コラム

「ウソじゃない、プレーオフ候補だぞ! ブラウンズ」

2018年12月23日(日) 08:31


クリーブランド・ブラウンズのニック・チャッブ【AP Photo/Eric Christian Smith】

レギュラーシーズンも残りあと2週となり、AFCではチーフスとチャージャーズがプレーオフ進出を決め、NFCはセインツ、ラムズ、ベアーズが地区優勝を達成した。両カンファレンス合わせてすでに13チームがポストシーズンの望みを失っている。AFCは残る4枠を8チームで、NFCは3枠を6チームで争うことになる。

驚くべきことに(と言うとファンに失礼だが)ブラウンズが第15週終了時点でプレーオフの望みを残している。現在6勝7敗1分でAFCでは10番目の成績。すでに8勝しているチームのうちスティーラーズを除くレイブンズ、コルツ、タイタンズのいずれかが残り2週で1つでも勝てばその瞬間にプレーオフ戦線から外れることになる――スティーラーズ(8勝5敗1分)とは勝敗数で並んでも直接対決がスティーラーズの1勝1分なので上回ることができない――のだが、それでもシーズンがここまで深まった時点でポストシーズンの可能性を残しているのは2008年以来である。異例中の異例なのだ。

NFL32チーム中で最も長くプレーオフから遠ざかっているのがブラウンズだ。最後にプレーオフに出場したのは2002年のこと。1999年に新生ブラウンズとして参戦して以降、プレーオフで戦ったのはこのシーズンだけである。

ご承知の通り昨年は16戦全敗の憂き目を見た。今季もワイドレシーバー(WR)ジョシュ・ゴードンがトレードで放出されたり、シーズン途中でヒュー・ジャクソンHC(ヘッドコーチ)が解任されたりと10月まではいつもの「残念なチーム」に甘んじた。

しかし、過去数年でドラフト指名した選手は着実に成長していた。HC代行のグレッグ・ウィリアムズが積極的に若手を登用していることもあるのだろうが、新たな戦力が出てきて現在のブラウンズの中核をなしている。

最近5試合では4勝1敗と好成績を収めている。残り2試合はホームでベンガルズ戦、アウェーでレイブンズ戦が組まれている。現在のブラウンズなら2連勝も不可能ではなく、そうすれば、すでに直接対決で1勝しているレイブンズの成績いかんでスティーラーズに次ぐAFC北地区2位でシーズンを終える可能性があり、コルツとタイタンズの戦績次第でプレーオフ第6シードに滑り込むチャンスはわずかながらにある。もっとも、コルツとタイタンズは最終週に直接対決があるから、引き分けない限りどちらかが9勝以上でシーズンを終える計算となり、ブラウンズのプレーオフはなくなる。

ブラウンズではクオーターバック(QB)ベイカー・メイフィールドが好調だ。11試合連続でタッチダウンパスを成功させており、ドラフト全体1位指名に見合う活躍を見せている。ランニングバック(RB)ニック・チャブ、WRジャービス・ランドリー、ディフェンシブエンド(DE)マイルス・ギャレットらが与えられたチャンスをしっかり生かして活躍しているのが特徴と言えるだろう。過去数年にわたって獲得してきた若い戦力がようやく開花の時期を迎えつつあるのだ。

さすがに今季はプレーオフには届かないと思うが、ブラウンズの将来は明るい。チームの立て直しを実現したウィリアムズが正HCに任命されるのか、それとも外部からの人材を招くのか。これも注目すべき点だ。ブラウンズはパッカーズに所属した経験のある人材が人事部に多く、その人脈をたどればマイク・マッカーシー前パッカーズHCの招へいもあり得る。マッカーシーならメイフィールド育成の期待も高まる。面白い人事となる。

スーパーボウル出場こそないものの、1960年代までは老舗チームとしてNFLの中核をなしてきたチームのひとつだ。プロフットボール発祥の地としてファンが誇りに思うクリーブランドのチームがプレーオフに返り咲く日はそう遠くはない。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。