コラム

カウボーイズの本部施設にeスポーツ組織が入居

2019年06月03日(月) 07:24


ダラス・カウボーイズの本拠地【AP Photo/Tony Gutierrez】

カウボーイズは5月20日、そのチーム本部施設に新たな仲間を招き入れた。eスポーツの組織、コンプレキシティ・ゲーミングだ。

まずはカウボーイズのチーム本部施設について紹介しよう。カウボーイズのチームロゴからザ・スターと名付けられたこの施設は、ダラスのダウンタウンから約40km離れたフリスコ市に位置し、約37万平方メートル、東京ドーム約8個分という巨大な複合施設なのである。

2016年に完成したカウボーイズ自体が使用する施設としては、2つの屋外練習フィールド、豪華なロッカールーム、ウエイトルームのほか、アメリカンフットボールには欠かせない映像設備の整ったミーティングルームは30にも及ぶ。屋内フィールド、フォード・センターは1万2,000席のスタンドとビデオボードが設置されており、地元の高校に試合会場として貸し出されている。

さらにカウボーイズ・フィットと名付けられた一般向けフィットネスセンターの入るビルやレストラン、賃貸オフィスなどが91も入るエンターテイメント地区と呼ばれる商業ビル、大手医療機関やスポーツに特化した複合医療研究書が入るビルなどもあり、一つの街ともいえる施設なのである。

そしてそんなザ・スターに2003年に設立されアメリカでも最も古いeスポーツ組織であり、MaddenやFIFA、カウンターストライクなど12のチームを持つコンプレキシティ・ゲーミングが本社を開設したのである。ネーミングライツによりゲームストップ・パフォーマンスセンターという名称がつけられている。

そのコンプレキシティをeスポーツの成長に目をつけていたカウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズ氏と投資家ジョン・ゴフ氏が2017年に買収していた。

約1,000平方メートルを誇る規模のゲームストップ・パフォーマンスセンターはコンプレキシティに所属するゲーマー、コーチ、管理部門の本部として機能する一方で一般にも公開されるという。eスポーツ用トレーニングルームは、カスタマイズできる照明により大会のステージを再現できるほか、周囲のガラスがマジックミラーになっており、ゲーマーがプレーに集中しつつ、見学もできるように設計されている。さらに一般の訪問者がゲームをプレーするための高性能なゲームPCのセットが多数用意されている。YoutubeやTwitchにゲーム映像を配信するためのスタジオや編集設備まで設けられた。集中力を高めるためにヨガなどができるジムもあるということだ。リラックスできるラウンジや昼寝用のポッドまで完備している。

まさに至り尽くせりといったものだが、それだけではない。チームメンバーはカウボーイズの選手たちが使う巨大なジムでトレーニングを共にしたり、フォード・センターの食堂で一緒に食事をしたりすることもできるのだ。カウボーイズと一体化しようとしているのである。コンプレキシティのジェイソン・レイクCEOは声明で「われわれの選手の生活を劇的に向上させ、われわれの新旧ファンにフリスコのザ・スターに恒久的なホームを与えるこの旅が続くことに興奮しています」とコメントしている。

さらにコンプレキシティはこれまで黒と赤を基本としたユニフォームで知られてきたが、移転を機にカウボーイズと同じブルーとホワイトのユニフォームに変更した。チームロゴもカウボーイズの星形を模したものになった。これについてレイクCEOはカウボーイズ側から強制されたことはなく、カウボーイズのカルチャーと融合することによるブランディングを考えた結果だとしている。

今回の開設についてジョーンズ氏は「ザ・スターにコンプレキシティ・ゲーミングの本部を開設したことにより全ての世代のファンにユニークで手軽な方法で我々のフランチャイズに参加できるようになった」とその意義を強調した。

最近、eスポーツの隆盛とその若いファン層によってチームを買収したり、ゲーマーと契約したりするスポーツチームは世界的に増えている。ただチーム施設にここまでの投資をする例は少ない。アメリカズチームはこの分野でも先駆者となっているのである。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。