コラム

今季初黒星の49ersを待ち受ける後半のタフなスケジュール

2019年11月17日(日) 08:13


サンフランシスコ・49ersのチェイス・マクロフリン【AP Photo/Tony Avelar】

開幕から8連勝中だった49ersがオーバータイムの末にシーホークスに敗れ、今季初黒星を喫した。これでNFLではシーズン第10週にして全勝チームがなくなった。

49ersとしては最も負けたくない試合だっただろう。49ersがNFC西地区で単独首位を守る間もシーホークスは2敗を維持して追走してきた。ラムズが早くも4敗目(5勝)を喫したことで終盤に首位争いをする可能性が高いのはシーホークスだ。しかも、ホームで敗れたのは痛手だ。

試合運びもよくなかった。第1クオーターで10対0のリードを奪ったまではよかったが、ワイドレシーバー(WR)エマニュエル・サンダースが故障退場したこともあってか、オフェンスがこう着状態に陥り、第4クオーターまで得点できなかった。その間にシーホークスは21対10とリードを奪うことに成功していた。

49ersのオフェンスは基本的にランファーストだ。ランプレーが出てこそジミー・ガロポロのパスが生きてくる。前半はこうしたオフェンススタイルを維持していたのだが、後半は全く機能しなかった。

11点差を追う第4クオーターはキャッチアップオフェンスを強いられたが、タイトエンド(TE)ジョージ・キトル(膝のケガで欠場)とサンダースを欠くなかでガロポロは苦戦を強いられた。

ディフェンスは終始シーホークスにプレッシャーをかけることに成功した。しかし、脚力があり、判断力にも優れるクオーターバック(QB)ラッセル・ウィルソンを60分間、いやオーバータイム(OT)を含めて70分間、完全に封じることは至難の業であり、やはりここぞというところではビッグプレーを決められてしまった。

OTではキッカー(K)チェイス・マクロフリンが47ヤードのフィールドゴールアテンプトを外し、勝機を逸しただけでなく、シーホークスに決勝フィールドゴールのチャンスを与えてしまった。マクローリンはケガで欠場のロビー・ゴールドの代役で、ここでも故障者の影響が出てしまった。

残りの7週間はいよいよプレーオフをかけた戦いが本格化するわけだが、49ersは今後のスケジュールがかなり厳しい。第12週にパッカーズを迎え撃ったあと、2週続けてアウェーでレイブンズとセインツとの対戦が控えるのだ。この2戦はともに本拠地のあるサンタクララから時差のある場所で行われるので西海岸には帰らずに長期の遠征になる可能性もある。選手には大きな負担がかかる。

第15週にマンデーナイトフットボールでファルコンズとホームで対戦し、中6日でラムズ(ホーム)戦があり、最終週は敵地シアトルでシーホークスとの第2回戦を迎える。実に他ディビジョンの首位チームと3試合、ディビジョンライバルと3試合という厳しい7週間なのだ。

49ersと対戦するチームはシーホークス戦を徹底的に分析して、弱点をあらわにしてくる。対戦するQBもアーロン・ロジャース、ラマー・ジャクソン、ドリュー・ブリーズ、マット・ライアン、ジャレッド・ゴフ、そして再びウィルソンとNFLを代表するQBが包囲網を形成する。

49ersが6年ぶりのプレーオフ出場を果たし、その先にあるものを目指すためには避けて通れない試練だ。ベタな表現を使うならば今後7週間が真価の問われる戦いになるのだが、それは同時に49ersがエリートチームとして成長するための過程でもある。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。