コラム

シーズン4分の1が終了、好調チームとターンオーバーの相関性

2017年10月07日(土) 14:34

デトロイト・ライオンズ【AP Photo/Paul Sancya】

NFLはシーズン第4週を終了し、早くもレギュラーシーズンの4分の1が経過したことになる。ハリケーンの影響で開幕週の試合が延期となったバッカニアーズとドルフィンズを除いて4試合を消化したが、この頃になるとチームの方向性も固まり、持っている力が表面化する。すなわち、実力がある程度測れる時期になるのだ。

もちろん、今後の選手の成長や主力選手の故障の程度によって戦力はさらに大きく変わるからプレーオフを占うにはまだ早すぎる。だが、キャンプからプレシーズンを通して目指してきたチームの形がそろそろ整い始めている。

それを前提に現在の順位表を見ると、唯一の無敗であるチーフス(4勝0敗)の好調ぶりが目立つほか、ビルズ、イーグルス、ラムズ(いずれも3勝1敗)といった昨季はプレーオフに進出できなかったチームの健闘が光る。こうしたチームがシーズン終盤まで好調を維持すれば、ペイトリオッツやスティーラーズ、シーホークスといったプレーオフ常連組を脅かす存在となって面白くなるだろう。

さて、今回はディビジョンの首位に立つチームをターンオーバーの観点から分析してみたい。現在8ディビジョンのトップチームは同率首位を合わせて12チームある。そのうち8球団がターンオーバー率(ターンオーバーを奪った数と奪われた数の差)のトップ10入りしている。

ターンオーバー率が最も高いのはライオンズの9だ。ターンオーバーを奪った数、すなわちテイクアウェイが11(レイブンズと並ぶトップタイ)あるのに対し、ギブアウェイが2つしかない。ディフェンスが相手のオフェンスをターンオーバーによって寸断し、それをオフェンスにつなげているのがよく分かる。今季はクオーターバック(QB)マシュー・スタッフォードの被インターセプトもまだ1つしかない。このペースでいけば4つで済む計算だ。そう簡単に事は運ばないだろうが、16試合に出場したシーズンではダントツで少ないペースだ。

2位はビルズとジャガーズの6だ。ビルズはテイクアウェイが7だが、ギブウェイがわずかにインターセプト1回のみ。QBタイロッド・テイラーのパスの精度が懸念された今シーズンだったが、ラン主体のスキームとショートパスに特化したオフェンスが功を奏している。ジャガーズは被インターセプトが3もあるが、テイクアウェイが10と多いので上位に食い込んでいる。ディフェンスがとってくれたポゼッションをもっと得点に結び付けられれば成績(現在2勝2敗)も伸びてくるだろう。

逆にパンサーズ(マイナス5)やファルコンズ(マイナス4)は数字が芳しくない。パンサーズは第3週のセインツ戦でのキャム・ニュートンが喫した3インターセプトが痛い。しかし、49ers、ビルズをフィールドゴールだけに抑えたディフェンスのおかげで勝ち星が伸びている。ファルコンズは失点も89と多いのだが、それを凌駕するオフェンスの得点力がチームを勝利に導いている。ただし、第4週のビルズのように奪われたポゼッションをなかなか取り戻せないようだと自慢のオフェンスも不発に終わる。今後の課題だ。

まだシーズン序盤にもかかわらず、ターンオーバー率トップのライオンズと最下位のベアーズ(マイナス7)ではすでに16もの差がある。同じNFCノースの所属で両チームのゲーム差は2でしかないが、そこには勝敗数だけでは測れないチーム力の差が明らかに存在するのだ。ターンオーバーが勝敗に与える影響の大きさはここにも表れている。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。