コラム

ジャイアンツがダニエル・ジョーンズ指名、QB世代交代へ

2019年05月13日(月) 04:32

ニューヨーク・ジャイアンツのイーライ・マニング【AP Photo/Frank Franklin II】

ついにジャイアンツがドラフト1巡でクオーターバック(QB)を指名した。2004年にフィリップ・リバースを1巡指名し、直後にチャージャーズとトレードしてイーライ・マニングを獲得して以来のことだ。近年うわさされていたジャイアンツでのQB世代交代がいよいよ始まることになる。

スーパーボウルで2回優勝し、2回ともMVPに選ばれているマニングだが、最近2年は合計でもわずか8勝しか挙げていない。もともとパサーレーティングの高くないマニングだが、2016年と2017年は80台に終わるなど不調だ。現在38歳ということもあり、限界説もささやかれる。

先月25日に行われたドラフト1巡目、ジャイアンツはデューク大学のダニエル・ジョーンズを全体6位で指名した。マニングの契約が今季で切れることを考えると、ついにジャイアンツがQB交代の準備に本腰を入れたということだ。

では、その世代交代はいつ起こるのか?

現状ではパット・シャーマーHC(ヘッドコーチ)もジェネラルマネジャー(GM)デーブ・ゲットルマンも口をそろえて「イーライが第1QBである」と宣言している。マニングもジョーンズ指名について公式には祝福するコメントを出しながら、不平不満は漏らしていないようだ。しかし、これが彼らの本当の思惑ではないことは明白だ。シャーマーやゲットルマンはチームに勝利をもたらすQBこそ先発起用したいはずであり、マニングもまだ控えに甘んじるつもりはない。

マニングにとって有利なのはシャーマーのオフェンスシステムで2年目を迎えることだ。当然ジョーンズよりも理解度は高いはずで、過去の経験から言ってもよほどのことがない限り開幕先発を譲ることはないだろう。

問題はシーズン中盤を過ぎてもジャイアンツの勝ち星が伸び悩む場合だ。不思議なことにマニングはチームが不振のときでも個人スタッツが大きく落ち込むことはない。これが首脳陣のQB起用に対する判断を難しくさせている要因でもあるのだが、今季の場合はマニングの契約最終年ということもあり、マニングにとって厳しい決断を下さざるを得ないだろう。

マニングのような経験と実績に富んだQBに替えて新人を投入するのは大きな決断だ。しかし、最近のNFLでは1巡指名されたQBはそのシーズンのうちに実戦デビューを果たし、そのままスターターになるケースが多い。かつてのように2年がかりで育成する悠長なことを行うチームはほとんどなく、1巡指名QBにはそれに見合った活躍を早期から求めていくのだ。そして、その成功例が多いのはラムズのジャレッド・ゴフやイーグルスのカーソン・ウェンツ、ブラウンズのベイカー・メイフィールド、レイブンズのラマー・ジャクソンらの例を見ても明らかだ。

マニングがよほどの復調を見せない限り今季中のQB交代は間違いないだろう。名門マニング一家の最後の砦もいよいよフィールドを去る時が来るのかもしれない。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。