3つめの新リーグ、PPF
2019年07月29日(月) 09:182月に開幕した新プロリーグ、アライアンス・オブ・アメリカンフットボール(AAF)は4月2日、第8週まで消化したところで突然活動停止に追い込まれた。一方、プロレス団体WWE会長兼CEO、ビンス・マクマホン氏が復活を進めるXFLは、プロ入りを目指す若手選手のショーケース、ザ・スプリングリーグ(TSL)と提携し、独自ルールやテクノロジーのテストを進めるなど着々と準備を進めている。
両リーグに共通しているのは、NFLやCFLのロスター入りを目指す選手を起用し、まだフットボール熱の残るスーパーボウル直後の2月に開幕するというコンセプトだ。
対してこの2リーグとは違ったアイデアで開幕を目指している新プロリーグも存在する。南カリフォルニアで4チームでの開幕を目指すパシフィック・プロ・フットボール(PPF)だ。
PPFはペイトリオッツのクオーターバック(QB)トム・ブレイディのエージェントを務めるドン・イー氏が中心となって2017年1月に設立構想を発表したもの。当初は2018年夏の開幕が予定されていたが、資金不足などによって2018年2月には開幕を2019年に延期。その後アディダスが公式スポンサーにつくなどした後、開幕がさらに2020年に再延期された経緯がある。今年1月には元ブロンコスのワイドレシーバー(WR)でスーパーボウルリングを3個持つエド・マカフリー氏がコミッショナーに就任することが発表され、開幕への準備が続けられているところだ。
PPFのユニークな点は大きく2つある。1つ目は7月に開幕するサマーリーグという点だ。アメリカではフットボールは秋のスポーツというイメージが定着しているだけに、これは大きなチャレンジとなりそうだ。そして2つ目は選手を18~22歳に想定している点だ。高校を卒業し、大学に進学しないか大学に3年以上通わないことを意図している選手と契約するというのである。
この背景にはNFLの規定がある。NFLは高校卒業後3年以上経た選手としか契約できないと定めているのだ。このためNFL入りを目指すには大学に入学し、大学でプレーレベルを高めて、3年後以降にNFL入りを目指すしかほぼ道がなかったのである。それが大学に進学しなくても若手のためのプロリーグでプレーし、アピールすることでNFL入りを目指すことができる道としてPPFを設立しようというのだ。
選手との契約は年俸5万ドルで、1年間コミュニティカレッジの授業料と図書費が支給される。さらに学術、職業訓練、インターンシップなどの機会も提供される見込みだ。1チームは40人から50人の選手で構成され、南カリフォルニアの大学や公共のスタジアムで8週間のレギュラーシーズンを戦った後、2ラウンド制のプレーオフが予定されている。
マカフリー氏はスポーツビジネス・ジャーナル誌のインタビューで、既に使用スタジアム候補から誘致を受け交渉していることや、メディアパートナーとの交渉中であることを明かしている。さらにAAFの失敗から心配はないかと聞かれ、「いいえ、まったく。われわれは2つとは完全に違うリーグです。AAFが成功することを望んでいましたし、XFLが成功することを望んでいます。若くて、プロフェッショナルなフットボールでプレーすることを望む選手達に多くの機会を与えることができるんですから」と答えた。
また南カリフォルニア内だけでのリーグになることについて、小規模で始めることと同じ地域になることで移動費が大きく節約できることを挙げている。その上で3年目には8チームまで拡大したいということだ。
開幕が2回延期したことでもわかるように、財政面での不安は依然残る。マカフリー氏も財政基盤の安定が重要だと認めているが課題であり続けるだろう。それでも準備は続けられている。このユニークなアイデアの新リーグがどうなるか今後も注目していきたい。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。