コラム

パンサーズの“新オーナー”デビッド・テッパー氏とは?

2018年05月19日(土) 06:36

ヘッジファンドマネジャーのデイビッド・テッパー【AP Photo/Mel Evans, File】

5カ月以上にわたって協議されてきたカロライナ・パンサーズの売却がいよいよ解決を見る。ヘッジファンドマネジャーのデビッド・テッパー氏との間で金額面での合意に達し、5月21日から23日の日程でアトランタで開かれるNFLミーティングでオーナーの投票を待って正式に決定する。

売却額は22億7,500万ドルでNFLチームの身売りとしては史上最高額だ。これまでの最高額だったビルズの14億ドル(2014年)を大きく上回る。正式決定にはオーナー全32人のうちの4分の3にあたる24の賛成票が必要だが、問題なく可決する見通しだ。

パンサーズは昨年12月に創設者であり現オーナーのジェリー・リチャードソン氏が売却を発表した。売却希望額は25億ドルと高額だったが、全米でも長者番付の上位に名を連ねるテッパー氏が早くから名乗りをあげ、豊富な資金力でライバルたちに競り勝った。

NFLチームのオーナーになるためには厳格な審査に通る必要があるが、すでにスティーラーズの共同オーナーであるテッパー氏には何の問題もない。むしろ懸念されるのはテッパー氏が新オーナーとなることでパンサーズにどのような影響が及ぶかである。

テッパー氏は1957年生まれ、ピッツバーグ出身で昨年還暦を迎えた。ピッツバーグ大学のキャンパス内の図書館で働きながら同大学を卒業し、金融業につくが、まもなく同じくピッツバーグ内にあるカーネギーメロン大学でMBAを取得して現在の礎を築いた。

ファンドビジネスを展開する上で故郷のピッツバーグからオハイオ州、ニュージャージー州と拠点を移し、現在はフロリダ州マイアミにビジネスの中心を置き、自身もそこに居住しているそうだ。

そこで気になるのが新オーナーになった際に彼自身の拠点をどこに置くかである。オーナーのビジネス拠点は時にチームの移転につながることがある。近年ではラムズを買収したスタン・クロンキーが、自身のビジネス拠点のあるロサンゼルスにチームを移転した例がある(2016年)。

複数の報道によるとテッパー氏は自身がパンサーズの本拠地シャーロットに移り住むことに抵抗はないそうで、その意味ではパンサーズの移転はないとみていい。ただし、必ずしもそれは保証されていない。

というのも、パンサーズが現在抱えている課題の一つにバンク・オブ・アメリカスタジアムの改修問題があるからだ。1996年にオープンした同スタジアムは現在のNFLでは古い部類に入り、近代的な施設と貴賓席を充実させた近年の新スタジアムには見劣りがする。テッパー氏が新オーナーに就任したらすぐに解決しなければならない問題である。

バンク・オブ・アメリカスタジアムはパンサーズの所有で、基本的には改修費用は球団の責任だ。しかし、ノース、サウスカロライナ両州に援助を求める可能性は大いになり、資金援助の交渉がこじれればテッパー氏が同スタジアムを売却して別の都市に新スタジアムを求める可能性も否定できない。それこそラムズを失ったセントルイスが招致に乗り出すことがあるかもしれない。

まあ、これは先走りすぎな予測に過ぎないが、オーナー交代はこうした問題も伴うことは確かだ。

パンサーズはシーズンによって戦力のアップダウンはあるものの、プレイオフを常に狙える位置にいる。オーナー交代によって環境が改善されれば戦力向上が見込める可能性は大だ。テッパー氏の潤沢な資金が練習施設やスタジアム改修に有効に活用されれば、チーム初のスーパーボウル優勝もより現実的なものになるかもしれない。