コラム

ドラフト有力候補紹介:その3 - DEブラッドリー・チャブ(ノースカロライナ州立大学)

2018年04月21日(土) 10:41


ノースカロライナ州立大学のブラッドリー・チャブ【Aaron M. Sprecher via AP】

昨今のドラフトでクオーターバック(QB)に次いで需要が高いのがパスラッシャーだと言われる。パス重視のNFLの特徴がよく表れた傾向だ。パスラッシュを担当するのは3-4ディフェンスならアウトサイドラインバッカー(OLB)、4-3隊形ならディフェンシブエンド(DE)である。

今年はノースカロライナ州立大学のブラッドリー・チャブが1巡上位指名確実と言われる存在だ。近年で1巡トップ3指名を受けたジェイデボン・クラウニー、カリル・マック、ボン・ミラー、マイルズ・ギャレットらと並ぶ才能の持ち主と評価されている。

チャブは4-3ディフェンスのDEとして昨年まで3年間先発を務めた。通算26サックはノースカロライナ州立大学のスクールレコードだ。実戦経験は豊富だ。OLBと違ってほとんどすべてのプレーでQBへのラッシュをすることが彼の役割だったが、数少ないパスカバーでもミスはほとんどなかったという。その意味ではNFLで主流となっている3-4にも対応が可能だろう。

パスラッシュのスタイルはスピードとテクニック重視で、パワーに頼るブルラッシュオンリーというわけではない。とくにハンドテクニックは多くのNFLスカウトから賛辞を得ている。ブロッカーを受け止め、タイミングよくボールキャリアーのランニングレーンに押し込んでプレーを潰すスタイルはチャブの持ち味だ。

性格的には非常にエモーショナルな選手のようだ。彼を紹介する『Wikipedia(ウィキペディア)』には2016年シーズンのフロリダ州立大学との試合で、自分自身が3回目の対戦で初めて勝った高揚感もあったのか、フィールド上のフロリダ州立大学のロゴに向けて唾をはいた行為もあったという。

オフフィールドでは大きな問題が伝えられないチャブだが、プレー中では熱中するあまり行き過ぎた行為があるようだ。その意味ではエンダムコング・スーのような危うさは否定できない。これをNFLチームがどう評価するかは注目だ。

気になるのはどのチームが彼を指名するかだ。1巡の指名順位上位3チーム(ブラウンズ、ジャイアンツ、ジェッツ)はいずれもQB指名するとの予想が大勢を占める。4番目のブラウンズがどう出るだろうか。ランニングバック(RB)セイクワン・バークリーを指名してオフェンス力を強めるか、チャブとギャレットのパスラッシュコンビを誕生させる選択肢を選ぶのか。

ブラウンズがバークリーを指名すれば、5番手のブロンコスがチャブ獲得に乗り出すだろう。30歳となるミラーの後継としてもうってつけの人材だ。

2番目指名のジャイアンツがチャブを獲るようだと他のチームのシナリオが大きく変わる。ジャイアンツがイーライ・マニングの後継者を必要なのは間違いないが、退団したジェイソン・ピエールポールに代わるパスラッシャーも欲しい。

ジャイアンツが2巡目以降でもいいQBを獲得できると判断するならチャブ指名は十分に考えられる。大きな賭けではあるが、チャブはそのギャンブルをするに値する人材だろう。

今季はQBを始めオフェンス選手に上位指名の評価が高い。そのなかでチャブはひときわ目立つ存在だ。パスラッシャーのニーズの有無にかかわらず、才能重視で指名しても損はない。それだけにチャブがどの順位で、どのチームに指名されるかは非常に興味深い。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。