英国学生選手の育成を目指すNFLアカデミー
2019年05月20日(月) 07:15NFLは現地5月7日、イギリスの学生選手育成を目的とするNFLアカデミーを開設すると発表した。「雇用への道、さらなる教育、さらには米国でのNCAAカレッジフットボールの可能性」を提供するとしている。
アカデミーは9月にスタートする予定で、16歳から18歳の学生が対象となり、1年あたり最大80人が受講することになるという。運動能力、教育的、性格評価をもとに3カ月間にわたって行われるトライアウトシリーズで選考される。選ばれた学生アスリートは運動トレーニングに加え、生徒自身が選んだ学科のコースを北ロンドンにあるバーネット・アンド・サウスゲートカレッジで学ぶことになる。
アカデミーのパートナーにNFLの公式アパレルスポンサーであるナイキが就いており、学生アスリートのためのアパレルとフィールドでのユニフォームの提供を行うということだ。
アカデミーをサポートし、アンバサダー的な役割にはロンドンに生まれ、元ジャイアンツでディフェンシブエンド(DE)だったオジー・ウメニオラと元テキサンズのコーナーバック(CB)ジョン・ベルが就任している。両名は現在イギリスBBCのNFL中継で解説者を務めている。
この他、ブラウンズのワイドレシーバー(WR)オデル・ベッカムやチーフスのクオーターバック(QB)パトリック・マホームズ、スティラーズのWRジュジュ・スミス・シュスター、元49ersで殿堂入りしているジェリー・ライス、イギリス生まれで元イーグルスのランニングバック(RB)ジェイ・アジャイ、ロンドン育ちのパンサーズDEエフェ・オバダなどもアンバサダーとして参加するということだ。
NFL UK(NFLイギリス法人)のアリステア・カークランド・マネージングディレクターは「アカデミーは教育、キャラクター育成、フットボールという3つの重要な要素を提供する初の取り組みです」とその意義を強調したうえで、「このアイデアはトットナム・ホットスパーとの長期パートナーシップから生まれました。新しいスタジアムで試合をするだけでなく、私たちは年間を通してコミュニティにとって意味のあるものを作りたいという願いを持っていました」と明かしている。ホットスパーは4月に新スタジアムを完成させており、今シーズンNFLはロンドンゲームズのうち2試合を同スタジアムで行うことになっている。
さらに「これは我々のスポーツの経験に関係なく多くの若者の生活をリアルに変化させる機会です。さらに選手たちがアメリカの大学システムとたぶんNFLそのものにさえ入るための道をつくる機会でもあります」と語ってもいる。
NFLとNFL UKは既に専用サイトを立ち上げており、そこではポジション別の理想体格やスキルなどが表示され、どのポジションを希望すれば良いかなどの情報を提供中だ。
実はこのように外国出身の選手を育成し、既に成果を出している制度もある。前述のオバダもその一人で、インターナショナルプレーヤーパスウェイ・プログラムがそれだ。
これは海外出身の選手にNFLレベルでの競争を体験させ、スキルの向上を図りつつNFLロスター登録を目指すことを目的に2017年に開始された。
無作為に選ばれたNFLの地区に所属する4チームに外国出身選手を1人ずつプラクティススクワッド(PS、練習生)として所属させる。各チームはトレーニングキャンプ終了までこれらの選手を参加させる。キャンプ終了時にこれら選手はシーズンを通して出場登録できない11人目のPSとなるインターナショナル・プレーヤー・プラクティススクワッドの資格を得ることができるのだ。こうしてロスター入りを目指すのだ。
今シーズンはAFC東地区が選ばれており、ジェッツに元オーストラリアのプロラグビー選手、バレンタイン・ホームズが、ペイトリオッツにテネシー大学でタイトエンド(TE)を務め、ドイツフットボールリーグでプレーするジェイコブ・ジョンソンが、ドルフィンズにブラジルでプレーしたドゥルバウ・ケイロス・ネトが、ビルズにラグビー元イングランド代表のクリスチャン・ウェイドが加入している。
このプログラム出身で現在ロスター登録されている選手にはオバダの他に、イーグルスのタックル(T)ジョーダン・メイラタがいる。
海外、特にヨーロッパ、イギリスでのNFL人気は高くなっているだけに、今後もこのような外国出身選手の育成に力がいれられていくことになりそうだ。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。