世界一の富豪ジェフ・ベゾス氏がNFLチームオーナーに意欲?
2019年11月17日(日) 21:20現地11月10日、『CBS Sports』がインターネット通販大手アマゾン・ドット・コムの創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏がNFLチームの所有に興味を持っていると報じた。
記事によれば、すでに数人の既存オーナーと親しくなっているという。またベゾス氏は有力紙ワシントンポストも所有しており、ワシントンへ転居する過程にあることもあってレッドスキンズのオーナー、ダニエル・スナイダー氏などとも多くの時間を費やしているということだ。2月のスーパーボウルではロジャー・グッデルNFLコミッショナーのスイートルームで観戦したとのこと。
ベゾス氏は経済誌フォーブスによる世界の長者番付で2年連続で首位となり、その保有資産は1,310億ドルと算定されている。1月に連れ添った妻マッケンジーさんと離婚し、財産分与がされたと見られるが、この額だ。
また、近年はビジネスを拡大しており、2013年にワシントンポストを2億5,000万ドルで買収している。2000年には航空宇宙メーカーで宇宙飛行サービス会社のブルーオリジンを設立、ロケットの開発とテストを続けている。慈善活動にも熱心で、ホームレス対策慈善団体に約1億ドルを寄付したりもした。
前述のように既存オーナーもベゾス氏が仲間入りすることに前向きなようだ。カウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズ氏は素晴らしいと発言していると言われている。さらにスナイダー氏にとってはベゾス氏がワシントンに移ること自体が助けになるという。スナイダー氏は現在のレッドスキンズの本拠地フェデックス・フィールドの老朽化と立地に不満を持っており、ワシントンのダウンタウンに新スタジアムを建設したい考えなのだ。それに対し、ベゾス氏がワシントンポストの社屋とアマゾンのハブを新スタジアムの予定地周辺に移転すれば、建設への後押しとなるというのである。
さらに、ベゾス氏が飛び抜けた大富豪である点も既存オーナーたちにとって喜ばしい要素に他ならない。なぜならキャッシュでチームを買収することすら可能だからだ。実は近年NFLチームの資産価値が上がりすぎてしまい、買収できる人物が限られている。NFLには筆頭オーナーはチームの全株式の30%以上を保持すること、さらにその購入に際して借り入れ額の上限を3億ドルに設定している。少数オーナーの人数も上限があり、企業がオーナーになることもできない。これが足かせになり、昨年には前オーナーの不祥事によって売りに出されたパンサーズが、当初30億ドルと報じられたにもかかわらず、現オーナーのデビッド・テッパー氏の買収額は22億7,500万ドルにとどまった。これに危機感を持ったオーナーたちは、ある都市のNFLオーナーは他の都市のいわゆる4大プロリーグのオーナーになれないというクロスオーナーシップのルールを緩和したりしている。
既存オーナー達からも受け入れられそうなベゾス氏にとって大きな課題は、現在売りに出されているチームがないということだろう。ただ、前オーナーのポール・アレン氏が昨年逝去したシーホークスは近々売りに出される可能性があると言われている。加えて、前オーナーのパット・ボウレン氏の遺産相続で揉めているブロンコスも売却に出るかもしれない。やはり相続に絡んで売買されることが多いのである。フォーブスによれば、今年のシーホークスの資産価値は27億7,500万ドルで15位、ブロンコスは30億ドルで11位だった。
はたして、ベゾス氏はNFLチームのオーナーになるのか、そしてそれはいつになるのか。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。