コラム

ケガ人続出の今季も折り返し、後半にIRから再登録されるのは?

2016年11月03日(木) 20:49

10月末にチームの練習に参加したクリーブランド・ブラウンズのロバート・グリフィン三世【AP Photo/Ron Schwane】

NFLは第8週を終え、レギュラーシーズンも折り返し地点を迎えた。アメリカ東部時間11月1日(火)午後4時(日本時間2日午前5時)にトレードが期限を迎え、これ以降のトレードは凍結される。

そして、このシーズン中間地点にはもう一つ大きな意味がある。故障者リスト(Injured Reserve=IR)登録者の復帰が認められる時期にさしかかったことだ。

IRに登録された選手は原則としてそのシーズンに再びアクティブロースターに登録されることはない。いわゆる“シーズン絶望”である。ところが、2012年からは各チーム1人に限ってIRからの再登録が許されるようにルールが改正された。

昨年までは復帰する選手をIR登録時に指定しなければいけなかったが、今季はチームがIR登録された選手の中から任意の時期に復帰する選手を選ぶことができるようになった。ただし、復帰できる選手が1名限定なのは従来通りだ。

今季のルールではIRの登録された日から6週間後に練習への復帰が認められ、さらにその2週間後にアクティブロースターへの再登録が許される。すなわち、IR入りした選手がチームから復帰の指名を受けた場合は、登録日から8週間という時間を経れば試合に出場できるのだ。

シーズン後半はIR入りした主力選手の戦列復帰が見られる。もっとも、故障の程度によって物理的な復帰の可否はある。バイキングスのクオーターバック(QB)テディ・ブリッジウォーターのように膝の靱帯断裂などの重傷は1年未満の復帰はほぼ不可能だ。また、テキサンズのディフェンシブエンド(DE)J.J. ワットもヘルニアの手術を受けたと伝えられるため、シーズン絶望とみるべきだ。

では、どのような選手の復帰が期待できるのだろうか。

バイキングスはランニングバック(RB)エイドリアン・ピーターソンの復帰が濃厚だ。第2週に膝の半月板を損傷し、手術を受けた。すでに手術から6週間を経過している。通常は6週間から8週間が完治に必要な期間とされるため、練習復帰は近いと予想される。12月頃には戦列に戻れるのではないだろうか。

そのバイキングスを追うパッカーズではRBエディ・レイシーの復帰が待たれる。足首の捻挫のため、短期での復調が望める。ただし、IR登録が第6週終了後だったため、復帰はレギュラーシーズン終盤からプレーオフにかけてのタイミングとなる。

相次ぐQBの故障に見舞われているブラウンズは開幕戦で肩を負傷したロバート・グリフィン三世の復帰が不可欠だ。すでに6人のQBを起用している状況ではスケジュールを前倒ししてでもアクティベートしたいのが本音だろう。

ディフェンス選手ではスティーラーズのラインバッカー(LB)バド・ドュプリー、レイブンズのセーフティ(S)マット・イーラムらが再登録される見込みだ。いずれもNFL経験は浅いが、チームの核として成長している選手で、欠くことはできない。

今季は故障者が多く、それが戦力に大きな影響を与えてもいるが、その一方でIRからの再登録が許されればそれもまたプレーオフ戦線を左右するものとなる。IR登録後に復帰選手を指名するのは新たな試みだが、チームの選択肢を広げる効果があるため、歓迎すべきだろう。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。