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リチャードソンからフラッコへの先発変更に伴うコルツのQB状況

2024年11月04日(月) 10:51


インディアナポリス・コルツのジョー・フラッコ【AP Photo/Maria Lysaker】

クオーターバック(QB)ジョー・フラッコが39歳にしてクリーブランド・ブラウンズを衝撃的なプレーオフ進出に導いた後にフリーエージェント(FA)になったとき、フラッコの代理人はクオーターバックを必要としているすべてのチームに連絡を取った。

そして、3月には例年通り、クオーターバックを必要としているチームは数多く存在していた。

しかし、QBデショーン・ワトソンがシーズン終了につながる肩のケガに見舞われた後にブラウンズをワイルドカードラウンド進出に導くという素晴らしい活躍を見せたにもかかわらず、フラッコに対する関心は前年よりわずかに高まっただけだった。2023年はまったく関心が寄せられていなかったが、2024年はどうだっただろうか?

AP通信最優秀カムバック選手賞を獲得したフラッコが得たオファーは、なんと1件のみだった。それはインディアナポリス・コルツからのもので、フラッコは基本給450万ドル(約6億8,409万円)で最大870万ドル(約13億2,257万円)に上る1年契約を締結している。

キャリアを通してスーパーボウルMVPに輝いた経歴を持つフラッコの代理人を務めてきたジョー・リンタによると、7チームからは“ノー”という直接的な回答があり、1チームからは“様子を見る”と言われ、残りは無反応だったという。しかし、そのたった1つのオファーが実を結んでいる。

フラッコは再びNFLのスターターとして、現地3日(日)夜にミネソタ・バイキングス戦でコルツをけん引している。ヘッドコーチ(HC)シェーン・スタイケンが戦力不足を理由に、元ドラフト1巡目指名選手のQBアンソニー・リチャードソンをベンチに下げ、フラッコをスターターに据えたことで、コルツは波乱に満ちた1週間を過ごしてきた。

リチャードソンは2023年ドラフトの上位で指名された後、今季にベンチに下げられた2人目のクオーターバックとなっている。カロライナ・パンサーズはわずか2試合を終えた後にブライス・ヤングをベンチに下げたが、ベテランのアンディー・ダルトンが先月に交通事故に巻き込まれて親指を負傷したことから、再び先発に戻した。ダルトンは故障者報告から外れているものの、ヤングは日曜日に再び先発を務めている。パンサーズは9月の時点で、ヤングが今季中に再び司令塔を務めることになると予想していた。

スタイケンHCは水曜日に、フラッコが“今後も”先発を務めると述べている。また、情報筋によると、ケガさえしなければ、フラッコが残りの全試合に先発する可能性が十分にあるという。とはいえ、コルツは今季終了後にリチャードソンを見限るつもりはないとのこと。コルツはリチャードソンの明るい未来を信じており、逆境の中で成長を遂げることを期待している。

リチャードソンが再びNFLで先発として活躍するとの見方は依然としてある。情報筋によると、実際にコルツ幹部が先週にリチャードソンと会った際には、グリーンベイ・パッカーズのQBジョーダン・ラブや元QBアレックス・スミスなど、調子を整えるのに何年もかかったクオーターバックを例に挙げたという。

リチャードソンがそうなる可能性はあるのだろうか? リチャードソンにはそれに必要な才能が備わっている。

この1週間は間違いなくリチャードソンにとって過酷なものだったはずだが、コルツはすでに練習の中で、その準備態勢や細部に注意を配る様子から、リチャードソンがこれまでとは違った動きをし始めている兆候を見ている。リチャードソンは先発選手と同じように準備を進めているのだ。

ある情報筋はベンチに下げられたことで“彼に火がついた”と述べている。本当にそうであれば、コルツにとっては素晴らしい結果だと言えよう。組織のメンバーの多くはリチャードソンが2023年ドラフトの全体4位で指名した際に期待していた姿になれるという希望を今も持っているのだ。

先週のヒューストン・テキサンズ戦で悲惨なパフォーマンスを見せ、パサーレーティングが48.3にとどまったリチャードソンはどん底に達した。ポテンシャルを垣間見せながらもケガで出場機会を逃した昨季とは異なり、リチャードソンをベンチに下げるという決定は単純にコーチの判断によるものだった。

スタイケンHCは水曜日に「ロッカールームにいる53人の選手たちにフットボールの試合に勝たせることが私の義務だ」と報道陣に述べている。

リチャードソンの才能に疑問を呈する者はいない。しかし、情報筋によると、シーズン第8週に敗れたテキサンズ戦で1プレーの離脱を求めたことや、過去の先発に向けた準備の様子を踏まえ、コルツはリチャードソンにさらなる成長を求めているという。

スタイケンHCは水曜日に、リチャードソンが退場を求めたことがベンチに下げる要因になったわけではないと話した。

複数の情報筋が指摘しているように、1つ明らかなことがある。それは、選手たちはリチャードソンを支持する発言をしている一方で、現在のチームにとってリチャードソンが最良の選択肢ではないと考えている選手もいるということだ。フラッコはリリーフとして非常に素晴らしい活躍(3試合出場、716ヤード、タッチダウン7回、インターセプト1回)を見せている。

フラッコのパフォーマンスについて説明したあるチーム関係者は、コルツが今回の動きに出た主な理由は、フラッコが高いレベルでプレーしているからだと明かした。

コルツの選手たちの考えを知る複数の情報筋によれば、選手たちはこの選択が正しいものだと信じているという。彼らはフラッコが今季のクオーターバックになることを望んでいたのだ。

来年は? おそらく再びリチャードソンが先発を務めるだろう。

コルツが岐路に立たされる中、リチャードソンをベンチに下げたことは、昨年の過程を再考するきっかけにもなった。組織の中には、昨年や今年にリチャードソンをベンチに下げ、観察や学習をさせることが正しい選択だったかもしれないと話している者もいる。

2023年、コルツは8月中旬に1つのプレシーズンゲームを終えた時点でリチャードソンを先発QBに指名し、ベテランQBガードナー・ミンシューとのポジション争いに終止符を打った。

しかし、リチャードソンの苦戦は時間が必要な他の若手QBへの教訓となるかもしれない。リチャードソンはフロリダ大学で13試合の先発経験しかない状態でNFL入りした。

その他、オフェンスの組み立て方にも振り返るべき点がある。コルツがリチャードソンの起用を望んでいたとして、オフェンスはリチャードソンに合ったスタイルに十分に適応していたのだろうか。それとも、チームのシステムは本当にフラッコのようなポケットパサーに有利に働いているのだろうか。

すべての当事者が過去を振り返り、熟考し、判断を下す時間は十分にあるだろう。しかし、日曜日の夜にはフラッコがフィールドに立っている。

【RA】