コラム

いよいよ移籍へ、注目されるQBニック・フォールズの去就

2019年02月24日(日) 05:35

フィラデルフィア・イーグルスのニック・フォールズ【AP Photo/Mark Tenally】

イーグルスのバックアップクオーターバック(QB)ニック・フォールズの退団と移籍がほぼ確実となった。イーグルスは慰留を試み、2019年シーズンの契約に対してオプションの権利を行使したが、フォールズがこれを拒否。両者の合意が成立しなかったため、このままではフォールズは新リーグイヤーの開始(3月13日)と当時にフリーエージェント(FA)となる。

フォールズがイーグルスのオプション行使、すなわち2019年の契約の有効化を拒んだということは控えの座に甘んじるのではなく、新天地で先発QBの座を確保したいという意思の表れだ。イーグルスはフォールズに対してフランチャイズ指名もしくはトランジッション指名することで独占契約交渉をすることは可能だが、慰留はかなわないだろう。

イーグルスにおけるフォールズの価値は今さら言うまでもない。2018年はレギュラーシーズン終盤に膝の靱帯断裂で戦列を離れたカーソン・ウェンツに代わってチームを初のスーパーボウル優勝に導いた。加えて、自身もスーパーボウルMVPを受賞している。

昨年もやはりウェンツが背中の故障で離脱した際に代役を務め、ほぼ絶望的だったプレーオフ進出を現実のものとし、ワイルドカードラウンドでは第3シードのベアーズを破った。ディビジョナルプレーオフでセインツに敗れて2年連続のスーパーボウル出場は果たせなかったが、フォールズの勝負強さとバックアップとしての抜群の頼りがいは改めて高い評価を受けた。

だがそれは同時にFA市場でもフォールズの価値を高める結果となり、フォールズもNFLで先発QBとして成功できるとの自信を深める結果につながった。

イーグルスはフランチャイズトランジッション指名で一時的に慰留し、トレードによって見返りを得るという選択肢もある。ただ、条件が高くなればなるほどトレードに応じるチームは少なくなり、交渉は難航する。それが分かっているから、フォールズも1年契約の締結に応じない可能性がある。

では、フォールズの移籍先としてどこが考えられるだろうか。昨今の若手QBの定着によって、いわゆる“フランチャイズQB”、もしくはそのように育成すべき若手QBが不在のチームは少ない。ただし、そのQBでチームが勝てるかどうかは別問題だ。

2018年シーズンの先発QBのうち、その座を失う危機にあるのがジャガーズのブレイク・ボートルスとバッカニアーズのジェイミス・ウィンストンだ。ボートルスはパスが一向にうまくならないだけでなく、シーズンによって調子の波が大きい。同じことはウィンストンにも言えるのだが、彼の場合はオフフィールドでの不祥事で出場停止処分を受けるなど素行が理由でファンの支持を得られていない。

今年のドラフトではバッカニアーズが全体5位、ジャガーズが7位指名権を持っているからQBを獲得する可能性はある。その場合でもフォールズのようなベテラン選手を獲得しておき、1、2年後に新QBとスイッチする選択肢はあっていい。

新ヘッドコーチ(HC)にブルース・エリアンズを招いたバッカニアーズなどは体制の一新を理由にQB交代を実行しやすい。現在のところエリアンズはウィンストンの再生に全力を尽くすと述べているが、そんな言葉に何の保証もない。

アレックス・スミスが来季も復帰不可能な見込みのレッドスキンズもフォールズに食指を伸ばしそうだ。同じNFC西地区でフォールズのプレーはよく見ているだろうし、フォールズもレッドスキンズをよく知っているはずだ。ドラフト1巡は15位指名で新人QBを取りに行くことも考えられるが、有能な人材を確保するにはやや順番が遅いか。仮に2020年にスミスが復帰したとして、その後、彼が何年プレーできるかも考慮しなければならない。レッドスキンズは短期ではなく長期的な視野でQB獲得を考える必要がある。

「史上最強のバックアップQB」がいよいよ市場に放たれる。どんな争奪戦が演じられるのか。フォールズはどのチームを選ぶのか。イーグルスはそれを指をくわえて見守るだけなのか、何らかの手を打って少しでも見返りを得ようとするのか。シナリオは幾通りも考えられる。リーグイヤーの切り替わりまであと3週間。さまざまな動きが水面下で始まっている。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。