コラム

チーム資産価値、11年連続カウボーイズがトップに

2017年10月08日(日) 08:26

ダラス・カウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズ【AP Photo/Gene J. Puskar】

9月18日、経済誌『Forbes(フォーブス)』は今年のNFL全チームの総資産価値ランキングを発表した。所属32チームの平均資産価値は25億ドル(約2,750億円)で昨年より8%増となっている。5年前にカウボーイズが初めて20億ドルを突破したが、今年20億ドル以上と算定されたチームは27チームに達した。

また営業利益は平均1億1,000万ドル(約111億円)で、最も少ないレイダースでも4,100万ドル(約45億円)となっている。

昨シーズン、アメリカではテレビ中継が大統領選や人種差別への抗議行動などの影響で、前年比で8%ダウンするなどビジネスへの悪影響が懸念されたが、それでもリーグ全体で拡大が継続しているのである。これは2021年まで続くテレビ放映契約によって年総額54億ドル(約5,940億円)もの放映権料が安定してリーグにもたらされ、それがチームに配分されていることと、チーム側に有利な労使協定が収益を押し上げる要素となっている模様だ。

最も資産価値が高いと判定されたのは11年連続でカウボーイズ。さらに世界中のスポーツチームの中でもトップとなっている。その価値は48億ドル(約5,280億円)で昨年よりも14%の増加だ。営業利益は3億5,000万ドル(約385億円)で、こうした伸びは昨年チームが好調だったことから、グッズなど物販が拡大したことと、さらに新たにザ・スターと呼ばれるチーム本部、練習施設が建設され、ザ・スターのために結ばれた新たなスポンサー契約による収入が約2,000万ドル(約22億円)加わったことが寄与している。

カウボーイズオーナーのジェリー・ジョーンズは1989年に1億4,000万ドル(現在の2億7,582万ドル、約303億円に相当)でカウボーイズを買収した。これは全世界で初めて1億ドルを超えるスポーツチームの買収だったのである。そこからカウボーイズの資産価値はリーグ平均を30%ないし60%上回るペースで上昇を続けてきたのである。特にここ10年間の伸びは顕著で15億ドル(約1,650億円)から48億ドルと220%も拡大している。これはリーグ平均の9億6,000万ドル(約1,000億円)から25億ドルの161%を大きく上回っている。

こうしたカウボーイズの資産価値拡大を支えてきたのはなんといってもジョーンズオーナーのビジネス手腕だ。破格といわれた買収当時、チームの状況は決して良好なものではなかった。ジョーンズがスポーツ専門局『ESPN』のインタビューで語ったところによると、買収当時のカウボーイズは毎月100万ドル(現在の約200万ドル、2億2,000万円)の赤字を出していたのだとか。さらにチーム買収のため借りた資金が数百万ドルあり、その金利が11%だったため、「1日の請求書が約10万ドルだった」と話している。

ジョーンズはそんな状況からカウボーイズをNFLトップ、さらには世界一のチームに導いたのだ。特に注目されたのが1990年代半ば、ナイキやペプシといったNFLの公式スポンサーのライバル企業と次々にスポンサー契約を結んだことだ。チームではなく、スタジアムが契約する形をとることでリーグのスポンサー契約規制に抵触することを迂回したのである。この件はリーグと訴訟にまでなりかけたが、結局リーグを折れさせた形で収まっただけでなく、今年殿堂入りすることになったほど、後にその功績が認められたのである。

そしてそのビジネス手腕は現在も衰えていない。今回の資産価値判定に含まれない物販会社シルバー・スターを運営する他、子供向けスポーツアプリなどを開発するブルー・スター・スポーツを起業、運営に携わるなど新たなビジネス開発を続けている。

さてカウボーイズに続く総資産価値ランキングだが、2位は37億ドル(約4,070億円)でペイトリオッツだった。昨年比で9%の伸びとなっている。第51回スーパーボウルで劇的な優勝を飾ったこともあり、物販収入が50%以上伸びたことが大きかった。

3位はジャイアンツで33億ドル(約3,630億円)、4位レッドスキンズが31億ドル(約3,410億円)、5位49ersは30億500万ドル(約3,306億円)と続く。

一方、低いと判定されたチームは30位がベンガルズで18億ドル(約1,980億円)、31位ライオンズ17億ドル(約1,870億円)、最下位がビルズで16億ドル(約1,760億円)だった。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。