コラム

昨年の躍進に続くか、復活のベアーズ

2019年07月29日(月) 09:19

シカゴ・ベアーズのカリル・マック【AP Photo/Jeffrey Phelps】

昨季のベアーズは、マット・ナギー体制1年目にして12勝4敗の好成績を残して8年ぶりにプレーオフに進出した。残念ながらワイルドカードラウンドで前年度のスーパーボウルチャンピオンのイーグルスに敗退したが、キッカー(K)コディ・パーキーのフィールドゴールが成功していれば(記録はイーグルス側のキックブロック)勝ち進んでいただけに今年こその思いは強いだろう。

ベアーズ躍進の立役者となったのは言うまでもなくディフェンスだ。シーズン開幕直前にトレードで入団したカリル・マックが強烈な起爆剤となり、ディフェンシブライン(DL)アキーム・ヒックス、ラインバッカー(LB)ロクアン・スミス、コーナーバック(CB)カイル・フラー、フリーセーフティ(FS)エディ・ジャクソンらがクオーターバック(QB)サックやインターセプト数でNFLトップクラスの数字を残した。

ディフェンスユニットは総合、ラン守備、インターセプト数、ターンオーバー数でリーグ1位となり、QBサックは3位の50を記録した。「看板復活」のディフェンスは“モンスターズ・オブ・ミッドウェイ”と呼ばれ、オフェンスが絶対的有利とされる現代のNFLで存在感を放った。

そのディフェンスを指導したビック・ファンジオ守備コーディネーター(DC)は実績が認められてブロンコスのヘッドコーチ(HC)に引き抜かれた。間もなく61歳になるファンジオはNFLで初のHC職だ。コルツ前HCのチャック・パガーノが後任となる。

パガーノはレイブンズでディフェンスのアシスタントコーチを務めた経験がある。ディフェンス主導のチーム指導の経験は豊富だ。コルツ時代はチーム全体を見る必要があったが、守備コーディネーターとしてディフェンスに集中できるだけにアグレッシブな戦略を駆使することが可能だろう。

オフェンス面ではQBミッチェル・トゥルビスキーの成長がいかに続くかが今季の課題だろう。2年目の昨年はパス成功率66.6パーセントを記録し、タッチダウンパス24回を成功させた。その一方で被インターセプトが12あり、被サックも24に及んだ。パサーレーティングも90台と、2017年の全体2番目指名としては物足りない成績だった。

とはいえ、パッシングオフェンスを得意とするナギーのスキーム下でトゥルビスキーの能力が生かしやすくなったことは間違いない。「ディフェンスは強いがオフェンスがそれに見合わなかった」印象のある過去のベアーズだが、現在は攻守にバランスのとれたチームができる潜在能力を持つ。

NFC北地区はグリーンベイ・パッカーズの一強時代が崩れ、競争が激化しつつある。その中で攻守のバランスは大きな武器だ。昨年の飛躍を糧にさらに上に昇ることができるか。その準備の第一歩となるサマーキャンプがこれから本格化する。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。