コラム

オフフィールドでも存在感を増すマホームズ

2019年05月06日(月) 07:49


カンザスシティ・チーフスのパトリック・マホームズ【Photo by Paul Abell/Invision for NFL/AP Images】

昨シーズン、NFL2年目でチームをカンファレンスチャンピオンシップに導き、自身もシーズン50タッチダウンパス、パス獲得5,097ヤードでMVPとオールプロに輝いたチーフスのクオーターバック(QB)パトリック・マホームズ。その人気と注目度はオフフィールドでも上がり続けている。

まずNFLPA(NFL選手会)が発表した2018年3月1日から2019年に販売された公式NFL選手商品の選手別売り上げランキングにおいてマホームズは堂々の5位に入っている。ちなみに1位は2年連続、3回目となったペイトリオッツのQBトム・ブレイディだった。2位はカウボーイズQBダック・プレスコット、3位がイーグルスQBカーソン・ウェンツ、カウボーイズのランニングバック(RB)エゼキエル・エリオットが4位だった。

そのうち2018年の3月1日から5月31日の売り上げランキングではマホームズが42位となっており、シーズンの大活躍でいかに売り上げ、つまり人気が急上昇したか分かるだろう。

また2018年シーズンにおけるNFL公式オンラインショップでのジャージー売り上げでは3位につけている。まさに新星と言える存在だ。

もちろん、そんなマホームズを企業も放っておくはずがない。チーフス入団時から契約するスポーツ用品メーカー大手のアディダスはMVP受賞時にカンザスシティの中心部に設置された大型デジタルサイネージに、マホームズの写真に祝福メッセージを掲示した他、ツイッターなどでも発信し、その存在感を盛んにアピールした。

加えて、昨年12月にはマホームズの活躍と食事に目をつけたコンアグラ・フーズが展開するケチャップ、ハントズが契約を結び、CMを放送。最初、マホームズがダンベルでトレーニングしているように見えるが、実は肘に挟んだケチャックボトルを腕で押してマカロニ・アンド・チーズにケチャップをかけていた、という構成で、マホームズがケチャップをかけるのが好き、ということから契約に至ったとしている。

さらに4月に入ってアイウェアのオークリーはMLBニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手らと共にマホームズをスポーツ用サングラスの新製品プリズムのグローバルキャンペーンに起用した。2分30秒にわたるCMでマホームズはプリズムを着用してトレーニングする様子を披露している。

そんな中でも特に注目されているのがゲーム会社EAが発売するNFLをテーマにしたビデオゲームシリーズ「Madden」の2019年版「Madden 20」のカバー写真への起用だ。数あるスポーツビデオゲームの中でもMaddenは絶大な人気を誇り、近年ではNFL公認のeスポーツ大会も開催されている。それだけにカバー写真への起用は前シーズンに活躍して人気を博し、続くシーズンにも期待が寄せられていることを示す非常に名誉なことなのである。

とはいえ、同時に不安を覚える人も多いのではないだろうか。有名な「Maddenの呪い」があるからだ。Maddenは元レイダースのヘッドコーチで名解説者だったジョン・マッデン氏の名を冠したビデオゲームで、発売初期にはマッデン氏の写真がカバーに使用されていた。その後、1998年の「99」ヨーロッパ向け版で49ersのRBギャリソン・ハーストが初めてカバー写真に起用される。ハーストはこの年、1,570ヤードを走ったものの、ディビジョナルプレーオフで足首を骨折、2シーズン欠場を強いられた。これが呪いの始まりとされている。

以降、「2001」で起用されたタイタンズのRBエディ・ジョージは1,509ヤードを走るも、その後はケガに悩まされ、ゲーム発売後5シーズンしか現役を続けられなかった。「2002」のバイキングスQBダンテ・カルペッパーは膝の負傷で5ゲームを欠場、「2003」のラムズRBマーシャル・フォークもケガで2試合の欠場、「2004」のイーグルスQBマイケル・ビックはプレシーズンに足を骨折して11試合の欠場、などとカバーに登場した選手が不運や不調に見舞われることが続いたため「Maddenの呪い」と呼ばれるようになったのである。

昨シーズンの「19」にはスティーラーズのワイドレシーバー(WR)アントニオ・ブラウンが起用された。そのブラウンは昨シーズン中にチームやチームメイトとの関係が悪化し、勝利が必須だった最終週に出場登録されず、先ごろ、レイダースにトレードされたことは記憶に新しい。これも「呪い」の一種かもしれない。

もっとも「18」に起用されたブレイディは「自分は呪いを信じる人間じゃない」と明言し、チームを自身8回目のスーパーボウルに導いている。

「呪い」云々は別にして、マホームズはファンや企業を引きつける今最もホットな選手となっていることは間違いない。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。