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ファルコンズがQBペニックスJr.を指名した際に「欺かれた」と感じたQBカズンズ

2025年07月09日(水) 10:02

アトランタ・ファルコンズのカーク・カズンズ【AP Photo/Mike Stewart】

アトランタ・ファルコンズが2024年NFLドラフトの全体8位でクオーターバック(QB)マイケル・ペニックスJr.を指名した瞬間、QBカーク・カズンズは不意を突かれた形となった。

ベテランQBのカズンズはシーズン中、あまり感情を表に出していなかったが、現地8日(火)に『Netflix(ネットフリックス)』で配信が始まった『Quarterback(クオーターバック)』シリーズの第1話で本音を明かしている。カズンズはそこで初めて、ファルコンズがドラフト1巡目でクオーターバックを指名することを事前に知らされていれば、ミネソタ・バイキングスに残っていたかもしれないと認めた。

カズンズは「最終的にアトランタと契約して、そこで新たなスタートを切るチャンスにワクワクしていた。その後、NFLドラフトが行われたときにはかなり驚いた」と話している。

「あんなに上位でクオーターバックを指名するとは思っていなかった。当時はちょっと欺かれたような気がした。もしフリーエージェンシーの時点で情報があれば、確実に判断に影響していたと思う。ミネソタを愛していたから、どちらのチームも上位でクオーターバックを指名するなら、ミネソタを離れる理由はなかった。でも、このリーグで12年間過ごす中で、何の権利も与えられないことを学んできた。自分の居場所を勝ち取り、自分を証明できるかがすべてだ」

カズンズは2023年シーズンにケビン・オコンネルHC(ヘッドコーチ)の下でプロボウル級の活躍を見せるも、アキレス腱(けん)の負傷でシーズンを終えた。このケガが最終的にバイキングスでの将来を大きく変えることとなった。

「負傷前は、俺がバイキングスの一員として長くプレーする形でやっていくんだと思っていた。でも、アキレス腱を断裂してからは、すべてが不確かな状況になった」とカズンズは振り返っている。

カズンズはバイキングスから短期契約しか提示されず、ファルコンズが1億ドル(約146億7,755万円)の保証を含む4年契約を提示した後もその態度を変えなかったと明かした。

「ミネソタを離れたくなかった」とカズンズは語っている。

「ミネソタを離れたいと思う理由は1つもなかった。ミネソタにいたかったけど、そこにいるかが1年単位で決まるということが明らかになった。そういう状況は望んでいなかったから、“他の場所に目を向ける必要がある。もしそれが唯一の選択肢なら戻ってこよう”という話になった。そして、“他を見渡してみて、より長期の契約を結ぶ機会がある。そういう長期契約を示すことに興味はあるか”と聞いてみたら、“いや、今の提案に満足している”と言われた。だから、“分かった、それで決断がすごく簡単になった”と言ったんだ」

その後の展開は周知の事実だ。

アキレス腱の負傷から復帰したばかりのカズンズは、シーズン序盤に本来の力を発揮できず、一時的に活躍した場面もあったが、終盤にかけて状況は悪化していった。シーズン最後の3試合ではペニックスJr.がカズンズの代わりに先発を務め、2025年シーズンの明確な先発候補としてオフシーズンを迎えた。トレードの話も浮上したが、カズンズはトレーニングキャンプが迫る現在もファルコンズのロースターに残っている。トレードが成立しない限り、36歳のカズンズは高額報酬の控え選手として今シーズンを過ごす見込みだ。

この状況は人生の連鎖反応を浮き彫りにしている。もしファルコンズがクオーターバックを指名する意図を事前に明かしていれば、カズンズはミネソタに残るために短期契約を受け入れて橋渡し役のQBになっていたかもしれない。そうなれば、昨季に復調を遂げたサム・ダーノルドがバイキングスで活躍することはなく、今オフシーズンにジーノ・スミスをトレードしたシアトル・シーホークスと契約することもなかったはずだ。カズンズがバイキングスに残っていた場合の現実は、別の世界線で進行しているのだろう。

【RA】