コラム

急速に露出を増やすアーロン・ドナルド

2019年11月03日(日) 21:53

ロサンゼルス・ラムズのアーロン・ドナルド【AP Photo/Matt Rourke】

現地10月23日、NFL選手会(NFLPA)が3月1日から8月31日にかけてのプレシーズン選手別グッズ売り上げランキングトップ50を発表した。

最も売り上げが多かったのはペイトリオッツのクオータバック(QB)トム・ブレイディだ。ブレイディは四半期の売り上げでこれまで7回トップになっており、年間売り上げでは2017-2018シーズンと2018-2019シーズンの2年連続売り上げトップとなっている。さらに2014年以降年間と四半期別ランキングでトップ3入りするのは16回目で、10位以下になったことがない。

また、トップ15のうち10人がQBで、ワイドレシーバー(WR)は4位のオデル・ベッカム(ブラウンズ)と9位のジュジュ・スミスシュースター(スティーラーズ)の2人、ランニングバック(RB)が6位のエゼキエル・エリオット(カウボーイズ)、8位のセイクワン・バークリー(ジャイアンツ)の2人。守備選手は5位でベアーズのラインバッカー(LB)カリル・マックのただ一人だった。人気ポジションがQBを中心に攻撃選手に偏っていることが改めて露わになった形だ。

とはいえ、次のランキングでは少し変化があるかもしれない。ラムズのディフェンシブタックル(DT)アーロン・ドナルドの広告契約が急増し、露出を増やしているからだ。

2014年にドラフト1巡でラムズに入団したドナルドは初年度から9サックを挙げ、活躍を続けている。プロボウルには5年連続で選出されており、2017年、2018年と2年連続で守備部門最優秀選手にも輝いている。昨年には6年総額1億3,500万ドルの契約を結び、リーグ史上最も裕福な守備選手となった。押しも押されもせぬスター選手ではある。が、今回の売り上げランキングでは45位にとどまっていた。

そんなドナルドを高く評価し、広告出演契約を結ぶ企業が今シーズンは5社以上現れたのだ。

NFLのピザ部門公式スポンサーである大手宅配ピザチェーンのピザハットもその一つだ。ピザハットはドナルドとチームメイトのRBトッド・ガーリーが出演するテレビCMを制作し、全米放送している他、シーズン中に展開されている懸賞企画にもドナルドを起用した。同社のマーケティングディレクターを務めるレイチェル・ミーヤー氏は「アーロンはフィールドで素晴らしい選手であり、さらに優れた男性であり、仲間から尊敬されています。ブランドとして私たちが引き寄せる全てを備えています」と、ドナルドを絶賛している。

バスソルトなどを扱うドクターティールズとは筋肉回復を目的とした製品の広告に出演。インスタグラムに投稿された同社の動画では巨大なタイヤをひっくり返して見せ、「父が言った。男が作ったなら、男はそれを持ち上げられる」という台詞を話している。

さらにユニークなのが南カリフォルニアを拠点とする電気自動車メーカー、カルマ・オートモーティブとの契約だ。13万ドルもする車をドナルドのために派手にカスタマイズし、ロサンゼルスのドナルドの自宅に納車する演出を披露したのである。マーシュー・クラーク副社長は「地元のヒーローと連携するのは素晴らしいことです。ちょっとした相乗効果もあります。彼は、そしておそらくまだいくつかの点で、彼の立場は控えめでした。彼はここ数年で素晴らしくなった」と話し、ドナルドのマーケティングでの存在感が急上昇していることを示唆している。

ドナルドの契約するエージェント企業CAAのボブ・フィリップ氏も「ドナルドがこの2年でNFLを代表する選手の1人となった」ことを認める。「5回のプロボウラーと2回の守備部門最優秀選手などフィールドでの功績を超えて、アーロンの人格、親しみやすさ、謙虚さによって、彼がプレーする立場を超越することができるようになった」と話し、「ブランドは彼と契約することをエキサイティングに感じている」とブランドがドナルドに注目している状況を説明した。

この露出の拡大が、グッズの売り上げにどうつながっていくか注目である。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。