コラム

明暗を分けたシーホークスとパッカーズの2018年シーズン

2019年01月02日(水) 00:02


シアトル・シーホークスのエド・ディクソン【AP Photo/Elaine Thompson】

シーホークスとパッカーズと言えば近年ではプレーオフの常連組だった。

シーホークスは2012年から5年連続でプレーオフに進出し、2013年シーズンにスーパーボウル初制覇を達成、パッカーズは2009年から一昨年までプレーオフに出場し続け、2010年シーズンにフランチャイズ4度目となるスーパーボウル優勝を経験している。

両チームとも昨年はプレーオフ連続出場が途絶えた。しかし、シーホークスが1年でポストシーズンの舞台に復帰したのに比べ、パッカーズは2年連続の負け越しで、マイク・マッカーシーHC(ヘッドコーチ)はシーズン終了を待たずに解任された。両者はどこで明暗を分けたのだろうか。

今年のシーホークスはコーナーバック(CB)リチャード・シャーマン、ディフェンシブタックル(DT)マイケル・ベネット、ディフェンシブエンド(DE)クリフ・エブリルらディフェンスの中核選手が退団し、シーズン途中にはセーフティ(S)アール・トーマスとの確執が表面化するなどいい材料が少なかった。同地区のラムズが好調なだけに一つ間違えば低迷期に突入する懸念すらあった。

それがワイルドカード枠ながらプレーオフへの切符を2年ぶりに手にするチームにまで復活した。そのカギの一つは世代交代が急速に進んだことだ。看板のディフェンスではDEフランク・クラークを筆頭にDTジャラン・リード、CBシャキール・グリフィンらがスターターに定着し、オフェンスではランニングバック(RB)クリス・カーソン、ワイドレシーバー(WR)デビッド・ムーアが台頭した。

彼らはいずれも近年のドラフト指名選手で、言わば生え抜きだ。カーソンに至っては7巡指名というシーホークス得意の下位指名での逸材発掘である。ここがパッカーズとの差だ。

パッカーズも今季はWRジョーディ・ネルソンやRBタイ・モンゴメリーを失った。WRではダバンテ・アダムスがクオーターバック(QB)アーロン・ロジャースのエースレシーバーとして活躍したが、フリーエージェント(FA)で加入したタイトエンド(TE)ジミー・グレアムは数字が伸び悩み、RBアーロン・ジョーンズも目立った活躍がなかった。両チームともドラフトでチーム作りをする基本コンセプトは共通だが、その成果は異なるということだ。

ディフェンスが売りのシーホークスに対してパッカーズの武器はオフェンスだ。そのオフェンスがかつてのような破壊力を取り戻せなかったことに今季の不振がある。

また、シーホークスのオフェンスにはQBラッセル・ウィルソンとWRタイラー・ロケットのホットラインという、オフェンスの柱となるパス攻撃が存在する。これがあるからオフェンスのゲームプランがぶれないし、ビハインドで迎えた第4クオーターでもパニックに陥ることなく積極的なプレーコールでオフェンスを展開できるのだ。もちろん、このホットラインだけで長いシーズンを戦えるはずもなく、1,000ヤードラッシュを達成したカーソンのグラウンドアタックやダグ・ボールドウィンの存在が大きいことは言うまでもない。こうした「サポーティングキャスト」が充実しているなかでウィルソンが大きな故障もなく好調で、ビッグプレーを生むパフォーマンスを披露している。

もともとシーホークスは12月の戦いに強いチームだ。今季はその本領が発揮されているし、ビッグプレーを連発し、チーフスを破ってプレーオフ出場を決めたシーズン第16週の試合内容は今後の戦いに勢いを生むだろう。

ワイルドカードからの出場でロードでの戦いを強いられるプレーオフとなるが、ポストシーズンの経験が豊富でピークの持ってくるタイミングを熟知しているチームなだけに台風の目となるかもしれない。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。