拡大を続けるスポンサー収入
2019年02月25日(月) 00:05第53回スーパーボウルでペイトリオッツがラムズを下して幕を閉じた2018年NFLシーズン、この1年でNFLと32チームがスポンサーシップ契約から得た収益は13億9,000万ドル(約1,538億8,000万円)に上ったという。これは調査コンサルタント会社『IEG』が発表したレポートで明らかにされたものだ。
NFLのスポンサー収益は2016年が12億5,000万ドル(約1,383億8,000万円)、2017年が13億ドル(約1,439億1,600万円)で、今回は前年より5.1%の伸びとなっている。これはスポーツ業界全体の平均伸び率4.1%を上回っており、NFLが高い成長率を維持していることが分かる。
今回の伸び率上昇はリーグがファストフードチェーンのマクドナルドや宅配ピザチェーンのピザハット、会計ソフトのIntuit、睡眠科学のスリープナンバーなどと新たなスポンサー契約を結んだことが要因となっている。
また、大手チケット販売業者のチケットマスターはリーグ、さらには全チームと契約を結んでおり、最も活発なスポンサー企業となっている。2位は88%と契約を結ぶアンハイザー・ブッシュ・インベブ社のビール、バドワイザーとバドライトだ。続くのはスポーツドリンクのゲーターレードで79%、IT大手のマイクロソフトが73%だった。
一方で最も多額の資金を投入している業種はビール会社で、他の業種より4.3倍もの資金をつぎ込んでいるという。自動車と電話会社も多く2.9だった。
では2019年はどうなるか。さらなる成長が期待できそうだ。1月22日、NFLはホームセンター大手のロウズと公式スポンサー契約を結んだ。ホームセンターという新たなカテゴリーが作られたのである。さらに自動車と高級車の分野についてはこれまで公式スポンサーだった現代自動車とその高級車ブランドのジェネシスが契約を終了し、現在は新しい契約企業探しを進めているようだ。また今年はNFL設立100周年にあたるため、さまざまな記念活動が行われることも好材料となっている。
ただ、それ以上に今年はある分野に注目が集まる。それは昨年のスポーツ賭博の合法化だ。これに最初に対応したのがカウボーイズで、昨年9月にはウィンスターワールド・カジノ&リゾートとチームの公式カジノ契約を結んでいる。さらにレイブンズ、ベアーズ、コルツ、セインツ、レイダース、イーグルスもカジノと契約しており、今後続くチームも多そうだ。
NFL自体も1月にシーザーズ・エンターテインメントと公式カジノパートナー契約を結んだことを発表している。年間3,000万ドルの権利料がNFLに支払われる模様だ。とはいえ、現在カジノとの契約は解禁したものの、スポーツ賭博やデイリーファンタジーなどとの契約は禁止したままで、シーザーズとの契約もカジノやリゾートに限定したものとなっている。
カジノなどの業界団体アメリカン・ゲーミング協会はスポーツ賭博の解禁によって年間最大23億ドルの増収を見込めるとの試算を発表している。リーグ製品の消費が増えることにより新規収入が17億5,000万ドル、賭博事業者およびデータプロバイダからの権利料5億7,300万ドルの新規収入、スポンサーシップが4億5,100万ドル、賭博に利用されるデータで3,000万ドルというのがその内訳である。いかに増収につながる分野であるかが分かるだろう。
2シーズン連続で低下していたレギュラーシーズンのテレビ中継視聴率も2018年は持ち直した。スーパーボウルの視聴率が過去16年間で最低だったという数少ない懸念材料はあるものの、NFLの拡大路線はしばらく止まらなそうである。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。