コラム

3連敗のスティーラーズ、プレーオフを逃す可能性も

2018年12月16日(日) 08:30


ピッツバーグ・スティーラーズのベン・ロスリスバーガー【AP Photo/Gene J. Puskar】

シーズン第6週から6連勝と好調だったスティーラーズ(7勝5敗1分)が一転して3連敗を喫し、苦境に立たされている。

依然としてAFC北地区の首位ではあるが、2位のレイブンズとの差は0.5ゲームに過ぎない。そして、シーズン第15週にはペイトリオッツ、その翌週にはセインツと強豪との対戦が続く(最終戦はベンガルズ)。3季連続の地区優勝は危うい状況で、2014年から続くプレーオフ出場が途絶える可能性もある。

3連敗中はいずれも第4クオーター終盤の競り合いに負けている。シーズン第12週のブロンコス戦は残り1分で敵陣2ヤードまで進んでいながらベン・ロスリスバーガーのパスがエンドゾーンでインターセプトされた。翌週のチャージャーズ戦では最終プレーで決勝のフィールドゴールを決められた。レイダースと対決した前戦では残り21秒で逆転のタッチダウンを奪われ、同点を狙ったフィールドゴールが失敗して苦杯をなめた。

終盤にリードしている場面で逆転を許し、追い上げているときはあと一歩のところで痛恨のミスが出る。多くのNFLコーチが言うところの、「試合をフィニッシュする」ことができていないのだ。

試合をフィニッシュするとはリードを守り切るか、チャンスをしっかりと生かすなどして勝ち切ることを意味する。それが最近のスティーラーズはできていないのだ。

第一の原因はディフェンスにある。現在のスティーラーズの守備は1990年代のそれとは違い、相手のオフェンスをシャットダウンするものではない。多種多様なブリッツで3アンドアウトを狙うのではなく、一つ一つのプレーで失う距離を可能な限り少なくし、サードダウンロングの場面で一気に勝負をかけていく。

だから、ある程度のドライブは許すもののレッドゾーン侵入は防ぐのが理想形だ。これが実現するにはビッグプレーを封じることが大前提になる。ところが、連敗中のスティーラーズはいずれも第4クオーター終盤に相手にビッグプレーを喫し、短時間で大きな陣地獲得を許してピンチを招いている。

昨年からQBサックは多いがターンオーバーを起こせない傾向が続いており、それも影響している。

もう一つは、チャンスを生かしきるためのオフェンスの「駒」がひとつ足りないのだ。ワイドレシーバー(WR)アントニオ・ブラウンとジュジュ・スミスシュースターはリーグでも屈指のディープスレットコンビだ。しかし、昨年はここにランニングバック(RB)リビオン・ベルがいた。今季はジェームズ・コナーがベル不在の穴を埋めるべく活躍しているが、やはり試合を左右する場面になるとディフェンスにとってベルの脅威は大きかった。ランでもパスキャッチでも常にビッグプレーを生む可能性を秘めていたからだ。

第3レシーバーとなる存在がいればまだいいのだが、激しいスティフアームで人気急上昇のタイトエンド(TE)バンス・マクドナルドも期待の新人WRジェームズ・ワシントンもまだまだその域には達していない。

例年ならば12月こそギアを一段階上にあげてくるスティーラーズなのだが、残念ながら今年は大事な時期にブレーキがかかっている。

現在スティーラーズと同じ7勝を挙げているチームは5つある。スティーラーズは1回の引き分けがあるので少しだけ有利だが、ワイルドカード枠の争いは厳しい。プレーオフ出場には地区優勝が必須というのが事実上の状態だ。ライバルのレイブンズ(7勝6敗)は今後バッカニアーズ、チャージャーズ、ブラウンズと対戦する。この3チームの勝利数の合計は20で、スティーラーズが対戦する3チームの合計25に比べるとスケジュールが楽なことが分かる。

この不利な状況を打開してプレーオフ連続出場を伸ばすにはペイトリオッツ、セインツとの厳しい試合をものにするしかない。この2試合に今季のスティーラーズの命運がかかる。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。