コラム

新人ミニキャンプは「呼ばれなくてはいけない」ものと庄島辰尭(UCLA)

2018年04月16日(月) 10:59


UCLAのプロディに参加した庄島辰尭(右)と今年のドラフト注目株のジョシュ・ローゼン【Photo by - KIYOSHI MIO】
【文 三尾圭/Kiyoshi Mio】


<前編:NFL挑戦に向けて大きな一歩を踏み出した庄島辰尭(UCLA)

ドラフト候補選手は、2月下旬から3月上旬にかけてインディアナポリスで行われるスカウティングコンバインに招待される。336名のドラフト対象選手が招待され、UCLAからはケッセンベリーを含む6選手が招待を受けて参加した。ちなみにセンターは全米から9選手が招待された。

スカウティングコンバインでは40ヤード走やベンチプレスなどを計測する。NFL全チームがスカウトを派遣するだけではなく、ヘッドコーチやジェネラルマネジャー(GM)もドラフト候補生のチェックに訪れる。

スカウティングコンバインに呼ばれなかった選手たちは、所属大学が開催するプロディに参加する。プロディでもコンバインと同じように40ヤード走やベンチプレス等を計測する。コンバインに参加した選手も、所属大学のプロディにも参加するので、強豪大学のプロディにはコンバイン並のNFL球団幹部が集まる。

庄島が参加したUCLAのプロディにはドラフトで全体トップ5指名が有力視されるクオーターバック(QB)ジョシュ・ローゼンが参加したために、NFLのほとんどのチームが視察に訪れた。100名近いNFLチーム関係者の中には、ブロンコズの伝説的QBジョン・エルウェイGMや、1巡目3位指名権を持つジェッツのマイク・マッカグナンGM、第51回スーパーボウルに出場したファルコンズのトーマス・ディミトロフGMなどの姿もあった。

プロディを終えた庄島は「6、7週間、プロディのために準備してきたことを披露することができた」と自らのパフォーマンスに合格点を与えた。

「自分は無名の選手なので(チーム関係者に)自分の存在を知ってもらわないといけない」と庄島は自らが置かれた立場もしっかりと理解しているが、プロディが終わると、庄島に話しかけにきたスカウトも何人かおり、存在をアピールできたことは間違いない。

「自分の存在を知ってもらえたという点では大きな一歩だった」と言うように、プロディの翌日にはコンタクトを取ってきたチームもあり、今でも西海岸のチームを中心に複数チームが興味を示している。

「新人ミニキャンプに呼ばれる自信は?」と庄島に質問をぶつけてみると、「呼ばれる自信は考えてなく、呼ばれなくてはいけないと思っている。呼ばれるためにどうしたらいいかだけを考えて、努力していきます」との答えが返ってきた。

プロディで庄島のパフォーマンスを見たNFLスカウトの一人は「思っていたよりも身体能力が高い選手だし、パワーもあるので面白い存在だ。今日、彼を見たスカウト陣の中で、もう少し彼を見てみたいと強く思った者が1人でもいれば、ルーキーキャンプに招待されるだろう。今日の出来は良かったので、ルーキーキャンプに呼ばれるべき選手だと思ったよ」と高評価を与えた。

NFLに入る道はとても険しく、日本人でそこに到達したものはまだ誰もいない。庄島はそこにわずかでも可能性が残されている限り、まだ誰も歩んだことのない道を切り拓いていく覚悟だ。

高校に入るまでアメリカンフットボールをプレーしたことがなかったことから、名門のUCLAでプレーするまでの道のりも厳しいものだった。努力家で真面目に前だけを見て、一歩一歩前進してきた庄島のフットボール道は、まだ折り返し地点に達したに過ぎない。ここからの歩みはこれまで以上に厳しいが、庄島ほど日本人としてNFLのパイオニアになるに相応しい存在はいない。