コラム

オーナーの緊急会見、ファンも見守るライオンズの今後

2020年01月12日(日) 06:14


デトロイト・ライオンズのオーナーであるマーサ・ファイアストン・フォード【AP Photo/Mark Tenally】

現地12月17日、ライオンズのオーナーであるマーサ・フォードとその娘でチームの副会長を務めるシーラ・フォード・ハンプ、ロッド・ウッド社長が記者会見を開き、チームを売却する意向はないことを明らかにした。マーサはフランチャイズを手放すことを真剣に考えたことはないとしている。

ウッド社長は「チームを買収したいというアプローチを受けたことはある。しかし、真剣な交渉は行われなかったし、フォード家にはチームを所有し続けることを計画しており、成長に向けた計画もある」と語っている。ただ成長計画の詳細を問われたが、回答を拒否した。

ライオンズはマーサの夫で自動車メーカー、フォード・モーター副会長だったウィリアム・クレイ・フォードが1963年に買収し、オーナーとなった。2014年に同氏が亡くなると、マーサがオーナーに就いている。またマーサの子供4人は現在同等の副会長となっているが、近年はシーラがNFLのスーパーボウルおよびメジャーイベント委員会で委員を務めるなど実践的な役割を担ってきた。

ではなぜそのフォード家がこのような会見を開くことになったのか。それは会見の直前にフォード家がライオンズをインターネット通販大手アマゾン・ドット・コムの創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏に売却するのでは、という希望的観測が広がっていたためだ。

なぜ「希望的」かというとライオンズファンの間でフォード家から新たなオーナーに移ることでチームを再生して欲しいという声が高まっているからである。1963年以降、ライオンズは低迷している期間が長い。プレーオフでは1勝しかしていないし、最後に地区優勝したのは1994年だ。今シーズンも第16週までで3勝11敗1分、8連敗中である。この低迷の原因はフォード家のまずい運営にあるというのだ。

実際、先月15日のバッカニアーズ戦では会場となったフォード・フィールドのゴールポスト後方に、マーサの顔写真と「チームを売れ」という文字の入ったバナーが、同じコピーの入ったTシャツを着た地元アパレル会社の社員によって掲げられる事態まで起こっている。

さらに以前紹介したが、大富豪のベゾス氏がNFLチームのオーナーになることに意欲を示しているとの報道も出ていた。

そうした状況の中で、今回の売却のうわさを一気に広めたのがデトロイトの地元テレビ局でスポーツアンカーを務めるエリ・ザレット氏のポッドキャストだった。16日の配信の中で同氏は信頼の置ける消息筋からの情報として、2020年中にベゾス氏がライオンズを買収するだろうという予想を披露したのである。さらにベゾス氏が少なくとも2回デトロイトに滞在し、ライオンズの買収について真剣な話し合いをしているとも語っている。

これが急速に広まり、真実味を持って語られるようになったことを受けての会見となったのだ。会見でウッド社長は地元のイベントでベゾス氏に1度だけ会ったことはあるものの、買収とは無関係だったとした。

マーサ・オーナーは現在94歳と高齢だ。果たしてフォード家は本当に売却の意向がなく、今後もライオンズを所有、運営を続けるのか。ファンの動向も合わせ、まだその行く末は見通せない。


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わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。