コラム

コロナ対策の工夫が見える2020年スケジュール

2020年05月18日(月) 06:53

フィールドに置かれたフットボール【Aaron M. Sprecher via AP】

現地7日、NFLは2020年シーズンのスケジュールを発表した。9月10日にスーパーボウル王者チーフスが本拠地アローヘッド・スタジアムでテキサンズと対戦する開幕戦を皮切りに、17週にわたって256試合のレギュラーシーズンが予定されている。

目に付くところではロサンゼルス郊外に建設されているSoFiスタジアムは第1週のサンデーナイトフットボール(SNF)、カウボーイズ対ラムズが口開けとなる。同居するチャージャーズは翌週のチーフス戦が新本拠地最初のレギュラーシーズンゲームとなる予定だ。ラスベガスに移転したレイダースが新スタジアムのアレジアント・スタジアムで初ホームゲームに挑むのは第2週のマンデーナイトフットボール(MNF)、セインツ戦となっている。第16週に予定されているバイキングス対セインツは12月25日のクリスマスに行われるが、金曜日の試合は2009年以来である。最終第17週は1月3日に全16試合が地区内対戦カードとして組まれている。

その後、1月9日と10日に新フォーマットで各カンファレンス3試合となるワイルドカードラウンドでプレーオフが開始され、2月7日の第55回スーパーボウルへとつながっていく。

ただ、現在アメリカでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いくつか再開の動きはあるものの、多くのスポーツが停止している状況が続いている。実際のところNFLも通常どおりに開幕し、シーズンを進めていけるかどうかは見通しが立っていない。

そんな中でのスケジュール発表とあって、ロジャー・グッデルNFLコミッショナーは「スケジュールされたシーズンをプレーする準備にあたって、われわれはファン、選手、クラブやリーグの職員、コミュニティの健康を守るため、最新の医療および公衆衛生のアドバイスに基づき、政府の基準に準拠しながら決断していくことを続けていきます」とコメントし、チームの地元自治体に対し、承認なしに開幕することはないと通達している。

その上でスケジュールについて「必要に応じて修正する準備をしている」とし、さまざまな「修正」を考慮したことを明らかにした。

実際、今回発表されたスケジュールには多くの工夫が見える。例えば、49ersとペイトリオッツの同じ遠征地での2連戦だ。49ersは第2週の9月20日にジェッツ戦に臨み、翌週27日にジャイアンツ戦が組まれている。会場はどちらもメットライフ・スタジアムである。ペイトリオッツは第13週12月6日にチャージャーズ戦、中3日で14日にサーズデーナイトフットボール(TNF)のラムズ戦となる。やはりどちらも舞台はSoFiスタジアムだ。

アウェー2連戦が同じスタジアムということは非常に珍しい。これは大陸を横断するような移動はウイルス感染のリスクが高いため、その軽減を図るための対策と思われる。49ersもペイトリオッツも2試合の間は地元に戻らず、スタジアム近くに滞在し続けることになるだろう。

今後、必要になるかもしれない「修正」への準備も垣間見える。第1週から第4週にかけて、全チームがホームゲーム2試合、アウェーゲーム2試合を戦うことになっている。さらに第3週と第4週には地区内対戦カードが1つもない。また、例年は第4週から始まるバイウイーク――試合のない休みの週――が今年は第5週からになっているのだ。

ここから予測されている「修正」シナリオはまず第4週まで、つまり10月2週まで開幕できない想定だ。その場合、第4週までのカードを第17週後に移動させるというのである。そうなるとレギュラーシーズンは1月31日までとなり、その後のプレーオフでは通常プロボウルを行うバイウイークを削って2月28日にスーパーボウルを開催するのではと見られている。

さらに1週遅れ、第6週の10月15日頃からの開幕となった場合は、レギュラーシーズンのバイウイークとプレーオフのバイウイークをなくして、全チームが16試合を行う形式の維持もうわさされている。その場合、スーパーボウルはやはり2月28日だ。

16試合が消化できない場合は先に出てきた第3週と第4週をキャンセルする可能性も憶測として伝えられている。そうすれば地区内対戦は全て消化でき、公平性を保ちやすいというのである。

一方で、このコロナ危機を逆にビジネス的な成功につなげるのではとも言われている。土曜開催試合の拡大だ。現在NFLは1961年に制定されたスポーツ放送法と慣例からカレッジフットボールのシーズン終了後である12月後半にしか土曜日に試合を開催していない。今回のスケジュールも同様だ。しかし、今回のコロナウイルス感染拡大にあってカレッジも春季などにシーズンを移す可能性が出ているため、NFLシーズンと同時期にカレッジフットボールが開催されないのであれば、多くの視聴者数が望める土曜開催試合を増やすのではないかともっぱらだ。

コロナ禍にあってのスケジューリングの課題は日程だけでない。例えばシーズン前半は無観客で、後半は観客を入れるとなるとホームフィールドアドバンテージに違いが出て公平性が保てなくなる、という意見もある。NFLは今後もさまざまな状況を注視しつつ、まさに柔軟に対応し続けなくてはならない。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。