スーパーボウルイベントの盛り上がりと経済効果
2020年01月26日(日) 07:07チーフスと49ersが対戦することになった第54回スーパーボウル。現地2月2日(日)に行われる試合を前に、会場のハードロック・スタジアムがあるマイアミ市とその東部に位置するマイアミビーチ市を中心に南フロリダはすでに大きな盛り上がりを見せているようだ。
まずマイアミビーチ・コンベンションセンターで1月25日から2月1日まで開催されるのが恒例のスーパーボウル・エクスペリエンスだ。パスやキック、40ヤードダッシュからVR(仮想現実)を使った数々のアトラクションはもちろん、ヴィンス・ロンバルディー・トロフィーの展示などが今回も行われる。
マイアミ市で最大のイベントとなるのが、ダウンタウンのウォーターフロントに面したベイフロント・パークを閉鎖して行われるスーパーボウル・ライブだ。ステージではフィッツ&ザ・タントラムズやウォルシー・ファイアなどの多数のアーティスト、バンドが音楽パフォーマンスを行う他、実物大のフットボール・フィールドで過去10回のマイアミでのスーパーボウルの歴史を振り返る展示や有名シェフが出店する飲食ゾーンやアトラクションなども設けられる。さらに夜のパレードや花火のショーなども行われる予定だ。
音楽系のイベントは他にもある。NBAマイアミ・ヒートの本拠地アメリカンエアラインズ・アリーナでは2回目となるスーパーボウル・ミュージックフェスが1月31日と2月1日の2日間にわたり開催される。人気バンド、ガンズ・アンド・ローゼズやマルーン5、DJキャレドなどが出演する予定だ。
マイアミ市のワトソン島で2月1日の夜に開催されるのがスーパー・サタデー・ナイト。歌手のレディー・ガガがヘッドライン・パフォーマーを務める。
さらに元ペイトリオッツのタイトエンド(TE)ロブ・グロンコウスキー氏はグロンク・ビーチ・ビッグゲーム・ウィークエンドをマイアミビーチ市でやはり2月1日に開催する。こちらではカスケードやリック・ロスなど有名バンドやアーティストが出演予定となっている。
また食の祭典であるテイスト・オブ・NFLや多数のセレブが参加するパーティーなど、イベントは数え切れないほど開催されるのだ。
ではこうしたスーパーボウルと数々のイベントでどれぐらい盛り上がり、地元は潤うのか。
まずスーパーボウル・エクスペリエンスは昨年のアトランタでは120万人もの来場者があり、今回も1日あたり10万から15万人の来場者が見込まれている。スーパーボウル・ミュージックフェスも昨年の第1回では4万1,000人が参加し、ツイッターでのストリーミングを470万人以上が視聴する人気ぶりだった。
ハードロック・スタジアムの収容人数は6万5,000人だが、いわゆるスーパーボウル・ウイーク中に南フロリダを訪れる人の数は15万人に上ると推測されている。南フロリダの空港に飛来するプライベートジェットは1,100機に達する模様だ。
これだけの訪問者があるとまず需要が高まるのがホテルである。旅行データ調査会社STRによれば、1月31日から2月2日に開催地域のホテルの客室は91%から94%が埋まり、しかも平均宿泊料は520ドルから540ドルに達すると予想している。これにより2019年の同じ4日間と比べ、ホテルの総収益は1,140万ドルも増えると試算されているのだ。
これだけの人気もあって大会のホストコミッティーは地元地域への経済効果が5億ドルに達するだろうとしているのである。
ただ、それに対して異議を述べる声もある。これだけ大きなイベントであるだけに地元の負担も大きいからだ。例えば、ボランティアだけで1万人が参加している。地元紙マイアミヘラルドによれば、地元自治体は大会のホストコミッティーへの寄付とセキュリティ対策、地方自治体の手数料免除、公園の改善に対する部分的な支払いの合計が1,500万ドルに達するとしている。さらにマイアミ・デード郡はスーパーボウルの招致費用としてドルフィンズに対して400万ドルを支払うことになっている。地元自治体の負担は2,000万ドルに達するというのだ。
その一方でNFLが支払いを行う部分もある。スーパーボウル・ライブのフィールドやウォーターフロントの照明設置に関してはNFLと地元政府機関が折半した。LED照明の設置費60万ドルの半分もNFLが支払い、2カ所の公園に敷設する人工芝の費用85万ドルはNFLが寄付した。
いずれにせよスーパーボウルはシーズンの優勝決定戦という枠を超えたアメリカでも随一の巨大イベントとなっているのである。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。