、上位指名権を毎年のように獲得していながらそれが戦力アップにつながらないチームがあるのも事実だ。そのひとつがジャガーズである。
ジャガーズは今年のドラフトでは1巡4番目の指名権を持ち、ルイジアナ州立大学のランニングバック(RB)レオナード・フォーネットを獲得した。サイズ(185cm、107㎏)とスピードを兼ね備えたダウンフィールドランナーで、フィーチャーバックとして期待がかかる。
ただ、ファンには不安をかきたてられる事実がある。ジャガーズの1巡指名は“バスト(期待外れ)”が多いのだ。
ジャガーズが1巡指名の上位5位以内の指名権を保持したのは今年で6年連続。これはNFLで前例がないという。裏を返せばそれだけ長きにわたってチームが低迷している証拠でもある。事実、2011年以降のジャガーズは最多でも5勝(2011年、2015年)で6年のトータルでも22勝しかあげていない。しかも、トップ5指名を行使しているにもかかわらずチーム状況の改善はみられない。
昨季を3勝13敗で終えたジャガーズは9年連続でプレーオフから遠ざかっている。敗戦が10未満だったのは2010年(8勝8敗)が最後だ。この間にオーナシップも替わり、HCも交代したが1990年代後半にプレーオフの常連だった面影はない。
1巡上位指名の失敗は2012年のワイドレシーバー(WR)ジャスティン・ブラックモン(全体5位指名)から始まった。身体能力に優れたブラックモンは新たなジャガーズのプレイメーカーだった。1年目は14試合に先発出場し、865ヤードを獲得して5タッチダウンをマークしている。ところが翌シーズン途中に行動規約違反で出場停止処分を受ける。
これだけなら2014年には復帰が認められたはずだったが、謹慎処分中にマリファナ所持で逮捕され、さらに2015年にも道交法違反で逮捕される不祥事を起こし、いまだに無期限出場停止処分を科されたままだ。
2013年のドラフトは現ジェネラルマネジャー(GM)デービッド・コールドウェルが就任して初めてのものだった。彼が全体2位指名権を行使したのはレフトタックル(LT)ルーク・ジョーケルだった。ジャガーズ創生期の名LTトニー・ボセリの再来と期待されたジョーケルだったが、故障もあってスターターに定着できず、このオフにシーホークスに移籍した。
この翌年に1巡指名で入団したのがクオーターバック(QB)ブレイク・ボートルズである。全体の5番目指名だった。フランチャイズQBとなるべき人材と期待され、現在も先発を任されているが、パス成功率は60%に届かず、好不調の波が大きいままだ。2年目だった2015年シーズンは4,428ヤードパッシングと35タッチダウンパス成功で大物の片鱗を見せたものの、昨年は肩と手首の負傷の影響もあり、レーティング78.8と苦しんだ。今季は正念場で、結果を残せないようであれば放出される可能性が大だ。
2015年のディフェンシブエンド(DE)ダンテ・ファウラー(1巡3位)はミニキャンプ初日に膝の靱帯断裂の不運に見舞われ、シーズン全休。NFLデビューを果たした昨年も先発は1試合だけで、1巡上位指名に見合った活躍ができたとは言い難い。昨年の1巡指名(全体5位)であるコーナーバック(CB)ジェイレン・ラムジーは全試合に先発出場し、終盤に2インターセプトで貢献した。外れの続く1巡上位指名に歯止めをかける存在として期待のかかる人材だ。
過去2年間でフリーエージェント(FA)やトレードを使って積極的な補強を行ってきたジャガーズだが、今一つそれが勝利数の増加に結びついていない。それは、失敗の続くドラフト戦略とも無関係ではないだろう。
ダグ・マローン新体制となる今シーズン、FAやトレードで獲得した選手はもちろん、最近のドラフトで指名した若手がどれだけ成長して活躍するかが低迷脱出のカギを握る。AFCでは比較的競争の緩いと予想されるサウス地区で、新戦力の台頭次第で勝ち星は稼げる。上昇気流に乗るにはやはり過去の1巡上位指名選手の奮起は不可欠だ。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。