RBベルとLBモズリーがジェッツにもたらすインパクト
2019年05月19日(日) 23:11今年からヘルメットやユニフォームのデザインを一新して新シーズンに臨むジェッツが攻守にそれぞれキーとなる選手を獲得した。ランニングバック(RB)リビオン・ベル(前スティーラーズ)とラインバッカー(LB)C.J.モズリー(前レイブンズ)だ。奇しくも両者ともAFC北地区からの「インポート」だが、ベルはオールプロ2回、プロボウル3回選出の実績を持ち、モズリーもプロボウル4回、オールプロはセカンドチームながら4回選ばれているベテランだ。
ベルは昨年1年間実戦から遠ざかったが、オフェンスライン(OL)のブロッキングを巧みに読んで確実に距離を稼ぐランニングスタイルとワイドレシーバー(WR)並みのパスキャッチ力はスティーラーズにおいてクオーターバック(QB)ベン・ロスリスバーガー、WRアントニオ・ブラウンとともにオフェンスの三本柱として活躍した。ブランクは気になるが、まだ27歳で体力が落ち込む年齢でもなく、実力を発揮すればジェッツのオフェンスの要となりうる存在だ。
そうすれば2年目のQBサム・ダーノルドにとっては心強いチームメートとなり、彼の成長を助けるだろう。新ヘッドコーチ(HC)のアダム・ゲイスはパッシングアタックを得意とするから、ベルのようにパスキャッチのうまいRBにはいろんな起用法が用意されるはずだ。AFC東地区は冬季には気候の厳しいスタジアムでの試合が多くなるが、ベルのランをオフェンスのゲームプランの中心とすることも可能で、その意味では順応性の高いオフェンスが作れることになる。
モズリーにはグレッグ・ウィリアムズ守備コーディネイターとの「相乗効果」を期待したい。レイブンズ時代のモズリーはフィールド中央のエリアを任され、ランに対しては鉄壁の守備を見せた。非常に守備範囲が広く、ディフェンスライン(DL)がOLのブロッキングを受け止めさえすればかなりの確率でボールキャリアーを仕留めることができる。
これまでビルズやセインツ、タイタンズなどでアグレッシブなディフェンスを構築してきたウィリアムズもまた様々なモズリーの「使い道」を考えているだろう。モズリーもレイブンズ時代はブリッツを駆使するスタイルのディフェンスでプレイしていたから、ウィリアムズのスキームにもすぐに馴染む。場合によってはレイブンズ時代以上にプレイメーカーとしての役割を与えられることもあり得るだろう。
AFC東地区はQBトム・ブレイディが先発QBとなった2001年以降、18年間で16回もの地区優勝をペイトリオッツが独占している。ここまで偏った1チーム独裁はNFLのみならず他のプロリーグでも例を見ない。これに終止符を打つにはジェッツを含むほかの3チームの奮起が待たれる。攻守に中心となるべき選手を得た今季はジェッツにそのチャンスがある。
新任でありながらゲイスには過去3年間ドルフィンズでHC経験があり、ディビジョンライバルを熟知している。その経験値と新戦力がいかにペイトリオッツに対抗するか。ベルとモズリーの新天地でのパフォーマンスに注目が集まる。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。