リベンジか返り討ちか、カンファレンス決勝はいずれも再対決に
2020年01月16日(木) 07:06ディビジョナルラウンドではAFC第1シードのレイブンズが5つも勝ち星の少ないタイタンズに敗れて姿を消したものの、それ以外はシード上位チームが勝ち上がった。
優勝候補最有力のレイブンズが敗退したのもショッキングだったが、24点差をひっくり返して2年連続のAFC決勝に進んだチーフスの戦いぶりも衝撃を与えた。NFCでは故障者の復帰により、ほぼフルメンバーで好調を取り戻した49ersがバイキングスを一蹴し、パスが好調のパッカーズはシーホークスの終盤の反撃を振り切っての決勝進出だ。
カンファレンス決勝のマッチアップはいずれもレギュラーシーズン中の再戦となる。AFCは第10週に対戦してタイタンズが勝利。NFCは第12週に顔を合わせ、49ersに軍配があがった。ただし、いずれも2カ月以上前のゲームであり、チーム状況は大きく違う。前回対戦からさらに力をつけ、マイアミへの切符を手にするのはどのチームなのか。
タイタンズ@チーフス
ワイルドカードのペイトリオッツに続き、レイブンズを倒したタイタンズは対戦相手によって戦術をがらりと変えるディフェンスが功を奏している。その基本コンセプトは「bend, but don’t break(曲がっても折れるな)」である。
レッドゾーンまでは相手オフェンスにドライブを許しても簡単にはタッチダウンを許さない。その一方でオフェンスがランニングバック(RB)デリック・ヘンリーのランとそれを土台にしたクオーターバック(QB)ライアン・タネヒルのプレーアクションパスで確実に得点を重ねる。
これがペイトリオッツとレイブンズには通用した。しかし、プレーメーカーの揃うチーフスオフェンスを相手にはそう簡単にはいかないだろう。
QBパトリック・マホームズは崩れたプレーを信じられない身体能力で立て直してしまうし、ワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルのスピードはコンスタントなダブルチームカバーによるディフェンスが必要だ。RBデイミアン・ウィリアムズ、タイトエンド(TE)トラビス・ケルシーもタッチダウンを量産できる。
タイタンズとしてはクロックマネジメントを最大限に活用し、ロースコアに持ち込むことで勝機を見いだしたい。序盤からチーフスがタッチダウンドライブを成功させるようなら大差でチーフスが白星を手に入れる可能性が高い。
パッカーズ@49ers
ディフェンスはともにパスラッシュが強力だが、オフェンスは対照的だ。パッカーズはQBアーロン・ロジャースとWRダバンテ・アダムスのホットラインを中心としたパッシングアタックが武器だ。相手ディフェンスの空いているスペースに巧みに走りこむレシーバーと、そこに確実に正確なパスをデリバリーするロジャース。シーズン終盤はロングパスの精度が悪かったロジャースはシーホークス戦ではミドルゾーンへのパスを多用して試合をコントロールした。
49ersディフェンスはディフェンシブエンド(DE)ニック・ボサに代表されるパスラッシュが強力だから、ロジャースはクイックリリースを駆使しつつも中距離から長距離のパスによる攻撃が必要とされる。
49ersのオフェンスはランが武器だ。テビン・コールマンとラヒーム・モスタートの2人のバックをうまく使い分けるが、彼らをサポートするのがフルバック(FB)カイル・ユーズチェックのリードブロックだ。ディビジョナルラウンドで49ersと対戦したバイキングスは最後までユーズチェックへの対策がとれなかった。ロングゲインは少ないのだが、じわじわと確実なゲインを重ねてチェーンを動かすオフェンスは意外に難敵だ。ボールコントロールと同時にディフェンスのスタミナを奪われるからだ。
相手オフェンスの得意分野をディフェンスがいかにつぶすかが勝敗を分けるだろう。どちらのオフェンスも完全に止めるのは難しい。ターンオーバーやレッドゾーン内での粘りによって相手のタッチダウンドライブをひとつでも少なくすることに成功した方が勝つのではないかと予想する。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。