コラム

公式データ配信でNFLとジーニアスが大型契約

2021年04月19日(月) 11:02


スポーツベッティングのラウンジ【AP Photo/Wayne Parry, File】

NFLは先月、テレビネットワークやアマゾンと総額1,100億ドル(約11兆9,570億円)を超える大型放映・配信契約を結び、話題となった。さらに今月1日にはもう一つ注目される契約を発表している。リーグの公式データを世界に配信する独占契約を『Genius Sports(ジーニアス・スポーツ)』と結んだことを明らかにしたのだ。

この契約によりジーニアスは実況データやスポーツベッティング、スポーツ賭博関連のデータを世界中のスポーツブック企業に提供できるようになる。NFLとジーニアス社はベッティングテクノロジーセンターを設立し、リーグのデータとファンサービスを開発して、スポーツブック企業に動画や音声による試合フィードを提供するということだ。ベッティングを監視するインテグリティサービスもNFLに提供する。さらにジーニアスはアメリカおよび海外のデジタルプラットフォーム上でのNFLのスポーツギャンブル広告枠販売の代行も行う。

今回の契約でジーニアスは年間1億2,000万ドル(約130億4,000万円)以上の権利料を現金と株式で支払う模様だ。ただ、この件を報じたCBSによれば、契約が更新されれば4年間で10億ドル(約1,086億9,000万円)に達する可能性もあるとしている。この権利はこれまで『Sportradar(スポーツレーダー)』社が有していたが、今回ジーニアスが同社との競争に勝利した形だ。

ロンドンを拠点とするジーニアス・スポーツ・グループは2016年に設立され、150カ国以上の顧客にサービスを提供している。NBA、MLB、NCAA、PGAツアーなどのリーグとの既存のパートナーシップに加えて、3月にメジャーリーグラグビーとのデータ権契約を獲得していた。

NFLのチーフストラテジー&グロースオフィサーで、リーグのスポーツベッティング関連の責任者を務めるクリス・ハルピン氏は「NFLがジーニアス社を独占的に活用することができれば、アメリカ国内のスポーツブックに革新的な商品を提供したり、世界的にNFLのベッティングを拡大したりするために必要なリソースをより積極的に投入することができます。市場からのフィードバックで明らかなのは、彼らが独占的にデータを持っていれば、より良いイノベーションを推進できるということです」と契約についてコメントしている。

アメリカでは現在スポーツベッティングの合法化が多くの州で進んでおり、市場が急拡大している。2019年の調査では、初めて賭けをする人の41%がNFLにお金を賭けていることが明らかになっている。また業界団体のアメリカンゲーミング協会の2018年報告書によると、アメリカの合法市場が確立されれば、NFLの年間収益は毎年23億ドル(約2,498億9,000万円)増える可能性があるという。

ハルピン氏は「NFLのファン層の大きさや、特にライブベッティング環境で賭けるのに適したスポーツであることを考えると、どれほどの革新がもたらされる機会であるか認識しています」と語っている。NFLとしては、このさらなる収益の拡大のためのまたとないチャンスを絶対に逃すつもりはなかったということだろう。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。