コラム

レックス・ライアンがコーチ復帰に意欲

2018年12月16日(日) 21:43


レックス・ライアン【Photo by Chris Pizzello/Invision/AP】

来シーズン、名物コーチがNFLのサイドラインに戻ってくるかもしれない。少なくともレックス・ライアンにはその意欲があるようだ。

これはスポーツ専門局『ESPN』の番組でレックス自身が発言したもの。現在解説者としてESPNと契約するレックスは番組『ゲットアップ!』に出演。シーズン第14週のペイトリオッツ対ドルフィンズ戦で、ドルフィンズが逆転勝利を収めることとなった最後のプレーでペイトリオッツのビル・ベリチックヘッドコーチ(HC)が守備にタイトエンド(TE)ロブ・グロンコウスキーを起用したことを批判したレックスは、「何を想像できる。何を知っている? 来年、自分はたぶんフットボールに戻るだろう。誰かが自分を怒らせたとしても気にしない。気にしないだろう」と発言したのである。

自らこのような意志を示すのはかなり珍しいことだが、この発言はレックスがESPNを離れ、コーチ職、それも大学ではなくNFLに復帰する意欲を示したものと捉えられている。

レックスはイーグルスとカーディナルスでヘッドコーチ(HC)を務め、熱血コーチとして知られたバディを父に持つ。さらに弟ロブとは双子で共にディビジョンIIのサザンウェスタン・オクラホマ州立大学まで選手としてプレーした。1987年の卒業後は2人ともコーチ業に専念し、レックスはカレッジでキャリアを重ね、1994年にはロブと共にカーディナルスで2シーズンを過ごした後、再びカレッジに戻って1999年にレイブンズのディフェンシブラインコーチに就任、2005年には守備コーディネーター(DC)に昇格した。

一方のロブはやはりカレッジでキャリアを積んだ後、2000年にペイトリオッツのラインバッカーコーチに就任、さらに2004年にレイダースでDCに就くと、以降ブラウンズ、カウボーイズ、セインツでDCを歴任した。

レックスは2007年頃からHC就任を強く望み、ファルコンズやドルフィンズで面談を受けたものの落選、それが実現したのは2009年のジェッツだった。就任1年目でジェッツをAFCチャンピオンシップに導くと、翌年もAFCチャンピオンシップに進出し、その手腕は高く評価された。しかし、その後はプレーオフに進出できず2014年のシーズンを最後に解雇されたのである。

ただ、レックスとロブの実力を評価していたビルズはすぐにレックスをHCとして、ロブをアシスタントHCとして起用。珍しい双子コーチ陣が結成されることとなった。だが、2人は低迷するチームを上向かせることができず2016年の最終戦を前に2人揃って解雇されている。

以後、レックスもロブもコーチ職を離れ、レックスはESPNで、ロブは『Fox』を経てイギリスでNFLを中継している『Sky Sports(スカイスポーツ)』の解説者となり、テレビの世界に席を置いてきた。

レックスは陽気な性格と父親譲りの熱血さを併せ持つコーチとして人気があった。すでにHCを解雇したチームも出ているが、特に不調を囲っているチームを中心にシーズン後コーチ陣の入れ替えを行うチームが複数出るのは確実だ。それだけに今回の発言を受けてレックスをコーチの候補に入れるチームが出てきても不思議はないだろう。いずれにせよ今後の動向が注目される。

一方、ロブについては今のところ報道されていない。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。