テレビ中継は好調も観客数は減少した2019年レギュラーシーズン
2020年01月20日(月) 09:25第54回スーパーボウルに向けて激闘のプレーオフが行われているが、昨年12月29日の第17週をもって2019年レギュラーシーズンが終了し、その結果を示すさまざまなデータが発表されている。
まずアメリカにおけるテレビ中継だが、調査会社ニールセンによると平均視聴者数は1,650万人で前年比5%増となった。これはやはり1,650万人だった2016年以降で最多となっている。2015年には過去10年間で最多の1,870万人を記録していた。
2016年、2017年と平均視聴者数が減少したことは関係業界に衝撃を与え、国歌斉唱時の選手達による抗議行動や試合時間の長さ、ルール変更による迫力低下など人気低下の様々な原因が議論されたのである。しかし2018年シーズンから視聴者数がV字回復し、今回2年連続での増加となった。
さらにリーグの公式アプリや携帯電話会社ベライゾン、アマゾン プライムビデオなどのデジタル配信での平均視聴者数は48万7,000人と昨シーズンに比べ51%も急増している。
NFLのテレビ中継がどれほど圧倒的な人気なのかがわかるのが、2019年12月29日までにおける番組別視聴者数ランキングで、トップ10は全てNFL中継、トップ30では28番組、トップ50で47番組を占めているのだ。もちろんトップは第53回スーパーボウルである。
放送ネットワーク別で見てみると、最も増加したのは日曜昼の試合とサーズデーナイトフットボール(TNF)を放送したFoxだ。7%増の1,924万人を記録している。特に日曜の東部時間16時開始の試合中継では10%増の2,436万人となった。
ケーブルチャンネルのESPNが放映したマンデーナイトフットボール(MNF)も1,206万人で6%増となった。16試合中11試合で前年より増加している。
サンデーナイトフットボール(SNF)を放映したNBCは4%増の1,986万人だった。SNFは9年連続で、プライムタイムと18歳から49歳の視聴者の総視聴者数ランキングでトップとなっている。
CBSも平均視聴者数を4%増やし、1,722万人だった。特に11月28日に放映した感謝祭ゲーム、ビルズ対カウボーイズの中継は3,264万人を記録、これはシーズンを通して最も視聴者数が多かった試合となった。
ちなみに視聴者数2位は第12週のカウボーイズ対ペイトリオッツで2,990万人、3位が第14週のチーフス対ペイトリオッツの2,830万人だった。SNFが入っていないところが興味深い。
好調だったテレビ中継に対し、不調だったのが観客数だ。平均観客数は6万6,648人で、これは6万6,328人だった2004年以来最も少なかった。6万7,000人を割るのは2010年以来である。
最も多かったのはカウボーイズでAT&Tスタジアムが開場した2009年以来11年連続で首位を維持している。ただ今シーズンの9万0,929人は前年の9万1,620人より0.8%減となっている。
今シーズン前年より平均観客数が5%以上増えたのは2チームだけだった。6%増だったビルズはプレーオフに進出した好調ぶりだったことで納得できる。意外なのが7.3%も増加したレッドスキンズだ。3勝13敗と低迷したにもかかわらず増えたのである。ただ、これには昨シーズンも7勝9敗と不調が続き、ある意味、底を打ったともいえるかもしれない。実際、増えたといっても平均6万5,488人は約8万2,000人収容の本拠地フェデックス・フィールドでは収容率は79.9%に過ぎないのである。
一方、平均観客数が前年割れしたチームは15チームにのぼっている。特にベンガルズは7%、レイダースは7.6%、ジャガーズは8.7%も減少した。
ベンガルズは、サッカー用のディグニティヘルス・スポーツパークを使用しているチャージャーズを除くと、3年連続観客数が最下位となっている。2勝14敗では致し方なしか。
ジャガーズは2013年にホームゲーム1試合をロンドンで行うようになって以降では本拠地TIAAバンク・スタジアムでの観客数が最少となった。
5万3,539人だったレイダースはプレーオフ争いに絡んだものの、来シーズンからラスベガスに移転することが決まっており、オークランドのファンが離れてしまったようである。
テレビ中継での人気が再び高まっているのにもかかわらず、観客数が減る裏にはテレビの画質、放送技術が上がっている一方で、家族4人で観戦するとチケット代や駐車場代、飲食などで平均540ドル余りかかるという調査結果があるように生観戦が高値の華となっていることなどが原因となっているのかもしれない。今後、どのように推移していくか注目される。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。